医師の確定申告をスムーズに!準備やポイント/勤務医から開業医まで

確定申告

毎年、年が明けてお正月気分が落ち着いてくる頃になると、確定申告についての話題をニュースや街中で見かけることが多くなります。

医師は、常勤先以外の医療機関で非常勤として働いていたり、講演料や執筆料などの収入を得ていたり、自身でクリニックを開業していたりと働き方が様々です。複雑な勤務形態の医師にとっては、確定申告が必要になる場合が多くありますが、ご自身が確定申告を行う必要があるか、確定申告をスムーズに行うにはどうするべきなのか悩む方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そんな医師向けに、本記事は確定申告の概要から医師の注意すべきポイント、確定申告を専門家に依頼するメリット等を解説していきます。

1.確定申告とは?

確定申告は所得税法に基づき、日本国内で所得を得た個人や法人が、その年の所得や支出を報告し、税金を計算・納付する手続きのことです。
個人の場合は、給与所得や事業所得、不動産所得などの各種所得を申告し、それに対する所得税を計算し納付します。医療法人や節税対策で法人を設立している場合は、事業所得などで得た収益をもとに法人税を申告し納付します。

1-1.確定申告を行う時期

・個人の場合
基本的に毎年2月16日~3月15日が確定申告期間です。

・法人の場合
確定申告期限は、通常毎年3月15日です。
ただし、土日や祝日に当たる場合や特別な事情がある場合には期限が変更される場合がありますので、注意が必要です。
また、法人が会計年度を変更した場合や、特例的な状況がある場合、その都度期限が異なる場合がありますので、事前に確認することが重要です。

個人・法人ともに言えることですが、新型コロナウイルスなど感染症の流行や、大規模な災害が発生した場合は、状況に応じて期限が延長されたり、変更されたりすることもあります。
最新の情報は、国税庁のホームページを確認するか、最寄りの税務署へ問い合わせるといいでしょう。

1-2.確定申告の内容

具体的な確定申告の内容について解説します。

・収入の報告
給与所得や事業所得をはじめ、株や投資信託などで得た収入・不動産投資などで得た収入、副業で得た収入など、基本的にその年に得た収入は全て申告する必要があります。
例外として、副業収入が年間20万円以下の場合のみ申告が不要です。

・経費や控除の申告
経費は、医師業に関連したもの、例として診療室の設備や医療器具、医療用消耗品などを計上できます。
他にも、住宅ローン減税や生命保険控除、医療費控除など様々な控除を申請することが可能です。扶養家族がいる場合は、配偶者控除などが適用されます。

・税額の計算
1年間に得られた収入の合計から、経費や控除の合計と一定の基礎控除や扶養家族がいる場合は扶養控除などを差し引いて、その年の税額算出のための収入額を確定します。
確定された収入額に応じて、税金が決定します。

・納付または払い戻し
税金額が決定した際、前年に所得税などで多く払っていたり、損失が多かったりした場合は、払い戻されます。
逆に、収入が多かった場合は納付となり、後日納付書が送られてくるので期限までに支払って完了となります。

2.医師が確定申告を行うケース

医師の所得や業務形態・収入の実態など、具体的なケースによって確定申告が必要な場合とそうではない場合があります。例として、1カ所のみで常勤医師として働き、職場が年末調整を行ってくれる場合は確定申告の必要はありませんが、開業医や年収が2000万円を超える人など条件に当てはまる医師は確定申告が必要となります。

次の項目で医師が確定申告を行う必要があるケースについて詳しく解説します。

2-1.複数の医療機関で働いている場合

常勤で勤務医として働く傍ら、他の医療機関などで非常勤として働いている場合はそれぞれの勤務先から源泉徴収票が発行されるため、確定申告が必要です。

2⁻2. 経費がある場合

医師業に関連した経費がある場合は申請が必要です。
例えば学会に行った際の交通費や宿泊費、複数の医療機関で勤務している場合は移動にかかった交通費やガソリン代などです。
必要な書籍の購入やセミナーへの出席にかかった費用、必要な交際費などが計上できます。

2-3. 医師業以外の収入がある場合

株や投資信託などの投資で得た収入、不動産収入などが該当します。

2⁻4. 控除・ふるさと納税などの特例を利用する場合

住宅を購入してローンを組んでいる場合は住宅ローン減税、本人や扶養家族が入院などで医療費が多くかかった場合は医療費控除なども受けられます。
また、ふるさと納税を5カ所以上に行った場合も、確定申告で控除を受けられます。
年金や健康保険で支払った分は社会保障費・生命保険なども一定額までは控除の対象です。
子どもの年金を代わりに払った場合なども控除額に入れることができます。

2-5. 年収2000万以上の場合

給与が2,000万円を超える医師は、常勤として医療機関に属していた場合でも年末調整の対象から外れてしまいます。
年末調整を行わなければ、配偶者控除や社会保険料控除などの所得控除が差し引かれません。また、所得税や復興所得税の精算ができていない状態となっているので自ら確定申告を行う必要があるのです。
年収2,000万円を超えた場合は、配偶者特別控除や住宅ローン控除といった各種控除の対象外になります。
合計給与が年収2,000万円を超えると確定申告をしなければならないこと、そして受けられない控除が出てくることに注意しましょう。

2-6. 開業医の場合

開業医の場合、個人事業主になるため所得区分が「給与所得」ではなく「事業所得」となります。
事業所得に加え、賃貸用不動産を所有していれば不動産所得、株式を保有していれば配当所得、原稿料や講演料をもらった方は雑所得などの所得もあわせて申告しなければいけません。
また、開業医の傍ら他の病院やクリニックに非常勤として勤めて得られた収入も、「給与所得」として申告が必要です。
事業所得だけでなく、その他の所得を合算して確定申告することになります。

3.医師の確定申告の手順

医師の確定申告の手順をそれぞれ解説します。

3-1.必要な書類の収集

物品を購入した際の領収書や請求書・支払い証明書などを、失くさないように保管しておきます。個人で年金や生命保険を支払った場合は、10月~11月頃に年金機構や保険会社などから支払い証明書が送られてきます。
また、クレジットカードの利用明細も領収証が発行されない支払い(携帯電話代やインターネット接続費など)を計上する際に必要ですので、インターネットで確認している方は、あらかじめダウンロードしておきましょう。
保険会社の支払い証明書やクレジットカード会社での再発行が必要な場合は、12月~2月は再発行を求める会員が多く、手元に到着するのが遅くなることがあるため、年末を目途に集めておくと良いでしょう。

3-2.医療費控除の申請

ご自身や扶養家族が病気やけがで入院または通院で支払った医療費の控除を受けることができます。医療費は年間の所得から差し引かれ、税金を軽減します。
医療費の支払い明細は、再発行してくれない医療機関も多いため、1年分の明細を念のため保管しておくと安心ではないでしょうか。
注意したいのは、生命保険の給付があった場合です。
加入している生命保険会社から保険金や給付を受け取った額が多かった場合、金額によっては医療費控除の対象外となるケースがあります。その方の収入状況などによっても違いますので、詳しくは税理士などに確認することをおすすめします。

3-3.経費の計上

自分で経理ソフトなどに経費を入力している場合は、年末までに8割程度の経費の計上が終わっていることを目安にし、毎月少しずつ入力しておくことが大切です。
年明けまでためておくと整理して入力する量が多くなり、確定申告の提出期限ぎりぎりまで焦って入力する事態も考えられます。余裕をもって処理していきましょう。
自分で経費を計上する場合は、少なくとも1~6月分は8月までに、7~9月分は11月頃、残りの10~12月分を1月中に済ませておくと2月の確定申告までゆとりを持って迎えられます。

3-4.確定申告書類の作成

開業届や法人設立の手続きをしているかどうかで、青色申告・白色申告と申告書類の種類が変わります。
どちらの申告を選んでも、診療室の設備や医療器具、医療用消耗品、看護師や事務スタッフの給与、医療用薬剤の購入費などの患者の診療や治療に関係のある支出を経費として申告することが可能です。

・白色申告
簡単な取引記録と必要書類で申告できるのが最大のメリットで、税務署への届出も不要です。
青色申告に比べて手間がかかりませんが、特別控除などの優遇措置を受けることができないのがデメリットになります。

・青色申告
「複式簿記」で取引内容を正確に記録しなければならないだけでなく、多くの書類を保管・貼付する必要があり、慣れていない方は特に手間がかかります。
青色申告で確定申告を行いたい場合は、事前に納税地の所轄税務署長へ「青色申告承認申請書」という書類を提出する必要があります。
手間や書類等の保管が大変な反面、最大65万円の特別控除・青色申告専従者控除などを受けられます。

基本的に経理ソフトを利用して作成している方が多いため、必要事項を順に入力すると自動的に書類が完成します。確定申告を税理士に依頼している場合は、入力内容や計上方法が間違っていないかチェックしてもらう時間が必要です。
早めに作成して、最終チェックをしてもらう時間にゆとりを持っておきましょう。

3-5.確定申告書類の提出

提出方法は、税務署へ直接持参または郵送、またはインターネット上で申告を済ませるe-Tax(国税電子申告・納税システム)があります。
スマートフォンやパソコンとマイナンバーカード・カードリーダーがあれば申告することができる上に、青色申告の場合は基礎控除額が白色申告よりも多く設定されています。
ご自身で申告する場合は、e-Taxを利用してみてはいかがでしょうか。
税理士に依頼している場合は、基本的に税理士事務所などが提出を代行してくれます。
その際、e-Taxで提出するためにマイナンバーの番号を聞かれることになります。税理士が提出後、書類の控えを受け取るのが一般的です。

〇参照:【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)

3-6.税金の支払い

収入の合計から経費・各種控除と基礎控除の合計を差し引いた金額(課税対象額)に一定額の税金がかけられます。
支払わなければならない税額よりも既に源泉徴収などで多く支払っていた場合や、損失を出した場合は差額が還付されます。
逆に、収入が多かった場合は税額が請求され、期日までに納付することになるでしょう。

3⁻7.確定申告書類の保管

確定申告の書類は、申告の種類によって保管期間が違います。

・青色申告

画像
(国税庁:青色申告の帳簿書類の保存期間)
青色申告の場合、帳簿は7年の保存が義務付けられています。その他の書類は、種類によって上記の表の通り、保存期間が違いますので注意が必要です。

・白色申告(青色申告以外の方)

画像

(国税庁:白色申告の帳簿書類の保存期間)
白色申告の場合、青色申告と帳簿の種類が異なる点があります。上記の表の通り、基本は7年ですが書類によって違いますので注意しましょう。

4.医師が確定申告を専門家に依頼するメリット

日々多忙な医師業務に専念する中で、確定申告を専門家に依頼することはいくつかのメリットを得ることができます。その内容について解説します。

4⁻1.専門知識の活用

税制に関する法律は、適宜改正されています。
税理士などの専門家は、常に最新の法改正に関する情報を持っているため、確定申告で気を付けるポイントについても熟知しており安心して任せられます。
また、経費として計上できる範囲についてもしっかり教えてくれます。
法改正や、判断の厳格化によって以前なら認められた経費計上が認められなくなるケースなどの事例も把握しているため、何を経費に含めたらいいのかを聞くといいでしょう。
税制に関する情報を集め、自分のケースに当てはめて対応するのは難しいため、専門家の知見を借りることで最新の知識を得やすくなります。

4⁻2.節税の最適化と将来に向けた計画に対するアドバイス

決められた税金を納めることも大切ですが、同時に適切な方法で節税することも重要になります。
税理士などの専門家は、最新の税制に関する知識やほかの顧客の事例をもとにして、医師の所得やライフプラン・家族構成や将来のマネープランに応じた最適な節税についてアドバイスが可能です。
また、定期的に経費計上などを依頼していればその年の所得予測をもとにしたふるさと納税の活用などの節税方法の提案を受けられます。
所得を有効に活用し、将来へ向けた資産形成のためにも活用してみてはいかがでしょうか。

4⁻3.手続きの正確性とトラブル回避

医師が自身で確定申告をすることは可能ですが、経費の計上・その他の控除などを正確に分類して申告書類を完成させ、提出まで終えることはとても大変です。
また、税務署から提出後に申告のミスを指摘されたり、抜き打ちで検査に入られたりすることもあります。
税務署から何らかの指摘を受けた時、自分で対応するには時間的にも非常に負担でしょう。また、税務署との専門的なやり取りは法的な知識も必要です。
専門家に任せることで、正確性を担保できるだけでなく、税務署からの指摘が入った際も対応してくれるため、安心して仕事に打ち込めるのではないでしょうか。

4⁻4.法的コンプライアンスの確保

確定申告を専門家に依頼することは、正確で間違いのない税制ルールなどの法令が遵守できるだけではありません。法律として明文化されていない社会的ルールにも従い、健全な医師業務や企業活動を行っているという証明にもなります。
しっかりとした医師業を行っているという安心感にもつながるのではないでしょうか。

5.まとめ

以上、医師が確定申告を行う必要があるケースや手続きの流れ、専門家に依頼するメリットについて解説しました。
確定申告は、正確な収入を報告し、決められた税金を納付するという納税義務以外にも、自身の収入を把握し、今後の資産形成やキャリアなど将来を考えるきっかけにもなります。
この記事が、確定申告を行う上で一助となりましたら幸いです。