麻酔科の年収は高い?麻酔科医に向いている人と将来性まで解説

麻酔科の年収は高い?麻酔科医に向いている人と将来性まで解説

麻酔科医は年収が高いと言われる職種です。
これから医師になる医学生にとって高い年収の仕事かどうかは、専門性を決める際に重要な判断材料になるでしょう。

本記事では、麻酔科医の年収を年代や地域別に解説していきます。麻酔科医に向いている人の特徴や将来性についても解説していきますので、参考にしてみてください。

1.麻酔科医の年収

1.麻酔科医の年収

まずは麻酔科医の年収について解説します。麻酔科医の平均年収、年代別平均年収、地域別平均年収を紹介していきます。

1-1.麻酔科医の平均年収

麻酔科医はその高度な専門性と重要な役割から、医師の中でも高い年収を得ることが多い職種です。2011年に独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った調査では、以下のような年収ランキングになりました。

⚫︎診療科別の年収ランキングについて

  1. 脳神経外科…約1,480万円
  2. 産科・婦人科…約1,466万円
  3. 外科…約1,374万円
  4. 麻酔科…約1,335万円
  5. 整形外科…約1,289万円

高度な外科手術が必要な科目が上位に並んでいますが、麻酔科は4位に入っています。

麻酔科医で一番多かった年収ゾーンは1,000〜1,500万円未満ですが、次いで多いのは1,500〜2,000万円未満です。

勤務する病院や地域によっても異なりますが、麻酔科医は平均的に年収の高い科目といえます。

参照:独立行政法人労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」

1-2.麻酔科医の年代別平均年収

麻酔科医の年収は年代によっても変化します。

麻酔科医の年代別の年収比較

 ※上記の画像はリクルートドクターズキャリア様の調査した麻酔科の年収事情の情報を参考に画像を作成しております

20代は年収1,000未満と1,000〜1,500万円がほぼ半数ですが、30代になると1,000〜1,500万円が最多です。

40代になると年収1,500〜2,000万円が最も多くなるので、経験を積むごとに麻酔科医の年収は高くなっています。
中堅からベテランになると高度な麻酔技術やリーダーシップ能力が求められるためです。

1-3.麻酔科医の地域別平均年収

麻酔科医の平均年収は地域によっても変わります。

麻酔科医の地域別の年収比較

 ※上記の画像はリクルートドクターズキャリア様の調査した麻酔科の年収事情の情報を参考に画像を作成しております

関東では年収1,000〜1,500万円が一番多くなりますが、関西、中部、四国、中国では年収1,500〜2,000万円が一番多いためです。

関東などの都市部では需要に対して一定の麻酔科医がいる一方、他の地域では麻酔科医が不足していて年収を高く設定しています。麻酔科医がいなくては手術ができないためです。

地方での麻酔科医不足は病院運営にとって深刻な問題です。麻酔科医が適切な年収を受け取ることは医師としてのキャリア形成だけでなく、地域医療の充実にも関わります。

2.麻酔科医は難しい?仕事内容の紹介

2.麻酔科医は難しい?仕事内容の紹介

麻酔科医の仕事は、内科の診療や外科手術のように表面化しにくい内容が多々あります。

麻酔科医の仕事内容について、詳しく解説していきます。

2-1.術前回診

麻酔科医の役割は、手術前の患者診察から始まります。
患者の健康状態や手術に伴うリスクを正確に分析し、最適な麻酔計画を立てるためです。

また、手術を控えて不安な患者やその家族に麻酔の説明をしつつ、過去に麻酔による合併症を起こした身内がいないかを確認します。

さらに、手術に関わる他の医療スタッフとコミュニケーションを取り、手術の成功に向けて情報共有とチームワークを強化しましょう。

2-2.麻酔の準備と実施

麻酔科医は、自身の診察や看護師からの情報を基に麻酔の準備を整えます。患者の安全を最優先に考え、麻酔薬の選択や投与量を決定します。準備と同時に、手術に使う各機器の点検を行うのも麻酔科医です。

長時間にわたる大規模な手術では全身麻酔の適用が一般的ですが、小規模な手術では局所麻酔が選択されることもあります。手術中は患者の容態と変化に気を配り、緊急時には麻酔の追加など正確な対応が求められます。

患者の酸素飽和度や血圧の管理も、麻酔科医の担当です。

2-3.手術後回診

手術後の患者への回診は、麻酔科医にとって重要な役割の一つです。

術後の痛みの管理や麻酔からの回復状態の監視を行うことで、患者の安全と安心の確保につながるためです。

全身麻酔後の患者には呼吸や循環に関する合併症が見られる可能性があるため、これらの早期発見と対処が必要です。

手術後の回診では痛みのコントロールや患者の快適な回復を目指し、適切な処置を行います。

手術後の回診まで果たすことで、麻酔科医は手術の全過程において患者の安全と快適性を保証します。

3.麻酔科医に向いている人の特徴

3.麻酔科医に向いている人の特徴

麻酔科医に向いているのは、主に臨機応変な対応ができる人、冷静さを保てる人、体力と集中力がある人です。
それぞれの特徴について解説していきます。

3-1.臨機応変な対応ができる

麻酔科医の仕事は予期せぬ状況に直面することが多く、そのため臨機応変な対応能力は必須です。

⚫︎臨機応変な対応が必要な理由

手術中に患者の血圧が急激に低下するなどの緊急事態が発生した場合、麻酔科医は麻酔の量をコントロールするなどの処置を行う必要があるためです。

患者の体質や既往症によっては、計画していた麻酔方法の変更が必要な状況もあります。
予期せぬ状況では柔軟な思考と迅速な対応が求められるため、臨機応変に対応できる能力が麻酔科医には不可欠です。

3-2. 冷静さを保てる

麻酔科医は高いプレッシャーの中で作業を行うため、常に冷静さを保つ能力が必要です。手術中に患者の状態に変化があった場合もパニックに陥らず、冷静に対処することが求められます。

患者の状態を冷静に判断することは、患者の生命を守る上で重要です。経験が少ない時期は冷静さを保つのは難しいかもしれませんが、常に落ち着くことを意識していくと徐々に慣れていきます。

3-3.体力と集中力がある

麻酔科医は長時間にわたる手術を担当することが多く、体力と集中力の維持が重要です。数時間に及ぶ複雑な手術でも、患者のわずかな変化に注意を払い続ける必要があるためです。

緊迫する手術中に体力と集中力を持続させるのは簡単ではありません。しかし、麻酔科医の体力と集中力は、患者の安全を確保して手術の質を高めるために重要です。

3-4.マルチタスクができる

麻酔科医の仕事は、さまざまな作業を同時進行で行います。患者の容態を確認しながら麻酔薬の状況をチェックしたり、他の機器を操作するためです。

マルチタスクに対応できる人は、麻酔科医にとって重要な素質を持っています。経験を重ねてマルチタスクができるようになった麻酔科医は、患者の安全を高いレベルで確保できるでしょう。

4.麻酔科医の将来性

4.麻酔科医の将来性

麻酔科医はいつの時代も手術に欠かせない存在です。

そんな麻酔科医の将来について、麻酔看護師との共存、地方の深刻な麻酔科医不足、専門性が必要という観点から解説していきます。

4-1.麻酔看護師との共存

麻酔科医が不足する現代では、麻酔を学んで麻酔科医と共働する麻酔看護師が登場しています。

日本の麻酔看護師は麻酔科医の指示に基づき、患者の状態モニタリングや麻酔の管理を担当し、麻酔科医はより複雑な医療判断や高度な作業を担当します。この役割分担によって手術中の患者の安全が確保されると同時に、麻酔行為の効率化につながります。

アメリカでは、30州で麻酔科医の監督がなくても看護師が麻酔行為を行うことが認められています。日本ではまだ看護師が直接麻酔行為をできる環境ではありませんが、今後麻酔科医が不足し続けると日本でも同様になる可能性があるでしょう。

4-2.地方は深刻な麻酔科医不足

日本の地方病院では、麻酔科医の不足が深刻な問題となっています。高齢化に伴って手術を必要とする患者が増加している一方で、十分な麻酔科医が確保できていないためです。

麻酔科医の不足により手術が遅延したり提供できる医療サービスに限界が生じたりするケースも報告されています。地方の麻酔科医不足は、地方医療の品質と患者の生命に直結するため、積極的な麻酔科医の採用が今後の重要なポイントとなります。

関連記事:医師が地方勤務をするメリットとは|セカンドキャリアの転職ポイント

4-3.麻酔科医は専門性が必要

麻酔科医の需要は増加していますが、より年収を上げていくためには高度な専門知識と技術の習得が必要です。
麻酔科医と相性の良い専門分野は以下の通りです。

  1. ペインクリニック
  2. 産科麻酔
  3. 小児麻酔
  4. 心臓外科麻酔

上記の中から専門分野を選ぶことで他の麻酔科医と差別化が図れるので、年収の増加と安定した仕事環境の構築につながります。

さらに、高齢化の進行に伴って高齢者の手術が増加しています。高齢者の患者に特化した麻酔管理の知識も付けておくと、多くの病院から歓迎されるでしょう。

高い専門性を持つ麻酔科医は医療現場で不可欠な存在となり、今後もその需要は増加し続けると予測されます。

5.麻酔科医になるには?必要な資格

5.麻酔科医に必要な資格

麻酔科医になるには、医師免許を取得後に初期研修を経て麻酔科の専門研修を受ける必要があります。

麻酔専門の資格は複数あり、中でも麻酔科を開業するためには、麻酔科標榜医の資格が必須になります。

ここでは、それぞれの資格の特徴について解説していきます。

5-1.麻酔科標榜医

麻酔科標榜医は麻酔の国家資格です。

医師免許を取得してから、麻酔科研修施設で2年以上の研修を経て取得できます。

厚生労働省によると、令和3年4月時点での麻酔科標榜医の許可数は約23,500名です。
麻酔科標榜医を取得することで麻酔科医としての専門性と技術を正式に認められ、信頼性が高まります。

麻酔科標榜医は、麻酔技術を求められる医療現場で、患者の安全と快適な手術を提供するために重要な資格です。

参照:厚生労働省「麻酔科標榜医制度の概要」

5-2.麻酔科認定医

麻酔科認定医は、麻酔科標榜医を取得してから日本麻酔科学会が定める審査に合格した医師に与えられる資格です。

麻酔科認定医になるためには、厳格な試験や研修を経て、高度な麻酔技術と知識を習得する必要があります。

また、麻酔科医としての経験を積み重ねることも重要で、継続的な学習を通じて最新の麻酔方法や安全管理に関する知識を習得することが大切です。

5-3.麻酔科専門医

麻酔科専門医は、麻酔科医として高度な専門性を持つことを示す資格です。

麻酔科専門医は2015年より日本麻酔科学会によって研修プログラム制度が始まりましたが、2018年からは日本専門医機構の機構研修制度に移管が進められています。

研修4年次に日本麻酔科学会が運用する麻酔科専門医試験に合格し、要件を満たすと機構専門医資格が与えられます。機構専門医になるために必要な要件は、以下の通りです。

(1)医師臨床研修終了後,申請する年の3月31日までに満4年以上の機構が定める所定の研修プログラムのもとで週3日以上麻酔科関連業務に従事し,所定の経験症例数を満たし,研修を修了していること。ただし,研修修了した後 5 年以内が有効である。5 年を過ぎた場合には研修修了は無効となり、再度所定の研修プログラムのもとで研修を修了する必要がある。
(2)申請する年のこの法人の会費を完納していること。
(3)申請する年の5年前の4月1日から申請する年の3月31日までの間に,所定の単位実績があること。
(4)申請する年の5年前の4月1日から申請する年の3月31日までの間に,AHA-ACLS,または AHA-PALS プロバイダーコースを受講し,プロバイダーカードを取得していること
引用:日本専門医機構認定麻酔科専門医事前審査に関する内規 

機構専門医の受験申請を希望する方はこれらの要件を全て満たす必要があります。
また、申請する年の日本麻酔科学会費の完納も要件となっていますので注意しましょう。

麻酔科専門医をすでに取得している麻酔医は、2020年度の更新者(2019年申請受付)より機構専門医に移管されます。

参照:公益社団法人日本臨床麻酔学会「機構専門医 新規申請」

5-4.麻酔科指導医

麻酔科指導医は、麻酔科認定医や麻酔科領域専門医の指導を行うための資格です。

麻酔科指導医を持つ医師は麻酔科医の育成に関わるため、医療教育の現場で重要な役割です。

麻酔科指導医は、以下の条件を満たした麻酔医が対象になります。

  • 学会指導医の取得者あるいは過去に学会指導医を取得していた会員
  • 学会専門医あるいは機構専門医を1回以上更新した会員
  • 機構専門医の更新申請年度にあたる会員

注意:
学会認定と機構認定の資格取得・維持にはそれぞれ申請が必要となります
詳細は、日本臨床麻酔学会のサイトで最新情報をご確認ください

麻酔科指導医資格の有効期間は、登録された日から5年間有効です。

麻酔科指導医の役割は、単に技術や知識の伝達に留まりません。

若手麻酔科医のキャリア形成にも影響を及ぼし、麻酔科医としての更なる成長を促進します。

参照文献:
公益社団法人日本臨床麻酔学会「麻酔科指導医 新規申請」

6.麻酔科医が年収を上げる方法

麻酔科医が年収を上げるためはキャリアアップするか、より年収が高い病院へ転職する方法があります。

安定した収入を得るために、それぞれの方法を解説していきます。

6-1.キャリアアップする

麻酔科医として年収を上げるためには、キャリアアップする方法があります。

麻酔科認定医→麻酔科専門医→麻酔科指導医と資格を取得することで、より専門的な仕事に従事して年収をあげられます。

特に麻酔科指導医は教育者としてより専門的な仕事に従事できるので、ライバルと差別化を図れる点もメリットです。

関連記事:オンライン診療・遠隔医療対応でキャリアアップ・年収アップを!始め方を解説

6-2.転職する

もう1つ年収を上げる方法として転職も有効です。

麻酔科医は全国的に不足しているので、転職しやすい職業だといえます。

医師の年収は地域性だけでなく、病院の経営状態でも大きく異なります。

同じ仕事内容でも、経営が安定している病院に転職することで年収を上げられるでしょう。

麻酔科医は単独で患者を診る医師ではないので、開業するよりも転職した方が収入面ではメリットが大きいといえます。フリーランスという働き方もありますが、常に仕事があるとは限らないのでフリーランスとして働く際は慎重に判断してください。

関連記事:医師が臨床以外で働くキャリア先8選!転職時期や必要な経験まで徹底解説

7.まとめ

麻酔科医の年収は、平均すると約1,335万円です。
関東よりも中部、関西、四国、中国地方の方が年収は高い傾向にあります。

麻酔科医は手術中の患者を観察し、最適な処置を行う重要な職種です。そのためには、臨機応変な対応ができる人、冷静さを保てる人、体力と集中力がある人、マルチタスクができる人が向いています。

麻酔科医として年収を上げるためには、キャリアアップを図るか年収が高い病院へ転職する方法があります。他の麻酔科医との差別化にもつながるので、麻酔科専門医や麻酔科指導医などの資格取得を目指してみましょう。

麻酔科医は患者の手術にとって欠かせない職種です。少子高齢化が進み、手術を必要とする人は今後も増加するでしょう。

また、麻酔科医の仕事は専門性を追求し、成長し続けることができる職業です。
この記事がキャリアを考える際の参考になれば幸いです。

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