
医師として勤務を続けていくと、キャリアアップの一つとして転職を考えるタイミングが出てくることがあります。
転職する際には履歴書が必要になりますが、医療機関に好印象を与える書き方をご存じでしょうか。
本記事では、転職を成功させるために履歴書の記入ルールと、医療機関に良い印象を与えるポイントを中心に解説していきます。
これから履歴書を作成する医師は、本記事を参考にしてみてください。
目次
1.医師が履歴書を作る際の記入ルール
応募先の医療機関が指定するフォーマットがあるケース以外は、履歴書のフォーマットは自由です。
それ故に、お手持ちのフォーマットに必要事項が網羅されているのか気になる方も多いのではないでしょうか。
厚生労働省が作成した履歴書様式例をもとに、基本的な項目と記入ルールを解説していきます。
1-1.個人情報
個人情報欄では、氏名、生年月日、連絡先といった基本的な情報を正確に記入します。
個人情報を記載する際のポイント
- 必ず連絡可能な時間帯を記載する
- 自分で取得したメールアドレスを記載する
医師として転職を考える際は、特に連絡可能な時間帯の記入が重要です。
医師の勤務時間は不規則になっているため、電話を受けられる時間帯を伝えましょう。
メールアドレスを記入する際は、職場のメールアドレスを記載せずに自分で取得したメールアドレスを記入します。
履歴書に記入するメールアドレスはGmailなどのフリーメールでも問題ありません。
個人情報を記入する際は、応募先の医療機関からの連絡を適切に受けられるようにしましょう。
1-2.学歴
学歴欄では、1行目に「学歴」と記入してから学歴を記入していきます。
書き始めは高等学校卒業から記載しましょう。
年月欄は、和暦西暦のどちらか書きやすい方で統一して書きます。和暦と西暦の換算方法は下記のようになります。
(平成の場合) 平成年 + 1988 = 西暦年
(令和の場合) 令和年 + 2018 = 西暦年
高等学校は私立と公立を記入し、長くても正式名称を使用します。
学校名が変わっている場合は、「私立〇〇高等学校(現・私立〇〇高等学校)」と記入します。
大学名や学部が長い場合は、無理に記入せずに下の行も使って読みやすくすることを優先しましょう。
読みやすい履歴書は、相手にストレスを与えずに情報を提供できます。
1-3.職歴
職務経歴書を作成する場合、履歴書では勤務先の医療機関の正式名称、科目、雇用形態、役職を記入します。
退職時の記載は「〇〇総合病院退職」、退職が決まっている場合は「〇〇総合病院退職予定」と記入します。
研修などで海外留学を経験している場合、その期間も記入が必要です。
海外での研修は、医師としての経験をアピールする要素になります。
また、医局人事での異動があった場合は、勤務先の医療機関名のみならず、医局人での移動と記載するようにしましょう。
記載することで、医療機関側も転職か人事異動か理解しやすくなります。
職歴を記入した後は、下の行に「以上」と記入して職歴を締めくくります。
1-4.免許・資格
免許と資格欄では、最初に運転免許証を記載し、続けてその他の免許や資格を取得順に記入します。
医師免許を記入する際は、「第〇回日本医師国家試験合格(医籍番号第〇〇〇〇号)」と記入が必要です。
認定医、専門医、指導医などの資格を取得している医師は、取得順に記入していきます。
1-5.志望動機
志望動機欄では、応募する医療機関を選んだ理由や、そこで実現したい目標を具体的に記述します。
自分のスキルや実績を基に、担当者が採用したいと感じられるような前向きな志望動機を作成しましょう。
スキルや経験の他に、人柄や医師の業務で大切にしている考えなども記入すると独自性を発揮できます。
志望動機は、応募する医療機関に合わせて毎回作り直すことが大切です。
どの医療機関にも使える文章は当たり障りがなく、数ある応募の中からあなたを選ぶ理由が薄れてしまうためです。
自分のスキルや考えとマッチする医療機関で働くためにも、誠実な気持ちを文章にしてみましょう。
1-6.自己PR
自己PR欄では、自らの強みやこれまでの経験を通じて、応募先の医療機関にどのように貢献できるかを積極的にアピールします。
志望動機では書ききれなかった強みや経験があれば、より深掘りして記入するのが効果的です。
医師としての業務だけでなく、日々の生活や趣味を通じて学んだことや活かしている強みを記入するのも個性につながります。
良い医師になるためには、スキルや技術だけでなく人柄も重要な要素になるためです。
志望動機と全く同じにならないように注意しつつ、自分が採用担当者だったらどんな自己PRに惹かれるかを考えてみてください。
2.履歴書で医療機関に良い印象を与えるポイント
医師の転職活動で履歴書は、医療機関への第一印象を左右する重要な要素です。
履歴書を作成する際には、応募先の医療機関を理解し、自己の経歴や資格を効果的にアピールすることが求められます。
医療機関に良い印象を与えるための具体的なポイントについて、詳細に説明していきます。
2-1.応募先の医療機関をリサーチする
医療機関へ応募する前に、その医療機関の特色や理念、そして求める医師像について徹底的にリサーチすることが重要です。
医療機関のホームページにアクセスし、採用情報、理事長・院長あいさつ、診療内容、沿革を読んでみましょう。
医療機関の過去と現在を把握することで、価値観や経営方針を理解できます。
また、医学雑誌や研究報告に応募先医療機関の取り組みが紹介されていることもあるので、目を通しておくこともおすすめです。
転職する際は、リサーチで得られた情報を基に志望動機や自己PR欄を作成しましょう。
価値観や経営理念に寄り添った医師からの応募は、採用担当者に良い印象を与えます。
2-2.経歴を効果的にアピールする
医師としての専門性や専門医資格、特定治療法に関する経験は、医療機関にとって重要な情報です。
例えば、○○の症例を○○○症例経験、○○医局では医局員○○名のマネジメントを経験があり、○○について指導など、積極的にアピールしましょう。
特定のスキルや経験が応募先の医療機関とどのようにマッチするかを提示できれば、効果的なアピール材料となります。
履歴書の志望動機や自己PR欄はスペースが限られるので、どの情報が応募先の医療機関に最適かを考えて記入してみてください。
2-3.医療機関に熱意を伝える
医師としての熱意や医療に対する情熱は、履歴書や面接で重要な要素です。
- なぜその医療機関で働きたいのか?
- どのような医療サービスを提供していきたいのか?
- 患者さんに対してどのような価値を提供できるのか?
といった点を明確に伝えましょう。
例えば、「貴院の地域医療に対する取り組みに深く共感し、私の専門知識とスキルを活かして地域社会の健康向上に貢献したい」といった具体的な表現を用いることで、医療機関に対する強い熱意と貢献したいという明確なビジョンを提示できます。
採用担当者は、熱意のある応募者と熱意のない応募者では前者を選びます。
この医療機関で働きたいという熱意を履歴書に込めてみましょう。
3.履歴書に記載すべき志望動機【例文】
多くの医師が履歴書を作成する際に悩むのが、志望動機における志望動機の作成です。
応募する医療機関を理解し、そこで働きたいという熱意を伝えるために重要な項目になるためです。
以下、医師が履歴書を作成する際に効果的な志望動機の例文を紹介します。
3-1.貢献度を伝える例文
私はこれまでに、〇〇分野で〇年間経験を積んできました。
○○医局では、年間、医局員○○名のマネジメント、〇〇についての指導を積極的に行ってきました。
この経験を活かし、貴院の地域医療への貢献にも積極的に関わっていきたいと考えています。
地域の方々の健康を守り、貴院に貢献することが私の目標です。
上記は、これまでの経験を基に応募先の医療機関に貢献できることをアピールしています。
特定の分野やプロジェクトに携わる医師を募集している医療機関には、具体例を混ぜて貢献できることを伝えましょう。
3-2.熱意を伝える例文
私はこれまで、同分野での研究に携わり、いくつかの治療法の開発に貢献してきました。
これらの経験と知識を活かし、患者様の健康促進に貢献できます。
貴院の一員として患者様一人ひとりに最適な治療を提供し、豊かな暮らしを送るサポートをしていきたいと考えております。
上記は、応募先をリサーチしていることと応募した理由を提示し、この医療機関で働きたいという熱意を伝えています。
これまでの取り組みや経営方針を理解している応募者は、採用担当者にとって好印象になり、選考を優位に進められます。
3-3.プライベートな理由で、時間的な制約があることを伝える例文
子育てや介護など様々な理由で、時間的そして場所的な制約があり、致し方なく転職せざる得ないこともあるかと思います。
その際にプライベートを「優先しなければならない理由だけ」を伝えることがないように、ご自身の条件だけでなく、今までの経験や実績から応募先医療機関での「長期的な展望」や「貢献」を採用担当者にみせることも大切です。
現在、プライベートな理由で、短期的に特定の曜日や時間帯制約がございます。このような状況は一時的なもの予定しておりますが、柔軟な対応をお願いできると非常に助かります。 できる限り業務に支障を来さないように調整いたしますので、ご理解いただけますと幸いです。
長期的には、貴院の発展に寄与するために、専門分野の深化や新たな医療プロジェクトへの積極的な参画を視野に入れています。これまでの専門的な経験を活かし、貴院の成長に貢献する所存です。
長期的なキャリアプランを提示することで、応募先の医療機関に貢献できる旨を伝えましょう。
4.履歴書を提出する前のチェックポイント
医師が履歴書を提出する際は、間違いがないかの最終確認が必要です。
これから紹介するチェックポイントを細かく確認してから履歴書を送付しましょう。
4-1.基本情報の確認
履歴書に記入された個人情報に誤字脱字がないか、再度チェックしてください。
氏名、住所、電話番号、メールアドレスなどの情報が正しいことを確認しましょう。
基本情報が間違っていると、応募先の医療機関からの連絡を受け取れなくなってしまいます。
連絡がつかない応募者は選考から外れてしまうため、送付前に再度チェックする必要があります。
4-2.学歴・職歴の正確性
医師としての学歴や職歴に誤りがないか確認してください。
特に、医学部の卒業年度や研修医期間、勤務した医療機関とその期間などは、応募先の医療機関が重視する情報です。
経歴の流れを端的にまとめ、キャリアの成長が伝わるように記入しましょう。
4-3.免許・資格のリストアップ
医師免許をはじめとする資格や認定などが正しくリストアップされているかを確認してください。
免許や資格情報は、医師としての専門性や信頼性を示すために重要な要素です。
資格の正式名称、医籍番号、取得年月日順に記載しているかを確認し、採用担当者が読みやすくなっていれば問題ありません。
4-4.志望動機と自己PRの具体性
志望動機や自己PRが具体的で、あなたの熱意が伝わる内容になっているか再確認しましょう。
応募する医療機関への理解を示しつつ、自身の強みや経験を活かしたいという意欲を明確に伝えます。
志望動機や自己PRは、他の応募者と差別化を図りやすい項目です。その特徴を最大限に活かしてみましょう。
5.医師が職務経歴書を作る際のポイント
医師が職務経歴書を作成する際には、自分の専門性や経歴を応募先の医療機関に詳細に伝える必要があります。
職務経歴書は単なる経歴の羅列ではなく、医師個人の専門性やこれまでの業績、キャリアの成長を具体的に示すための書類です。
以下、職務経歴書を作る際のポイントについても解説していきます。
5-1.記載する情報の取捨選択する
職務経歴書に記載する情報は、応募先の医療機関が特に重視するスキルや経験に絞り、それに関連する職務経験や成果を中心に記入しましょう。
自己PR欄で、関連する研修や実務経験、達成した成果を具体的に記述します。
応募先の業務内容と直接関連性の低い経験は簡潔に触れるか、あるいは記載そのものを省略するのも効果的です。
職務経歴書では、履歴書に記入できなかった具体的な業務内容や参加したプロジェクトも記入できます。
採用担当者にあなたの魅力を伝えるために、どんな情報が必要か整理してみましょう。
5-2.自分に合った形式を選ぶ
職務経歴書の形式は、自分の経歴や強みを最も効果的に伝えられるものを選択することが大切です。
以下の形式から、自分に合った形式を選んでみてください。
- 逆編年体形式:最新の職歴から順に記入する
- 編年体形式:古い職歴から順に記入する
- キャリア形式:業務やプロジェクト単位で記入する
直近の成果をアピールしたい場合は、逆編年体形式を用いて直近の実績から見てもらうのが効果的です。
年代順に職務を並べる編年体形式は、キャリアの成長を提示できる点が魅力です。
特定の専門分野やスキルセットにフォーカスしたい場合は、キャリア形式が適しています。
何をアピールしたいかを整理して、適切な職務経歴書の形式を選択してみましょう。
6.履歴書を送付する際の注意点
医師が履歴書を送付する際は、不手際がないように細心の注意を払う必要があります。
履歴書は応募先の医療機関が最初にあなたを判断する重要な書類になるためです。
以下、履歴書を送付する際の注意点を解説します。
6-1.履歴書には送付状(カバーレター)を必ずつける
履歴書を郵送する場合、送付書類の一番上に「送付状(カバーレター)」を同封します。
丁寧なビジネス文章を用いて、応募先の医療機関に悪い印象を与えないようにしましょう。
▼テンプレートのダウンロードはこちら
送付状例(サンプル)
<送付状に記載すべき内容>
◆送付年月日
・日付は投函日を記入します。履歴書・職務経歴書も同じ日付に揃え、西暦・和暦も統一します。
◆宛先は正式名称で記載する
・正式名称で「会社名(医療機関名・団体名)」「採用担当者の所属部署と肩書」「採用担当者名」の3段で記載することが基本です。
・採用担当者がわからない場合は、「人事部御中」と記載するか「採用ご担当者様」と記載します。
◆本文は頭語と結語を使う
・頭語として「拝啓」ではじめて「敬具」の結語で終えます。また、「拝啓」に続きあいさつを文を入れる場合は「、」ではなく頭語の後に一字スペースを空けて続けることが基本的マナーです。「貴社ますますご清祥のこととお慶び申し上げます」などシンプルな定型文で問題ありません。
・結語までの間には応募の経緯や、面接のお願いなどを書きます。
◆同封書類の内容と部数
・箇条書きでわかりやすく伝えるため、記がきにします。
「記」とした後に改行し、書類内容と部数を記載します。
<用紙>
・用紙は一般的にはA4サイズを選びます。
6-2.書類が折れないような封筒を用意する
履歴書や職務経歴書は、折れやしわが入らないように慎重に送付する必要があります。
履歴書や職務経歴書が折れたりしわが入ったりすると、不注意や軽率な印象を与えかねません。
適切なサイズの封筒を選び、書類が曲がらないようにクリアファイルに入れるなどの対策を講じます。
クリアファイルは大切な履歴書や職務経歴書が雨などで濡れないためにも効果的です。
角A4や角2などの白い封筒を用意し、封筒表の左下には「応募書類在中」と記入します。
裏には住所と氏名を忘れずに記入してください。
6-3.応募書類提出前の最終チェック一覧
履歴書を提出する前に、必要書類がそろっているか、封筒の書き方に問題はないかなど、最後に再度確認しておくと案品です。
投函する前に下記の表を見ながらもう一度確認してみましょう。

参照:厚生労働省「応募書類の書き方」
参照:厚生労働省「添え状・お礼状を書くときのポイント」
7.まとめ
本記事では、履歴書の書き方について改めてご紹介いたしました。
履歴書は、転職希望先の医療機関とご自身が合うかどうか判断する初めの1歩となります。
そのため、あなたが働くことでどんなメリットがあるか伝えることが非常に大切となります。
本記事で紹介した項目を、確認頂き自分の魅力を最大限お伝えできるよう心がけましょう。
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