入院中にお世話になった主治医や病院に対して、「おかげさまで元気になりました。」という気持ちを込めてお菓子などのお礼品を渡したいと考えている方もいるでしょう。
しかし、お礼品を贈りたいという気持ちはあっても、そもそも渡してよいのか、相場金額や喜ばれやすい品目は何かなど、悩むポイントが多くあります。
そこで今回は、主治医へお菓子などのお礼品を渡すべきなのかを解説したうえで、基本のマナーや金額、おすすめの品目などを紹介します。
目次
1.基本的に医師への謝礼・心付けは不要
そもそもお礼品については、基本的に渡す必要がないとされています。
SNSなどで
「お礼品の有無で対応やオペの丁寧さに差が出る」
「お礼品があると対応が変わる」
といった意見を見かけることがあるかもしれません。
しかし、これらはSNS上のひとつの意見であり、実際に多くの病院は「謝礼や心付けはお断りします」と明示しています。つまり、基本的に、お礼品を受け取らないとルール化している病院が多く、お礼品を渡さなければならないというルールは存在しないのです。
日本には医師が30万人以上もいるため、お礼品の有無で対応を変える医師が一人もいないとは言い切れません。とはいえ、お礼品の有無で医師が対応を変えることは、「お礼品の有無で患者への態度を変える医師」であることをアピールすることになるため、ほとんどの医師は対応に変化が無いよう気を付けているでしょう。
また、「お礼品を渡したら受け取ってもらえた」という経験をした方もいるでしょう。しかし、お礼品を受け取った医師が喜んでいるとは限らない点に注意が必要です。
「断りにくい」「やり取りに時間をかけるのがもったいない」といった考えから、とりあえず受け取っている医師も多いと考えられます。
2.主治医(病院)へお礼するときの基本的なマナー
基本的に、医師へのお礼品は不要です。しかし、特別な対応をしてほしいのではなく、純粋に感謝を伝えたいという気持ちで、お礼品を渡したいと考える方もいるでしょう。
その場合、基本的なマナーを押さえて、お礼品を渡すのがおすすめです。
では、お礼品を渡すときの基本のマナーについて詳しく見ていきましょう。
2-1純粋な厚意で渡すなら退院時に事務局宛に贈るのがおすすめ
純粋な感謝の気持ちを伝えるなら、退院時や退院後しばらく経った後にお礼品を渡すのが1つ目のポイントです。入院時や手術前に渡すと、対応をよくしてほしいという下心を持っていると捉えられる可能性があるからです。
そして、2つ目のポイントは、特定の医師に対してお礼品を渡したい場合であっても、事務局宛に届くようにすることが挙げられます。「○○病院 ○○科 ○○先生/ナースステーション」などと宛名を記載します。
病院内で医師に声をかけて渡すとなると、医師に時間を取らせてしまったり、ほかの患者がよいイメージを抱かなかったりすることがあるため、事務局宛に届くようにすることで、スムーズにお礼品を渡すことができるでしょう。
このように、基本的なマナーを押さえて、医師や病院へ配慮したうえでお礼品を贈ると、純粋な感謝の気持ちが伝わりやすくなります。
2-2「お礼は受け取らない」とする病院もある
患者側の感謝の気持ちを伝えるためのお礼品ですが、「お礼品は受け取らない」とルール化している病院が多いことも認識しておく必要があります。
病院内でお礼品を受け取っている様子をほかの患者に見られたり、お礼品のやり取りが当たり前になったりすると、トラブルの元になって病院や医師にとってリスクが高まります。
そのため、「お礼品は受け取らない」とルールを設けて、患者に対して一律な対応をしている病院も多いのです。
その場合、基本的なマナーを押さえたうえでお礼品を渡しても、医師や病院を困らせることにつながるため、まずはお礼品選びの前に病院側のルールを確認することが大切です。
3.主治医へお礼を渡すときの品物選びのポイント
いざお礼品を渡すとなっても、何を渡すべきなのか、金額はいくらのものがよいのかといった点で迷う方も多いでしょう。また、お礼品として渡すべきでないものもあるため、ポイントを押さえて品物選びをすることが大切です。
ここでは、主治医へのお礼を渡すときの品物選びのポイントを解説します。
3-1現金や商品券はNG
お礼品として現金や商品券を渡すのはやめましょう。
まず、金額がはっきりとわかるものをお礼品として贈るのはよくないという考え方があるからです。さらに、入院生活や手術は、特定の医師だけに支えられているものではなく、さまざまな人に支えられています。現金や商品券など、共有しにくいお礼品は避けるべきといえるでしょう。
また、謝礼金は法的に脱税につながるおそれや、医師が公務員として勤務している場合は賄賂罪にあたる懸念があるほか、金銭的なやりとりは、ほかの患者さんが「特別な対応を受けたのでは」と誤解を招く可能性もあります。
このような複数の理由から、現金や商品券をお礼品として渡すのは避けるべきだといえます。
3-2お礼の品の金額は2,000円〜5,000円程度
お礼品を渡すときは、現金や商品券などの金銭的なものではなく、品物として渡すのがおすすめです。
お礼品の金額は2,000円~5,000円程度にするとよいでしょう。あまり高額な品物は気を遣わせてしまうことに加え、安すぎると選択できる品物が限られてしまいます。
また、2,000円~5,000円程度の品物であれば、病院側のルールなどで受け取ってもらえなかった場合でも状況を受け入れて持ち帰ることに納得できるでしょう。
3-3お菓子などの「消えもの」が無難
主治医へのお礼品を選ぶときは、予算2,000円~5,000円程度とし、「消えもの」がよいとされています。「消えもの」とは、食べたり、飲んだりすることでなくなる消耗品を指します。ただし、消えものといってもさまざまな選択肢があるため、以下の条件を意識するのがおすすめです。
- 個包装になっているもの
- 賞味期限が長めのもの
- 常温保存が可能なもの
- その場ですぐに食べられるもの
病院に勤務している人は、出勤日や時間がバラバラであるため、その場で切って食べなければならないホールケーキや、賞味期限の短いフルーツなどは好ましくないといえます。さらに、常温保存ができない生物・ゼリーなども避けるべきでしょう。
そのため、上の条件を加味すると、お礼品として渡すのは、個包装されていて、常温保存が可能な賞味期限の長いお菓子がおすすめです。たとえば、焼菓子の詰め合わせなどであれば、休憩時間などに気軽に食べやすいでしょう。
4.主治医へのお礼品の贈り方
ここでは、熨斗(のし)や手紙の書き方といった、主治医へのお礼品の贈り方について解説します。
4-1熨斗(のし)の書き方
主治医へのお礼品を贈る際、熨斗は紅白の蝶結びで、表書きは「御礼」とするのが一般的です。
ただし、治療の末に患者が亡くなり、遺族がお礼品を贈る場合は無地の熨斗で、表書きは「御礼」とします。
4-2お礼の手紙の書き方
お礼品を贈る際、手紙を一緒に添えたいと考えている方もいるでしょう。その際、以下のような内容で手紙を書くのがおすすめです。
【主治医へのお礼品に添える手紙の例文】
拝啓
初春の候、○○科の皆様におかれましては
ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。期間を記載(〇ヶ月・〇年など)の長きに渡りまして、大変親身に診察治療をして下さり、本当にありがとうございました。
○○先生のおかげで順調に回復がすることができ、本当に感謝しております。
無事、仕事にも復帰することができました。季節の変わり目で体調をくずしやすいときですが、どうぞご自愛くださいませ。
この度は、本当にありがとうございました。
敬具
令和○○年○月○日 ○○ ○○
このような内容で手紙を書き、お礼品に添えるとよいでしょう。
5.患者からのお礼は受け取る?お礼品の疑問について医師の回答を詳しく解説
ここまで、お礼品の基本的なルールについて解説しました。
最後に、株式会社エムスリーが実施した実際に働いている医師へのアンケート調査をもとに、医師目線でお礼品のさまざまな疑問について解説します。
【調査概要】
- 調査期間:2022年12月20日~12月26日
- 回答者総数:勤務医826人、開業医222人
参考:m3.com『患者からの「心付け」、約4割が「受け取る」または「基本的に受け取る」』
5-1所属している医療施設でお礼品の受け取りについてルールはある?
病院などの医療機関では、お礼品を受け取らないとルール化しているケースが多いと解説しましたが、アンケート調査で「お礼品の受け取りについてルールはある?」という問いに対する回答は以下のとおりです。
回答 | 割合 |
受け取ってもよい | 27.2% |
受け取ってはならない | 30.5% |
どちらでもよい | 23.5% |
わからない | 18.8% |
「受け取ってもよい:27.2%」、「受け取ってはならない:30.5%」となっており、医療施設によって判断がわかれていることがわかります。
5-2患者からお礼を受け取るよう依頼されるケースはある?
医療施設側のルールにかかわらず、「患者からお礼を受け取るよう依頼されるケースはある?」という問いに対しては、以下のような結果となっています。
回答 | 割合 |
よくある | 8.8% |
たまにある | 43.2% |
ほとんどない | 28.1% |
全くない | 12.7% |
わからない | 7.2% |
「よくある:8.8%」「たまにある:43.2%」となっており、両方合わせると52%となることから、頻度に差があるものの、半数以上の医師がお礼品の受け取りを依頼されることがあるとわかります。
5-3患者からお礼を受け取るよう依頼されたときの対応は?
お礼品の受け取りを医療施設側が禁止していることがあるとはいえ、患者から実際にお礼品の受け取りを依頼されたら断りにくいのは事実です。
実際に、「患者からお礼を受け取るよう依頼されたときの対応は?」という問いに対するアンケート結果は以下のとおりです。
回答 | 割合 |
必ず断る | 11.9% |
基本的に断る(場合によっては受け取る) | 36.7% |
基本的に受け取る(場合によっては断る) | 31.6% |
必ず受け取る | 8.3% |
そちらとも言えない | 11.5% |
最も多かったのは「基本的に断る(場合によっては受け取る):36.7%」であるとわかります。
しかし、「基本的に受け取る(場合によっては断る):31.6%」「必ず受け取る:8.3%」となっており、両方を合わせるとお礼品を受け取るようにしている医師が約4割にのぼるといえます。
5-4お礼品としてもらうことが多いのはどんなもの?
最後に、お礼品としてどのようなものを受け取ることが多いのか見ていきましょう。
回答 | 割合 |
菓子 | 70.8% |
謝礼 | 66.8% |
手紙 | 52% |
物品 | 38.6% |
その他 | 8.5% |
大人数で分けやすい、空いた時間に食べやすいなど、医療機関で働く人のことを考えて、お礼品としてお菓子が最も選ばれやすいことがわかります。
そのほか、謝礼や手紙といった回答も多いですが、お礼品の品目選びに迷ったら、「個包装・常温保存ができる・賞味期限が長い」といった条件に合うお菓子を選択するとよいでしょう。
6.まとめ
今回は、主治医へお菓子などのお礼品を渡すべきなのかを解説しました。
結論として、主治医へのお礼品は基本的には不要です。お礼品の有無で主治医や病院の対応が変わることはなく、むしろトラブル防止のためにお礼品の受け取りを禁止している医療機関も多くあります。
ただし、純粋な感謝の気持ちでお礼品を渡したいと考えている場合は、医療機関側のルールを確認したうえで、お礼品をお渡しするタイミングを退院時や退院後にする、お菓子を中心とする消えものを選択するといったポイントを押さえて贈ることが大切です。
ぜひ今回の記事を参考に、主治医へのお礼品について検討してみてください。