医師こそ考えておきたい節税!基本から徹底解説

医師 節税

税金や社会保険料の上昇など、ニュースなどで報道される内容を見聞するものの、日々の仕事に追われて詳細を知らない方もいるのではないでしょうか。
節税について考えてみたくても、なかなか情報を集める時間がなく、特に何もしていないという方も多くおられます。
節税は、仕事で得た報酬を有効に生かすために欠かせないものです。資産形成とあわせて考えることが大切になる分野でもあります。

「節税と言われても、よくわからないし何から手を付けていいのかわからない」
「自分にもできる節税があったらやってみたい」
と考えている医師向けに、今回は節税の基本から、具体的にどんなことができるのかまで解説します。

1.節税とは

節税は、字のごとく「税金を節約」することです。税金として払う金額を抑えるためにする対策を言います。
法律に定められた税務制度に則って支払う税金の額を減らすことを指しており、ルールをしっかり守っていれば節税は問題ありません。しかし、ルールを守らずに税金を減らそうとすると脱税となってしまいます。
国税庁や税務署は常に脱税に目を光らせており、ルールに則った納税をしていないと判断されると処罰の対象となります。
報道で、企業や著名人が税務上の申告漏れを指摘された事例を見たことがあるのではないでしょうか。悪質な所得隠しだと判断されれば、刑事処分の対象として逮捕されることもあり得ます。また、多額の追徴課税などによって本来の税金よりも多くの金額を納付することになるため、節税を行う際はしっかりと税務制度を知っておく必要があるのです。

2.給与明細の中身について知ることからスタート

節税を考える前に、まず知っておきたいのが毎月支給される給与明細に記載された項目です。
病院や企業に勤務していると、毎月総務部門などが社会保険料などの控除を計算して差し引いた金額を支給してくれます。「実は、あまり給与明細の項目をしっかり見ていない…」という方もいるのでないでしょうか。
ここでは、主に給与明細に記載されている支給項目と、控除項目について解説します。

2-1.支給される項目

給与明細で支給項目として掲載されている項目から解説します。

・基本給
勤務先で定められた等級・役職などによって決定される金額です。この基本給は、深夜手当や休日出勤手当・賞与などを計算する際にも用いられる大切な項目です。

・残業手当
勤務時間には法廷労働時間と法定時間外労働があります。そのうち、法律で定められた週40時間を超えた分の労働時間に対して支払われる金額です。
ただし、勤務先によっては「変形労働時間制」を採用しているところもありますので、詳しく知りたい場合は総務部門に確認するか、就業規則を確認してみるといいでしょう。

・夜勤手当(深夜手当)や休日出勤手当
深夜手当は、夜10時~午前5時に働いた場合支給されるもので、役職がついていても基本的に支給されます。
休日勤務手当は、本来は休みの日に出勤した場合に支給されます。どちらも、通常の金額より割増しとなります。

・役職手当
診療科内や病院・企業内で何らかの役職に就いた際、支給される項目です。
ただし、一定以上の役職に就くと残業手当がつかなくなることもありますので、詳細は就業規則を確認してみましょう。

・通勤手当
自宅から勤務先まで通勤する際にかかる公共交通機関の定期代、車やバイク通勤の場合は距離に応じて一定の金額がガソリン代として支給されるのが一般的です。
勤務先によっては、交通費の上限を設けていることもありますので、気になる場合は確認してみましょう。

・資格手当
資格手当は、勤務先が定める資格を所持している場合に支給される項目です。毎月の給与に加算して支払われます。
医師免許については、医師として勤務することを前提に給与が設定されていることが多いので、医師免許に対する資格手当がないことも珍しくないようです。
専門医・認定医・産業医などの資格に対して支払われるケースが多いでしょう。

・家族手当・住宅手当など
これらの項目については、勤務先によって支給しているところとしていないところがあります。家族手当を支給している場合は、扶養家族(主に配偶者・子)の有無によって金額が変わります。
住宅手当は、一定の家賃補助や勤務先近くに社宅として部屋を借り上げる場合など様々ですが、必ずしもあるとは限りません。
諸手当について知りたい場合は、総務部門・就業規則を確認しましょう。

2-2.控除される項目

続いて、給与から控除される項目です。しっかり見てみると、意外と金額が大きいことに驚く方もいるかもしれません。

・住民税
その年の1月1日現在に居住していた都道府県と市町村に対して支払う税金で、前年の所得に応じて金額が決定されます。毎年6月~翌年5月まで12分割して払います。

・所得税
毎月社会保険料を引いた金額に対して、一定の割合で課税されます。
住民税は前年の所得に対して課税されるのに対し、所得税は毎月の給与や賞与に対して課税されるものです。
課税額は、給与が多くなるほど増える「累進課税」が採用されていますので給与が多い人になると半分近く所得税が課されることもあります。

・社会保険関係(健康保険・厚生年金・雇用保険・介護保険)
健康保険や厚生年金は、勤務先の保険組合などによっても利率が変わりますが、勤務先と折半して支払い、給与から控除されます。介護保険は40歳以上の方に支払い義務が発生します。
これら健康保険・厚生年金・介護保険は、所得に応じて支払う金額が違い、所得が多くなるほど支払う金額も増えていきます。
雇用保険についても勤務先と労働者が法律で定められた割合で支払いますが、労働者側の比率は非常に低く数%となっています。

3.年末調整で控除できる主な項目

病院・企業に勤務していると、毎年10月~11月頃に総務部門から「年末調整を行うので、書類を出して欲しい」と言われるのではないでしょうか。
ここでは、年末調整で控除できる主な項目を解説します。

3-1.基礎控除

基本的には誰でも受けられる控除ですが、所得が多い場合は注意が必要です。2020年分からは、合計所得金額が2,400万円以下であれば48万円、2400万円以上~2500万円までは徐々に減額され、2500万円以上は控除なしとなります。
基礎控除を適用するためには、勤務先で「給与所得者の基礎控除申告書」を提出する必要がありますが、雇用されている場合は総務部門から案内があるでしょう。

参照:国税庁「No.1199 基礎控除」

3-2.配偶者控除・配偶者特別控除や扶養控除

扶養する配偶者がいる場合は、配偶者控除が受けられます。また、配偶者が働いている場合は、その年収に応じて控除が受けられる配偶者特別控除もあります。
専業主婦・パート勤務で年収が少ない配偶者を持つ人にとって恩恵があると言えるでしょう。
逆に、配偶者がフルタイムで働いている場合はこの控除の恩恵を受けられない可能性が高くなります。配偶者の年収を確認しましょう。
この控除については、国でも議論の対象となっており、今後税制ルールが改正される可能性がありますのでニュースなどに注目してみるといいでしょう。
扶養控除は、扶養している親族(子どもや高齢の親など)がいる場合に適用されます。同居が基本ですが、単身赴任している場合や、下宿している大学生の子などについては例外があります。詳しくは総務部門で確認してみてください。

注意したいのは、高校生・大学生の子どもがアルバイトをして扶養範囲を超えてしまうパターンです。長期休暇中にしっかり稼ぎたいとアルバイトを入れた結果、扶養範囲を超えてしまうケースもありますので、家族で確認しておくことをおすすめします。

参照:国税庁「No.1191 配偶者控除」
   国税庁「No.1195 配偶者特別控除」
   国税庁「No.1180 扶養控除」

3-3.生命保険料控除・地震保険料控除

生命保険料・地震保険料についても一定額までは控除の対象となります。
これらの保険に加入している人は、秋になるとその年の保険料納付額が記載された証明書が届きますので、勤務先から年末調整の案内が来たら提出しましょう。

参照:国税庁「No.1140 生命保険料控除」
   国税庁「No.1145 地震保険料控除」

3-4.住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)

住宅ローンを借り入れして家を購入・増改築した場合で、一定の要件を満たすと住宅ローンの年末残高に応じて控除を受けることができます。
ただし、住宅借入金等特別控除を初めて利用する時は自分で確定申告を行わなければいけませんので注意が必要です。2年目以降は年末調整で控除を受けることが可能となります。

参照:国税庁「土地・建物(住宅ローン控除等)」

3-5.小規模企業共済等掛金控除

主に、開業届を出している個人事業主・法人を設立している方が対象となります。
常勤医師として勤務している場合でも、別で非常勤のアルバイトをし、その収入が一定以上ある人は確定申告が必要です。その節税対策として、常勤医師として勤務しながらも開業届を出したり、法人を設立して小規模企業共済に加入したりしている方もいます。
「こういう控除項目がある」ということをまずは知っておくといいのではないでしょうか。

参照:国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」

3-6.社会保険料控除

基本的に、毎月の給与から控除されている社会保険料が該当します。
総務部門で計算してくれますが、もし子どもの国民年金を代わりに支払っていたり、学生時代に納付を猶予してもらっていた国民年金の追納などを支払ったりした場合は、控除額に入れることが可能です。
送られてくる支払い証明書または、納付書の控えを提出しましょう。

参照:国税庁「No.1130 社会保険料控除」

4.確定申告で申請できる控除

年末調整の時期に退職していたり、非常勤のアルバイトで一定以上の収入があったりする場合は確定申告をする必要があります。ここでは、確定申告で控除できる主な項目を解説します。

4⁻1. ふるさと納税などの寄附金控除

ふるさと納税は、自分が住んでいる地域以外に納税することで一定額を住民税から控除する制度です。年収によって、控除できる金額が違いますので興味がある方は好きな地方の特産品がないか調べてみるといいかもしれません。他に、寄附金として特定の団体に寄附した場合も一定額まで控除することができます。

4⁻2. 特別支出控除

特定支出控除は業務に関わる出費が多い場合、控除できる項目です。
平成24年の改正で今まで以上に広く認められるようになりました。
国税庁のWEBページから給与所得者の特定支出控除に関する証明書をダウンロードし、勤務先から記名と捺印をもらいます。その他に、領収書、明細書、源泉徴収票、などを揃えて、確定申告の際に提出します。
年収によって、控除できる額は違います。例えば、診療科の学会やフォーラムに自費参加の機会が多かったり、たくさんの専門書を購入したりする方は使ってみることをおすすめします。

参照:国税庁「No.1415 給与所得者の特定支出控除」
   税務署「給与所得者の特定支出控除について」

4⁻3.医療費控除

ご自身や扶養家族が入院や通院などで多額の医療費がかかった場合に使える控除です。病院でもらった領収書などを集めて保管しておく必要があります。

参照:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」

5.節税におすすめの方法

続いて、節税するために有効な方法を紹介します。

5⁻1.iDeCo

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、確定拠出年金法という法律に基づいて実施されている私的年金で、加入は任意となっています。自分で申し込んで、掛金を拠出・運用方法を選んで掛金を運用します。 掛金とその運用益の合計額を給付として受け取ることができます。
掛金、運用益、そして給付金については、税制上の優遇措置が講じられていますので、将来を考えて運用してみてはいかがでしょうか。
〇参考:iDeCo公式サイト

5⁻2. プライベートカンパニーの設立

プライベートカンパニーは、個人が所有している会社です。通常の会社と違い、事業拡大が目的ではなく、自分の資産管理や副業収入の節税のための会社になります。
所得税より法人税の税率が低い場合や、経費(損金)計上できる範囲が広がるなどのメリットがありますが、反面維持するためのコストや、税務申告をする労力、法人税支払い義務などがあります。よく考えて設立することをおすすめします。

6.節税する際の注意点

節税する際には、いくつか気を付けておきたいポイントがあります。

6⁻1.アルバイトをしている医師は報酬額に注意

副業をしている医師は、副業で得た金額が年間20万を超えると確定申告が必要です。確定申告を怠り、後で発覚すると申告漏れで多額の追徴課税が待っています。また、悪質な場合は脱税とみなされますので正直に申告しましょう。

6⁻2.開業医は経費などで認められる範囲を把握しておく

開業医の場合は医療法人などを立ち上げていると思います。その場合、小規模企業共済や経費で処理できる範囲が広がりますが、どこまで認められるかはきちんと確認しておく必要があるので注意しましょう。「これくらいは大丈夫だろう」と自己判断で処理すると、違っていた場合の修正が大変です。

6⁻3.税制ルールは改正が入るので最新情報を得ておく

税制ルールは都度改正が行われています。以前は認められたものが、改正によって認められなくなることも珍しくありません。ネット上の情報や、知人の話をうのみにせず、しっかり最新の情報を得るようにしましょう。忙しくて調べる時間がない、難しくて自分では対応しきれない時は、税理士と契約しておくと安心です。
ただし、税理士も医師と同じく得意分野があります。相続関係が得意な税理士、法人税に強い税理士など様々です。確定申告や、法人税に強い税理士を見つけましょう。
もし、初めて税理士にお願いしようと考えている場合は、9月~10月までに税理士と契約を済ませるといいでしょう。12月以降は、税理士にとって確定申告に向けた繁忙期となり、お願いしたくても断られたり、高い料金を設定されたりすることが増えるからです。

7.まとめ

この記事では節税の説明から給与明細に載っている主な項目・年末調整や確定申告で控除できる項目などについて解説してきました。
節税は、毎月支給される給与の中身を知り、控除される項目を知ることで少しずつできることが増えていきます。資産形成との関わりも深いのであわせて考えていきましょう。
この記事が、節税への一歩となれば幸いです。

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