医師がブランクからスムーズに復職するには?その方法や対策を解説

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結婚・出産・育児によるライフステージの変化や、家族の介護などの家庭事情、自身の病気や怪我、または他分野へのチャレンジなど、仕事から離れる可能性は誰にでもあります。
医師の仕事から離れていた期間を経て復職を考える際に、考慮すべき課題がブランクです。

今回は、誰にでも起こりえる可能性があるブランクをどのように解決したらいいのか、スムーズに医師が復職を成功させるにはどうしたらいいのか解説します。

1. 医師の経歴にブランクができる主な理由

医師も個人的な事情を持って働いている以上、様々な理由でブランクができることがあります。本章では、その代表的な理由について紹介します。

1-1.結婚や出産、育児

大きなライフイベントの一つに、結婚や出産、育児が挙げられます。
現在は共働きが多くなりましたが、病院の勤務医の場合は夜勤やオンコール対応なども多く、不規則な勤務が大きな負担となることも珍しくありません。
結婚を機に働き方を変えたいと考え、医師以外の仕事を模索するケースも見受けられます。

また、女性医師の妊娠や出産による体力低下や、育児事情に配慮した勤務体制を採用できる病院は、そう多くないのも現実です。特に、出産後は著しく体力低下するケースがあるだけでなく、乳児期は慢性的な睡眠不足もあります。子どもが小さい間は夜勤やオンコール対応が難しい状況に置かれるため、子どもが一定年齢になるまでいったん現場を離れ、育児に専念するというケースも見られます。

1-2.配偶者の転勤

配偶者の転勤により、やむなく医師の仕事を離れるケースもあります。
医師は資格があれば地域を問わず、働くことは可能です。しかし、希望する勤務条件や今までのスキルを活かせる求人が必ずしもあるとは限りません。
配偶者の転勤について行った結果、転勤した先に希望条件に合う求人がなく医師の仕事から離れる場合もあります。

1₋3.介護

家族の介護により、離職する事例もあります。
公的な介護サービスなども利用できますが、介護対象となる家族から目を離せないケースもあり、医師の仕事を続けられなくなる方もいます。
発達障害や重度の介助を要する疾患の場合、24時間体制で家族が見守らなければならないケースもあり、やむなく離職することもあるようです。

1₋4.スキルアップによる留学や通学

医師としてさらなるスキルアップを目的にした大学院進学や、海外の最新医療を身につけるための留学など、一時的に現場を離れて勉学に励む方もいます。
医師の業務はハードなため、スキルアップとの両立は至難の業です。

また、医局で講師や准教授、教授と上位の職を目指す場合は博士号取得が応募資格として課されるケースも多くなります。そのため、一度現場を離れてスキルアップに専念し、数年かけて博士号などを取得したうえで再度現場へ復職する方もいるのです。

1-5.自分自身の怪我や病気

自分自身が大きな病気や怪我、精神的な疾患を患うこともあります。
罹患した病気や怪我、精神疾患の状態にもよりますので一概には言えませんが、長期間現場を離れ、治療に専念しなければならない場合もあるでしょう。

特に、患者とのトラブルや人間関係のストレス、日常業務の過酷さからメンタル面で不調を抱える医師は増加傾向にあり、自分自身だけでなく同僚が休職したという経験もあるかもしれません。
職場環境が過酷となって自身に負担がかかり、病気や精神的不調につながる恐れもあるのです。

1-6.医師以外のキャリアの選択(転職やキャリアチェンジ)

医師として勤務した後に、医師以外のキャリアを選択することもあります。
理由は様々ですが、他の仕事にやりがいを感じるようになったり、興味を持つようになったりすることもあるでしょう。医師としての資格は活かしつつ、民間企業で研究開発や品質管理の仕事、産業医、自治体で公衆衛生医師など臨床以外の選択をする方もいます。

2.ブランクから復職したいと考える医師が感じる課題

実際に、医師が復職したいと考えた時にどんなことに不安や問題を感じるのでしょうか。

2-1.勤務形態を問題なくこなせるかどうか

病院で臨床医として働く場合、夜勤やオンコールがある職場も少なくありません。医師として現場を離れていた期間や理由にもよりますが、復職した後に夜勤やオンコール対応をこなせるかどうか、不規則な勤務形態に対応できるかどうかは大きな不安要素となる方も多くいるようです。

2⁻2.精神的、体力的に問題がないかどうか

メンタルの不調で現場を離れていた場合、復職後の環境変化や人間関係などによって受けるストレス、働き続ける気力を維持できるか分からず、周りに迷惑をかけるのではないかと不安になり復職に二の足を踏むケースが見られます。
また、大きな病気や怪我で現場を離れていた場合は、罹患した症状にもよりますが体力低下によって以前と同じように働けるかという不安を持つ方もいます。

2⁻3.医学知識や治療法の変化

現場を離れていたブランクの期間や、診療科による違いもありますが、医学知識や治療法などの最新知識をどのように吸収して追い付けばいいのか、治療法の変化はないか悩むこともあるでしょう。
特に、現場を離れている間に自身が関わっている診療科で新薬の認可が下りたり、新たな治療法の解明などの大きなニュースがあったり、医学知識のブラッシュアップの負担が大きいことも考えられます。

2⁻4.周囲のフォロー

育児や介護と両立しながら現場に復職する場合は、夜勤やオンコール対応ができず時短勤務や日勤のみなど、他の医師とは違う勤務条件で復職することがあります。

特に育児をしながらの復職では、こどもの急な体調不良などで早退、突発的な欠勤などもあり得ます。こうした事態をフォローできる病院ばかりではなく、周囲との連携がうまく取れないケースも考えられるでしょう。
また、自身の病気や怪我、精神的不調から復職した場合、以前と同じように勤務できるまでに時間がかかったり、治療による定期通院や一定の配慮が必要になったりする場合もあります。

3医師がブランクから復職するためのポイント

医師がブランクからスムーズに復職するためのポイントを紹介します。

3₋1.雇用形態にこだわらない

復職する際、いきなり常勤として勤務することにこだわらないなど、雇用形態を柔軟に考えることが大切です。雇用形態を柔軟に考えることで、復職しやすい職場が見つかりやすくなる可能性が高まります。

3₋2.勤務条件を柔軟に考える

勤務条件も柔軟に考えることが大切です。例えば、育児中の場合は家庭とも両立しやすい平日の日勤のみで構わない求人を探すなど、働ける時間帯や曜日を考えるのも、復職しやすくするためには必要になります。ワークライフバランを意識した勤務条件を考えてみるといいでしょう。

3₋3.クリニック(診療所)など夜勤やオンコールのない医療機関で働く

クリニック(診療所)など、夜勤やオンコール対応がない医療機関で働くのも一案です。勤務時間が比較的限定されているクリニック(診療所)は休日も固定されているケースが多く、復職しやすい求人も見つかりやすいかもしれません。

3₋4.育児施設付きの病院で働く

育児中の場合、復職の大きな壁になるのが子どもの急な体調不良です。一般的な保育施設では、体調不良の子どもを預かってくれるケースは非常に少ないため、休まざるを得ないケースを考えて復職できない方もいます。
しかし、病院の中には勤務する医療従事者向けの病児保育施設を併設しているところもあります。安心して預けられるだけでなく、容態の変化にも柔軟に対応してくれる病児保育施設がある職場で復職を果たす医師もいます。

3₋5.民間企業や自治体など病院以外のキャリアも視野に入れる

民間企業や自治体など、病院やクリニック(診療所)以外の働き方を視野に入れる方もいます。臨床医とは違う職務内容となりますが、医師の知見と経験が求められていることに変わりはありません。多様なキャリアを形成できるというメリットもあります。

3₋6.復職前とは違う診療科を検討する

復職前とは違う診療科で新たなキャリアを検討する方もいます。診療内容などは変わるかもしれませんが、今までの経験を活かしながら新たな知識を習得し、より広い視野で取り組んでいくことも可能です。

3₋7.ブランクがあっても応募可能な求人を選ぶ

医師の求人の中には、ブランクがあっても構わないと謳っているものも少なくあません。ブランク可能としているため、復職後の勤務に対する相談や、知識習得のためのフォローが手厚いところもあります。周囲にブランクから復職した方がいる場合もあり、スムーズに復職しやすい環境が整っている可能性が高いでしょう。

4.ブランクを補うためにできること

4₋1.育児休業中にスキルや知識の維持に努める

育児休業でブランクができる場合は、可能な限りスキルや知識の維持に努めることが大切です。子育てや自身の体調管理が優先ですが、同時に復職後を見据えた準備も必要になることを意識し、できる範囲でスキルや知識の習得を心がけましょう。を心がけましょう。

参照:公益財団法人日本医師会「女性医師支援センター」育児休業中の資格やスキルの維持

4₋2.最寄りの自治体の支援事業を活用する

住んでいる地域によって違いますが、最寄りの自治体や都道府県の医師会などで、復職支援事業を展開している場合があります。
復職に関する相談や、希望条件に合う求人のあっせんなど支援している内容は様々ですが、活用してみるとスムーズに復職できるかもしれません。

参照:厚生労働省「女性医師等就労支援事業」

4₋3.各地の医師会などが実施する復職プログラムに参加する

各地の医師会などでは、復職に向けて様々なプログラムを企画、実施しているケースもあります。臨床において必要な知識のブラッシュアップや、最新情報などが学べるようになっており、復職時の不安である「スキルや知識の習得」をフォローしています。

参照:東京都立病院機構「東京医師アカデミー・復職支援プログラム」
参照:名大総診「臨床再研修プログラム(復職・転職支援)」

5.ブランクができる前にできること

5₋1.医局や周囲に相談する

医局や周囲に状況が判明した時点で相談することが大切です。例えば、妊娠が判明した場合は休暇に入るまでの働き方だけでなく、復職後にどのように働きたいかなど余裕を持って相談することで、周囲も対応しやすくなるでしょう。
突発的に病気や怪我を負った場合も、状況を定期的に報告することで周囲も復職に向けたフォロー体制を組みやすくなります。

5₋2.先輩医師の働き方などについて話を聞いておく

先輩医師の多様な働き方やキャリアについて話を聞き、自分のキャリア選択だけでなくブランクが発生した際の参考として頭にとどめておくことも大切です。
いつ、どのような形で働き方が変化するか分からないからこそ、多くの話を聞いて選択肢を増やしておくことが自身にとってもプラスとなるでしょう。

5₋3.休業制度など福利厚生が整った病院へ転職しておく

近年は、医師がより働きやすい環境や福利厚生を整えた病院も増えてきました。女性なら結婚や出産、育児との両立実績がある病院を選ぶなど、今後起こる可能性のあるライフプランを見据えることも大切です。また、急な病気や怪我にかかった場合も休業制度が充実した病院もあります。福利厚生に着目した求人探しをしてみるのも一案です。

6.まとめ

以上、医師のキャリアでブランクができる代表的な出来事や復職を考えた時に課題となること、その対策について解説しました。
今は健康で問題なく働けていても、キャリアにブランクができる可能性は誰にでもあります。だからこそ、様々な可能性を考慮しておくことが大切になります。
この記事が、あなたのキャリアやライフプランを考えるための一助となれば幸いです。