研修医と聞くと仕事が激務で給料が安いというイメージを抱いていませんか?
2004年から始まった医師臨床研修制度や少子高齢化による医師不足によって、研修医の待遇は改善されつつあります。
これから研修医になる医学生は、研修医になると給料がどのくらいもらえるのか気になるでしょう。
本記事では、研修医の給料を初期研修医と後期研修医、地域別に解説していきます。研修医に関するよくある質問も紹介するので、これから研修医になる医学生は参考にしてみてください。
目次
1.研修医の仕事内容は?初期研修と後期研修の違い
まずは研修医の具体的な仕事内容と、研修医に大切な初期研修と後期研修の違いについて解説していきます。
研修医になってからどのような研修を受けていくのか、参考にしてみてください。
1-1.研修医の仕事内容
研修医としての業務は、基礎的な医療技術と知識と技術の習得に焦点を置きます。
⚫︎研修医の仕事内容(一例)
- 患者の簡単な処置
- 診察
- 手術の補助
- 患者のフォローアップ
このように、医師としての基本的な業務を担当します。
例えば、内科では病歴の聴取や診断、外科では手術の補助や患者のアフターケアなどです。
医師のサポートをしながら実践的なスキルを身につけていきます。
研修期間は、実際の医療現場でしか分からない業務やスキルを学ぶ大切な期間です。
1-2.初期研修と後期研修の違い
初期研修は医師免許を取得後、最初の2年間に行われる研修です。
初期研修期間は、一般的な臨床技術の習得に焦点を当てます。
様々な科をローテーションし、幅広い医療知識と技術を身につけることが目的です。
厚生労働省は、初期研修1年目に以下のような研修を定めています。
⚫︎初期研修1年目
- 内科:6ヵ月
- 外科:3ヵ月
- 救急・麻酔科:3ヵ月
⚫︎初期研修2年目
2年目になると、以下の研修が必須です。
- 小児科:1ヵ月
- 産婦人科:1ヵ月
- 精神科:1ヵ月
- 地域保健・医療:1ヵ月
後期研修は初期研修を修了後、専門医になるまでの期間を指します。
後期研修では特定の医学分野を深く学び、専門医資格の取得を目標とします。
循環器内科や消化器外科など、特定の分野で高度な医療技術や知識が求められるため、専門医を目指す医師になるために不可欠なプロセスです。後期研修では、より専門的な治療や患者対応など、初期研修よりも高度な医療活動に従事していきます。
2.研修医の平均年収・給料
医学生にとって重要なのは、研修医の給料がいくらもらえるかの情報です。
研修医1年目の給料と、地域別の研修医の給料について解説していきます。
2-1.研修医の1年目の年収・給料
研修医1年目の給料は以下の通りです。データは、厚生労働省が2011年に実施した臨床研修医の推計年収です。
研修医の年収 | 大学病院(114病院) | 臨床研修病院(924病院) | 合計(1038病院) |
平均 | 3,074,172円 | 4,510,339円 | 4,352,610円 |
最大 | 4,239,600円 | 9,550,000円 | 9,550,000円 |
最小 | 1,842,000円 | 2,358,000円 | 1,842,000円 |
上記には賞与も含まれていますが、研修医1年目の月収に換算すると平均362,717万円になります。
表からも分かりますが、大学病院よりも臨床研修病院の方が給料は高く設定されています。
2011年当時の大学院卒の平均年収は2,345,000円※1なので、研修医の方が平均年収が高くなっていました。平均年収の最小を見てみると1,842,000円になっているので、勤務先によって研修医の給料は大きく変わります。
参照※1:
厚生労働省「平成23年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況:1 学歴別にみた初任給」
⚫︎2023年最新の医師1年目の年収・給料について
厚生労働省の研修医に関する調査では、2011年以降行われていないため、『賃金構造基本統計調査 / 令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種』を参照し、最新の医師1年目の年収を、従業員規模別に算出しております。
調査結果としては、従業員規模が小さくなるほど、平均年収が高い結果となっております。
従業員規模1000人を超える規模の病院では、従業員数1~99人の病院の1/2以下の年収であることが明らかとなりました。
2-3.地域別の研修医の年収・給料
研修医の給料は地域によっても変動します。同じく、2011年の都道府県別平均年収のグラフを見てみましょう。
研修医1年目の給料が一番高いのは青森県でした。
次いで秋田県、山形県と北海道がほぼ同額です。
逆に給料が一番低いのは宮崎県で、次いで佐賀県と東京都が同額になっています。
東京都は最低賃金が高いので研修医の給料も高いイメージがありますが、実際には給料が低くなっています。
研修医2年目も基本的に順位は変わりません。
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3.初期研修医と後期研修医(専攻医)の年収・給料
初期研修医と後期研修医(専攻医)の給料の違いについても解説していきます。
これから研修医になる医学生は、今後のキャリアプランを作成する参考にしてみてください。
3-1.初期研修医の年収・給料
初期研修医の給料は、研修を行う病院や地域によって大きく変わります。研修医1年目と2年目の平均給与を比較してみましょう。
研修医の年収 | 大学病院(114病院) | 臨床研修病院(924病院) | 合計(1038病院) |
1年目の平均 | 3,074,172円 | 4,510,339円 | 4,352,610円 |
2年目の平均 | 3,123,132円 | 5,021,376円 | 4,812,899円 |
研修医1年目の平均年収は4,352,610円ですが、2年目の平均年収は460,289円上がって4,812,899円です。
3-2.後期研修医(専攻医)の年収・給料
後期研修医は専攻医とも呼ばれています。
専攻医は研修医と比べてより専門的な仕事を担当するため、給料も高くなる傾向にあります。
専攻医の給料も病院や地域によって異なりますが、一般的に年収は6,500,000円から8,500,000円程度です。
場所によってはそれ以上の給料を得られるので、専攻医になると給料は大幅に増加する可能性があります。
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4.研修医の年収・給料の内訳
研修医の給料は基本給、当直手当、賞与の内訳になっています。
それぞれの内訳について解説していきます。
4-1.基本給
研修医の基本給は病院ごとに設定されるもので、地域や勤務先によって異なります。
研修医は基本的な医療技能の習得に重点を置き、高度な医療行為や重要な判断ができないためです。
専攻医になると医師として専門的な仕事を任される機会が増えるので、基本給も高くなります。
特定の専門分野で診療や処置を行う能力が求められる専攻医は、月額541,000円から708,000円程度の基本給を受け取ることができます。
地域や病院の規模によって基本給には差が生じるので、実際の求人情報を比較してみましょう。
4-2.当直手当
当直手当は、研修医が夜間や休日に病院で勤務する際に支払われる追加の手当です。
労働基準法では地域ごとに最低賃金が定められていて、当直手当は基本賃金の1/3以上の支払いが義務付けられています。
当直手当は研修医の給料にとって重要です。忙しい病院や医師の少ない地域では、当直の機会が多くなり給料に大きく影響するためです。この当直手当は一回の勤務につき数千円から1万円程度が一般的で、月によっては基本給を上回ることもあります。
研修医が給料を増やすためには、当直手当を多くもらえるように勤務を調整してみましょう。
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4-3.賞与
賞与は、病院の業績や個人の評価に基づいて年に数回支給されることが一般的です。
研修医の場合、賞与の額は病院の規模や経済状況によって大きく左右されます。
大規模な私立病院や経済的に安定している病院では、年に2回から3回、比較的高額の賞与が支給されることがあります。一方で、財政的に厳しい地方の公立病院では賞与の額が少なくなるのが現状です。
賞与は研修医の年収に大きな影響を与える要素の一つなので、勤務先を選ぶ際に賞与の額や回数は重要です。
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5.研修医と専攻医はアルバイトができるか?
研修医や専攻医の中には、奨学金の返済などの理由からアルバイトをしたいと考える人がいます。
研修医と専攻医がアルバイトできるかについて、解説していきます。
5-1.研修医はアルバイトができない
研修医は基本的にアルバイトが禁止されています。
研修医が勤務先での研修に集中し、必要な技術や知識を効率的に習得するためです。
研修医の勤務時間は長くなることが多いので、過度な疲労が原因で医療ミスを引き起こすリスクもあります。研修医のアルバイトを禁止することで、患者の安全と医療の質を確保する目的もあります。
1日の大部分を病院で過ごし、夜間や休日にも当直勤務がある研修医には、別の仕事をする時間的余裕がほとんどありません。そのため、他の仕事に気を取られることなく、初期研修に集中することが求められます。
5-2.専攻医はアルバイトができる
専攻医になると状況は異なります。
専攻医は特定の医学分野において一定の専門性を持つため、アルバイトを許可する病院も存在します。
専攻医は専門的な知識と判断を下す能力を持ち、柔軟な勤務形態が可能になるためです。
ただし、専攻医がアルバイトを行う場合でも、専門医としての責任と品位を保つことが求められます。他の医療機関で非常勤勤務をする場合でも、その病院の規則や患者の安全基準を厳守することが必要です。
専攻医は、アルバイトによって収入の増加と同時にその分野での経験を深めることも可能です。アルバイトすることで本来の研修や勤務に支障が出ないよう、勤務時間や労働量は適切に管理しましょう。
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6.研修医に関するよくある質問
これから研修医になる医学生は、研修医について多くの疑問を持っています。
研修医に関するよくある質問に回答して、医学生が研修医として働く際の疑問を解消していきます。
6-1.研修医は飲み会が多いのでしょうか?
研修医の飲み会が多いかどうかは、勤務先となる病院の文化や医師の性格によって大きく異なります。飲み会は、チームのコミュニケーションを円滑にしたりストレス解消の手段になったりします。
しかし、飲み会への参加は全ての研修医に当てはまるわけではありません。若い医師たちの間でコミュニケーションを取るために飲み会が頻繁に開かれることがありますが、強制ではないので安心してください。
地方の病院や小規模な病院では、飲み会自体が少ない場合もあります。研修医の生活は非常に忙しくて自由な時間が限られているため、「どのようにリラックスをするか」「ストレス解消を図るか」は、研修医の性格や勤務先の人間関係に大きく関わります。
6-2.初期研修で年収1,200万円の医局がありますが激務ですか?
年収1,200万円という高額を提示する医局は存在するかもしれませんが、まずは研修期間の給与を見てみましょう。
(2-1.研修医の1年目の給料)に記載しております。
あくまでも統計的なものになりますが、最大で955万円もの年収を提示する医局は、研修医に長い勤務時間と仕事量を求めている可能性があります。
特定の専門分野や研究分野で優れた成果を上げている医局では、研修医に高額の給与を提供することがあります。その背景には、医師としての技術や知識を磨くと同時に、医学研究への貢献も期待しているためです。
また、研修医が高額な給料を得るためには通常の研修業務に加え、当直を数多くこなす必要があります。健康管理やプライベートとのバランスも考慮し、自分の目標に合った医局を選ぶことが重要です。
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6-3.地方の研修医は東京の研修医よりも年収が高いというのは本当でしょうか?
地方と大都市部での医師の給料には差があります。
地方の病院では、医師不足が深刻な問題となっているため、医師に対して比較的高い給料を提供する傾向があるためです。
研修医に関しては、臨床研修病院に対して医師臨床研修費補助事業等など国の補助金制度が存在している関係で、
研修医へ支払われる給与(当直手当を除く)が年額720万円を超える場合には補助金が減額されるなど、どのように補助金が利用されているかがある程度統制されています。
そのため、一概に地方の方が東京より年収が高いと断言することは難しいです。
7.まとめ
研修医の給料は、勤務する病院の規模や経営状況、地域によって異なります。
勤務先を探す際は、複数の病院の雇用条件を比較して希望に沿った勤務先を選ぶようにしましょう。
研修医はアルバイトが禁止されていますが、専攻医になるとアルバイトを容認する病院もあります。
専攻医は複数の病院で勤務することで、より多くの経験を積めると考えているためです。
研修医が給料を増やすためには、当直を増やして当直手当を多くもらう方法がおすすめです。
奨学金の返済がある研修医は、心身に無理のない範囲で当直を入れて給料や賞与を増やしてみましょう。
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