医師がアルバイトとして働く理由は?平均年収や仕事内容を解説

医師 アルバイト

医師として働いている方の中には、周りの医師がアルバイトとして働いているのを知り、事情が気になっている方も多いのではないでしょうか。

「なぜ常勤先があるのにアルバイトをするのか?」
「アルバイトだけで生活できるのだろうか?」
「アルバイト医師の待遇は?」
など、さまざまな疑問があるでしょう。ただ、働き方や年収などは「プライベートな要素が強いため聞きにくい……」と思われている方が多いかと思います。

そこで今回は、実は気になる医師がアルバイトとして働く理由や待遇、仕事内容などを解説します。

1.医師の雇用形態

医師の雇用形態は大きく3つに大別できます。

  • 常勤
  • 非常勤
  • アルバイト

非常勤医師とアルバイト医師は区別されずに “非常勤”として表現されることも多いですが、やや意味合いが異なります。ここでは、医師の勤務形態について詳しく解説します。

1-1常勤

厚生労働省が令和元年7月に出した「医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱」において、常勤医師の定義を以下のように示しています。

(1)常勤医師とは、原則として病院で定めた医師の勤務時間の全てを勤務する者をいう。
ア 病院で定めた医師の勤務時間は、就業規則などで確認すること。
イ 通常の休暇、出張、外勤などがあっても、全てを勤務する医師に該当するのは当
然である。
(2)病院で定めた医師の1週間の勤務時間が、32時間未満の場合は、32時間以上勤
務している医師を常勤医師とし、その他は非常勤医師として常勤換算する。

医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱 p.91」より一部抜粋

このように、 “1週間の勤務時間が32時間以上かどうか “という点が、常勤医師の定義であることがわかります。ただ、医療機関によっては異なるルールで常勤・非常勤を区別しているところもあるため、必ずしもこちらの定義が適用されるわけではありません。

また、常勤医師は常勤先の病院からボーナスがもらえたり、雇用保険に加入できたりするのも特徴です。正社員として働くサラリーマンと同じ立ち位置だといえます。

1-2非常勤は「定期非常勤」と「アルバイト」に分けられる

先に解説したとおり、勤務時間が週32時間以上かどうかという点が常勤・非常勤のボーダーラインとなりますが、非常勤といっても「定期非常勤」と「アルバイト」に分けられます。

1-2-1定期非常勤

一般的にいう “非常勤”は「定期非常勤」のことを指すことが多く、さまざまな医療機関を不定期に転々とするのではなく、特定の医療機関で長期契約を結んで勤務するのが特徴です。そのため、決まった曜日や隔週単位などある程度決まったスケジュールのもと勤務します。

勤務時間や日数を医師が自由に調整できることが常勤との大きな違いです。そのため、必ずしも週の勤務時間が32時間以下というわけではなく、非常勤医師の中にも週あたりに勤務時間が32時間を超えている方もいます。

非常勤医師は自由な働き方を選択できる反面、福利厚生や各種手当を受けられないケースが多いのはデメリットです。

1-2-2アルバイト(スポット)

最も自由度の高い働き方を選択できるのがアルバイト医師の特徴です。

定期非常勤として勤務する医師とは異なり、勤務先やスケジュールが決まっていません。常に転職サイトやエージェントなどを利用し、働き先を転々としていくので収入は安定しにくいですが、空き時間だけ勤務するといった自由な時間の使い方ができます。

アルバイト医師が募集されるのは、健康診断や予防接種など一時的に人員が必要になったケース、長期休暇で人手不足になったときなどが挙げられるでしょう。

2.医師がアルバイトとして勤務するのはなぜ?理由を解説

アルバイト医師の募集がかかるのは不定期であり、自由度が高い反面、収入が安定しにくいという側面もあるため「なぜアルバイトとして勤務するのか?」と疑問を抱く方もいるでしょう。

ここでは、医師がアルバイトとして勤務する理由を詳しく解説します。

2-1年収アップを目指している

アルバイト医師として働いている方の中には、常勤先を持ちつつ、副業としてアルバイトをしている方も少なくありません。

Dr.転職ナビが398名の医師を対象に実施した調査によると、常勤先を持ちながら、副業でアルバイト医師として働いている方の割合は77.3%という調査結果が出ています。さらに、同調査によると、副業でアルバイト医師として勤務する目的として最も多かったのが「年収を上げたい」という理由でした。

常勤先で勤務するだけでも多忙ですが、休日や隙間時間を活用して少しでも年収をアップさせたいと考えている方が多いとわかります。

出典:Dr.転職なび「医師がアルバイトをする理由は?非常勤先からの年収額やメリット、「非常勤のみ」という働き方も解説」

2-2将来に向けてのキャリア形成・活躍の場を広げたい

将来に向けてキャリア形成を行いたい、活躍の場を広げたいという理由も多くありました。

常勤医師として勤務する場合、数ある診療科目の中から1つを選択して勤務することになります。

もちろん、常勤先の診療科目で経験やスキルアップを目指すことは可能ですが、アルバイト医師として常勤先以外の診療科目を選択すれば、普段携われない分野・診療科目で経験を積めます。

実際に独立行政法人 労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」において、複数の勤務先で働く理由として「自分が活躍できる場を広げたいから」という回答が17.7%、「複数の病院で知識・技術を習得したいから」という回答が15.9%を占めました。

出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査 p.3

2-3自由な時間を増やすため

自由な時間を増やしたいと考えて、アルバイト医師を選択する方もいます。

男性医師で自由な時間を確保したいと考える方もいますが、とくに女性医師の場合、妊娠・出産といったライフイベントをきかっけに、働き方を変えたいと感じる方が多い傾向にあります。

日本医師会女性医師支援センターの「女性医師の勤務環境の調査」では、女性医師の中で家事・育児・介護と仕事の両立に対して悩みを抱えている方が68.9%、さらに診療科目によって差があるものの、全女性医師のうち7~20%がアルバイト(非常勤含む)として働いているとの結果が出ました。

そして、女性医師がアルバイト医師として勤務する理由で最も多かったのが“育児”となっています。

つまり、結婚や妊娠、出産などを通して、医師として働きながらも家庭や子どものために自由な時間を確保したいという理由から、アルバイト医師を選択していることがわかります。

出典:日本医師会女性医師支援センター「女性医師の勤務環境の調査 p.9.10.27

2-4開業の準備期間として

開業に向けた準備期間として、一時的にアルバイト医師として働く方もいます。

常勤先によっては忙しくてプライベートの時間を確保するのがむずかしい、休日は疲れて開業準備が進まないといった方も多いのではないでしょうか。

しかし、開業するには資金の準備や物件の確保、各種申請などさまざまな準備が必要であり、基本的に1年前後の準備期間が必要です。さらに、可能な限りブランクを開けずに、なおかつスムーズに開業するために、アルバイトという選択をする方もいます。

2-5そのほかの理由

独立行政法人 労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、複数の勤務先で働く理由として以下のような理由もみられました。

  • 勤務先からの指示があるから
  • 1つの勤務先では生活自体が営めないから
  • 不足している専門科の病院から要請があったから
  • 様々な分野の人とつながりができるから
  • 短時間勤務で複数の勤務先で働く方が効率的

このように、さまざまな理由から非常勤医師、アルバイト医師として働いている方がいるとわかります。

出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査 p.3

3.アルバイト医師の割合はどのくらい?アルバイトのみで生活できる?

アルバイト医師の働き方は以下の2つに大別できます。

  • 常勤+アルバイト
  • アルバイトのみ

ここでは、それぞれの割合や生活状況について解説します。

3-1【常勤+アルバイト】の割合

厚生労働省が全国の10万人を対象に行った「医師の勤務実態調査(令和元年)」によると、常勤医師は全体の69.4%という調査結果が出ており、さらにDr.転職ナビが実施した調査によると、常勤医師のうち、副業でアルバイト医師として働いている方の割合は77.3%という調査結果が出ています。

2つの調査結果により、常勤医師としてだけ勤務している方もいますが、常勤医師として働くかたわら副業で非常勤医師やアルバイト医師として働く方も多いとわかります。

出典:Dr.転職なび「医師がアルバイトをする理由は?非常勤先からの年収額やメリット、「非常勤のみ」という働き方も解説」

出典:厚生労働省「医師の勤務実態調査(令和元年)

3-2【アルバイトのみ(常勤先がない)】の割合

常勤医師は全体の69.4%であるのに対し、非常勤医師は全体の12.6%という調査結果が出ており、おおよそ10人に1人は非常勤(アルバイト医師を含む)として働いていることがわかります。

後の項目で年収について詳しく解説しますが、10人に1人はアルバイト医師を含む非常勤という働き方を選択しており、その割合からアルバイトだけで生活できると推測できます。

出典:Dr.転職なび「医師がアルバイトをする理由は?非常勤先からの年収額やメリット、「非常勤のみ」という働き方も解説」

出典:厚生労働省「医師の勤務実態調査(令和元年)

4.アルバイト医師の気になる年収や働き方

常勤先を持たずに医師として活躍している方も一定数いるとわかりましたが、気になるのが年収や勤務時間についてではないでしょうか。

ここでは、アルバイト医師の気になる年収や働き方を詳しく解説します。

4-1平均年収

アルバイト医師は時給制や日給制で給与が発生しているケースが多く、アルバイト医師の求人を見てみると時給1万円~程度が相場であるとわかります。

仮に時給1万円で1日8時間、週4日勤務と仮定すると、月収は以下の通りです。
1. 週4日×8時間=32時間(1週間あたり)
2. 32時間×1万円×4週=128万円(月収)

アルバイト医師として1日8時間、週4日勤務を行うと、月収128万円、年収1,536万円になるとわかります。勤務先が継続して見つかれば、常勤先がなくても金銭面では問題なく生活できると考えられます。

ただ、年収がアップするごとに税金や健康保険の支払額が上がります。また、アルバイト医師は自分自身で確定申告などの手続きを行う必要があり、事務作業が面倒な場合は税理士や代理人を雇う必要があります。

努力次第で年収アップが見込めるものの、必要経費が膨らみやすい点には注意点です。

4-2平均勤務時間

アルバイト医師は自由な働き方を選択できるので、決まった勤務時間はありません。

ただ、医療法では “週の労働時間が32 時間未満の場合は非常勤” と定められていることもあり、アルバイト医師の1週間あたりの平均勤務時間は27時間となっています。

1日8時間勤務と想定すると、週あたり3.3日働くと27時間に達するため、週3~4日勤務のアルバイト医師が多いとわかります。

4-3シフト内容

アルバイト医師のシフト内容ですが、勤務先や診療科目によってさまざまです。

ただ、常勤医師のようにフルタイムで働く必要はなく、午前中のみ、午後のみ、特定の曜日のみといった働き方が可能です。

求人が募集されていることが大前提になりますが、自分で自由なシフトを組めます。

5.アルバイト医師の仕事内容

最後に、アルバイト医師の仕事内容を解説します。

5-1スポット外来

大型連休で医師の数が減ったり、急に患者数が増えたりして、外来を任されることがあります。

1日~数日、1日あたり8時間ほど勤務するのが一般的で、初診の患者を診察するのが主な仕事です。スポット外来はほとんど残業が発生しないため、勤務時間が過ぎれば業務終了となります。

5-2当直のスポット募集

当直医として、定期的な見回りや急患の対応を任されることもあります。

当直は1泊平均3~5万円が相場で、当直中に手術を行うと報酬がプラスで受け取れることもあり、他の仕事内容よりも報酬面でメリットが大きいといえます。

5-3健康診断医の一時的な募集

学校や企業で行われる健康診断は、アルバイト医師の募集が多い傾向にあります。

7~8時間勤務で4~8万円の日給が相場であり、報酬は高くありませんが、急患の受け入れなどイレギュラーな対応が不要なので人気があります。

ただ、受診者をスピーディーかつスムーズに診断しなければなりません。また、内視鏡検査などが必要になると報酬がプラスされるケースがあります。

5-4大学やセミナー講師などの不定期募集

大学やセミナーなどで講師として働く仕事もあります。

たとえば、一般社団法人 日本健康教育振興協会では、定期的にセミナーを実施しており、セミナーを開催してくれる医療従事者を募集しています。5~50万円の講師料が相場で、セミナーの例は以下の通りです。

  • 予想医学をしって、健康長寿を目指す
  • 知らないでは済まされない、医薬品をサプリメントの知識

どこで講師を行うのか、講義・セミナーの目的は何かによってさまざまな内容があります。講師の報酬はこれまでのキャリアや実績が重視されるため一概には言えませんが、1回3時間あたり5~20万円が相場です。医師・講師としてのスキルや経験を磨けば、高い報酬を期待できるのがメリットです。

5-5在宅勤務によるアルバイト医師の募集

アルバイト医師として、在宅勤務で働く方法もあります。

たとえば、オンライン診療は情報通信機器を通してビデオ通話のように診察する方法で、時給3,000円程度です。そのほか、オンコール待機や読影、専門知識を生かして記事の執筆・監修などを行う在宅ワークもあります。

読影とは、エコーやCTMRI、超音波などの検査画像丁寧に読み解き、診断することを指します。基本的の放射線科の専門医が行いますが、近年では放射線科以外の診療科の専門医が読影を行うケースも少なくありません。

 アルバイト医師として在宅勤務ができれば、自宅にいながら効率的に働けるのが最大の魅力です。仕事内容によってやや報酬が安いものの、育児や介護で忙しい方でも働きやすいため人気があります。

まとめ

自由な働き方や年収アップを理由に、アルバイトを選択する医師も少なくありません。

アルバイト医師としてコンスタントに仕事が見つかれば、常勤先を持たなくても収入面では問題なく生活できますが、常勤医師よりも不安定であることや確定申告などの事務処理を自分で行わなければならないといった懸念点もあります。

理想の年収や働き方、家庭と仕事とのバランスなどを考え、アルバイト医師を含めてストレスのない働き方を見つけてみてください。