医師の年収は?年齢・診療科・経営形態・地域・働き方別に紹介

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「今の自分の年収は同じ年代の医師と比べて高いのか低いのか?」「同じ診療科の医師と比べるとどうなのだろう?」

このように考えたことはありませんか?

実際、医師の年収は年齢や性別・診療科・経営形態・地域・働き方などによって異なります。今の年収が平均とどの程度の差があるのか気になっている方にとってはもちろん、理想の年収を実現するためのキャリアプランを描くためにも、医師の年収データは非常に参考になります。

本記事では、厚生労働省などの信頼性の高いデータを活用しながら様々な視点で医師の年収を解説し、年収を上げる方法についても見ていきたいと思います。

1.医師の平均年収

厚生労働省の資料「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、医師の平均年収は約1,428万8,900円です。こちらの資料には、以下の情報が掲載されています。

  • きまって支給する現金給与額
  • 所定内給与額
  • 年間賞与その他特別給与額

平均年収は、以下の計算式で算出します。

きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額

上記を踏まえ企業規模計10人以上の職場に勤務する医師の平均年収を計算すると、約1,428万8,900円でした。なお、平均年齢は44.1歳、勤続年数は6.2年、所定内実労働時間数は167時間、超過実労働時間数は18時間です。

2.医師の年収<年齢・男女別>

医師の年収は、一般的に年齢が上がるにつれて増加します。続いて、厚生労働省の資料「令和4年賃金構造基本統計調査」を参考に、医師の年収を年齢・男女別に詳しく見ていきましょう。

2-1.20代の勤務医

20代の勤務医の平均年収は以下のとおりです。

男性

女性

20~24

554万8,300

365万8,400

25~29

727万5,800

634万7,700

上記のように、女性よりも男性の方が平均年収が高い結果となりました。また、20~24歳と25~29歳では、年収に170~280万円程度もの差があります。これは、医師国家試験に一発合格した場合、18歳から6年間の学生生活を経て24歳で医師免許を取得するためでしょう。

ここでいう20~24歳は実質的に24歳のみのデータとなるため、25~29歳の平均年収と大きな差が生じているものと考えられます。

2-2.30代の勤務医

30代の勤務医の平均年収は以下のとおりです。

男性

女性

30~34

1,008万1,600

883万6,800

35~39

1,444万6,900

1,354万5,100

平均年収は男女の差が比較的小さく、100万円程度の違いしかありません。また、男女いずれも30~34歳と35~39歳では年収が400万円以上も上昇しています。これは、30代後半で専門医の資格を取得し、年収1,000万円を超える医師が増えるためと考えられます。

また、30代の医師は中堅医師として部下の指導や各種研究の時間が増加することで、時間外労働が増える傾向があります。これら2点が20代と比べて年収が高い理由と言えるでしょう。

2-3.40代の勤務医

40代の勤務医の平均年収は以下のとおりです。

男性

女性

40~44

1,570万800

1,218万8,000

45~49

2,087万1,100

1,602万2,400

40代の男女における年収は300万円以上もの差が開いています。また、40~44歳と45~49歳で男性は500万円程度、女性は400万円程度も上昇しています。男女で年収に差があるのは性別による給与の差ではなく、働き方の変化に伴う労働時間の減少から生じる差です。30~40代の女性は、職種を問わず妊娠・出産・子育てなどのライフイベントの影響で、労働時間を減らすことを選択する傾向があります。

家庭の状況やパートナーの理解などによってはフルタイム勤務も可能ですが、まだまだ男性よりも女性の方が労働時間が少ないのが現状です。

2-4.50代の勤務医

50代の勤務医の平均年収は以下のとおりです。

男性

女性

50~54

1,870万1,900

1,603万300

55~59

1,896万6,300

1,771万7,600

50代の平均年収は、男女差が比較的小さくなっています。特に、50~59歳では100万円程度の差しかありません。

2-5.60代の勤務医

60代の勤務医の平均年収は以下のとおりです。

男性

女性

60~64

1,844万5,500

1,655万7,500

65~69

1,896万6,300

1,768万8,100

50代以降は大きく昇給することが珍しいため、50代の平均年収と比べて大きな差はありません。また、男女差も比較的小さくなっています。

2-6.70 代~の勤務医

70代の勤務医の平均年収は以下のとおりです。

男性

女性

70歳~

1,594万6,800

1,358万4,000

70歳以降は定年退職済みで賞与がないケースが多くみられます。また、きまって支給する現金給与額についても60代と比べて低くなっています。その他の年代と比べると年収が低いものの、70代でこれだけの年収を得られるのは医師の特徴と言えるでしょう。

3. 医師の年収<診療科別>

医師の年収は診療科によっても異なります。独立行政法人 労働政策研究・研修機構の資料「勤務医の就労実態と意識に関する調査」を参考に、診療科別の平均年収を高い順に紹介します。

医師 診療科別年収

産科・婦人科と脳神経外科は、20%程度の人が年収2,000万円以上です。また、ランキングの下位ではありますが、救急科も15%程度の人が年収2,000万円を超えています。

年収が高くなっている最も大きな理由は、激務による医師不足を解消するため、高額な給与を提示する医療機関が多いからだと考えられます。

特に産婦人科は、いつ起こるか分からない分娩のために24 時間 365 日体制が必要とされており、当直やオンコールなどが多く、必然的に激務な環境と言えるでしょう。このような背景から産婦人科医不足が起こっており、医師確保のためにベース給与が高いことが多く、それに加え当直やオンコールの手当が含まれることも平均年収を引き上げている要因です。

脳神経外科と救急科は、人の命に関わる疾患を取り扱う責任の重さに加え、高度なスキルと豊富な知識を求められるため平均年収が高くなっています。ただし、いずれの診療科も医療機関によって年収に差があり、その医療機関における医師の需要の影響も受けます。

4. 医師の年収<経営形態別>

医師の年収は勤務先の経営形態によっても異なります。独立行政法人 労働政策研究・研修機構の資料「勤務医の就労実態と意識に関する調査」を参考に、経営形態別の平均年収を高い順に紹介します。

医師 経営形態別年収
医療法人や個人、公立などの平均年収が高く、国立や学校法人は低い傾向にあります。年収1,500~2,000万円未満の割合に大差はありませんが、年収1,000万円未満と年収2,000万円未満の割合に大きな差があります。

5. 医師の年収<地域別>

医師の年収は地域によっても異なります。厚生労働省の資料「令和4年賃金構造基本統計調査」を参考に、地域別の平均年収を高い順に紹介します。

医師 地域別年収
厚生労働省の資料「第40回医師需給分科会 資料」によると、新潟県や岩手県・青森県・埼玉県・福島県・茨城県・秋田県・山形県などは医師が不足しているなどの状況から、医師の偏在を解消しなければならない状況です。一方、上記のようにこれらの地域の医師の年収が低いわけではないことから、医師不足の原因が「待遇が悪い」ではないことがわかります。

また、東京都や福岡県、京都府など医師が多数いる地域の年収がそれほど高くないのは、需要を供給が上回っているためでしょう。

6. 医師の年収<開業医>

健康保険組合連合が発表した「第22回医療経済実態調査結果報告に関する分析」によると、一般診療所(医療法人)の院長の平均年収は平成30年度が2,745万円でした。平成23年度が2,763万円、平成26年度が2,825万円、平成28年度が2,690万円と、ほぼ横ばいの状況です。

また、一般病院(医療法人)の病院長の平均年収は、平成30年度が3,042万円でした。こちらも平成23年以降、ほぼ横ばいの状況です。

7. すぐに年収を上げるなら“副業”

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年収を上げる方法として、転科・転職・開業という手段があります。ただし、これらの方法は年収がすぐに上がるわけではないうえに、相応の準備期間が必要です。その点、副業は現在のスキルを活かして年収をすぐにアップできます。

医師転職研究所の「【2022年版】医師の年収に関する最新アンケート結果(医師2,250名調査)」によると、71%の医師がアルバイト・副業をしています。また、2021年度と比べて年収が変化したかを尋ねたところ、「増えた(30%)」「減った(20%)」「変わらない(50%)」の結果となりました。

医師の年収が増えた理由として、アルバイト・副業の増加や給料アップなどを挙げています。

ただし、国立病院や初期研修医はアルバイトが禁止なうえに、それ以外の常勤医師においても就業規則で禁止されていることがあるため注意しましょう。

それでは、医師に適した副業・アルバイトについて詳しく紹介します。

7-1.非常勤アルバイト

厚生労働省医政局の資料「医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱」では、医師の非常勤を以下に定義しています。

(1)常勤医師とは、原則として病院で定めた医師の勤務時間の全てを勤務する者をいう。
ア.病院で定めた医師の勤務時間は、就業規則などで確認すること。
イ.通常の休暇、出張、外勤などがあっても、全てを勤務する医師に該当するのは当然である。
(2)病院で定めた医師の1週間の勤務時間が、32時間未満の場合は、32時間以上勤務している医師を常勤医師とし、その他は非常勤医師として常勤換算する。

引用:厚生労働省医政局「医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱

非常勤アルバイトの業務内容は外来対応や当直の病棟管理、救急対応などさまざまです。自身のスキルや求める経験、働き方などに応じて職場を選ぶとよいでしょう。

7-2.スポットアルバイト

スポットアルバイトは単発アルバイトのことで、都合が良いときにだけ働く方法です。業務内容は求人によって異なり、外来対応や当直、救急対応、献血、健康診断、予防接種などがあります。

7-3.オンライン健康相談

オンライン健康相談とは、インターネットを通じて患者に対して医療や健康に関するアドバイスや情報提供を行うことです。専門知識を活かし、オンラインプラットフォームや専門サイトを通じて相談や質問に回答します。

時間や場所の制約を受けず、自宅やオフィスから参加できるため、多様な働き方を実現しやすい仕事と言えるでしょう。

7-4.医療系のセミナー講師

医療系のセミナー講師は、医療関連のトピックについて講義や講演を行います。大学や病院、企業や学会などで行われるセミナーへ講師として招かれることがあります。医療従事者や学生など、専門職や関心を持つ人々に向けて知識の共有や学びの場を提供する重要な仕事です。

7-5.医療・健康系記事の監修

医療・健康系記事の監修者は、医師としての専門知識や経験を活かして、医療情報の正確性や信頼性を確保する役割を担います。記事や書籍、ウェブサイトなどのコンテンツに関して、医学的な内容の監修や校正を行い、読者に対して信頼性の高い情報を提供します。

7-6.医療ブログの執筆

医療ブログの執筆は、医師としての知識や経験を用いて医療情報や健康に関する情報を発信する活動です。自身の経験や専門知識を基に、疾患の解説や健康に関するアドバイス、最新の医療ニュースなどを記事として執筆します。

医療・健康記事は安定した需要があるため、多くの医療関係企業やニュースサイトが医師の執筆者を募集しています。

8. まとめ

年収は、働く上でのモチベーションややりがいにも繋がる大切な視点の1つです。実際、年収にまつわることは転職理由としても常時TOP3に入るほど多くの人にとって気になるテーマであるかと思います。

本記事では年収を上げる方法として、転科・転職・開業・副業という方法をご紹介させていただきました。中でも年々注目を集めているのが副業です。収入アップだけでなく、キャリアアップ・スキルアップにも繋げることができ、その他と比べて、チャレンジしやすいということから検討する方が増えています。

ご自身の目指すキャリアや働き方、そして理想の年収を実現するためのキャリアプランを描くために、本記事が一助となれば幸いです。