医師が臨床以外で働くキャリア先8選!転職時期や必要な経験まで徹底解説

医師キャリア

医師として理想的なキャリアとは何でしょうか。
ご自身の医師としてのキャリアを考えたときに「臨床か研究か」「勤務医か開業医か」だけだと思っていませんか?

まだまだ医師不足と呼ばれる世の中ですので転職を考えたときに「病院勤務」という選択肢はまだまだ多いです。
でも実は“臨床以外”にも医師が活躍できる場はたくさんあります

  1. 産業医
  2. メディカルドクター(製薬企業内医師)
  3. 社医・診査医・査定医
  4. 医系技官
  5. ヘルスケア系企業社員
  6. コンサルタント
  7. 起業
  8. 副業

この記事では、医師資格を活かせる”臨床以外のキャリア”と転職のタイミング・必要な経験まで徹底解説していきます。
キャリア像を知ることで「自分の理想のキャリアは何か」「理想のキャリアを実現するには何をすればいいのか」を
検討するきっかけにしていただけたらうれしいです。

医師の経験を活かす “臨床以外の” キャリア像一覧

1.産業医

臨床以外のお仕事では「産業医」をイメージすることが多いかもしれません。
医師会でも資格取得できますので、多くの先生が資格をもっています。

産業医は一般企業における従業員健康管理等のために、社員として勤務します。
企業従業員規模により、非常勤か常勤での勤務に分かれており、50名以上の企業であれば月1回からの非常勤勤務、1000名以上の企業であればフルタイムでの常勤勤務となります。

⚫︎臨床から産業医に転職する場合の条件

転職タイミング

臨床医として現場を経験されている医師ということ。
企業により求められる内容も多岐にわたるため、非常勤と常勤勤務で少し分かれるケースがあります。
<非常勤勤務の場合>
20代後半~30代という若手医師、40代の中堅医師、50代以上のベテラン医師まで幅広い年齢で対応ができます。
<常勤勤務の場合>
定年がありますので、50代半ばから入社されるケースは少なく、20代~50代前半までのケースが多くなります。

必要な経験・資格

医師資格だけでなく「産業医資格」を持っていることが必須です。
企業規模により複数の産業医が勤務している場合は、「産業医未経験」でも入社可能なケースが多いですが、他に産業医がいない場合は「産業医経験が必須」として求められるケースもあります。

産業医の求人情報は公開されることが少なく、人づての紹介や医師向けの人材紹介会社に登録してから入社されることも増えています。

特徴

企業の社員としてスキルアップとしての機会もあり、また産業医として独立できるというキャリアもあることが特徴です。

以前は従業員健康管理といってもフィジカルを診ることがメインでしたが、今ではストレスチェックが義務化され、メンタルを診ることも大きな内容となっていますので、精神科医や心療内科医としての臨床経験を持つ産業医のニーズが増えています。

産業医として勤務される先生の中には、「労働衛生コンサルタント()」の資格を取得される方もいらっしゃいます。

2.メディカルドクター(製薬企業内医師)

製薬企業で勤務される医師を「メディカルドクター(MD)」と呼びます。

業務内容は、製薬企業において主として医薬品等の研究開発・安全性の仕事に携わります。医薬品の開発は、薬学系の研究者によって培われてきましたが、新薬の開発や営業活動、安全性情報の分析にも医学的知見が必須となり、医師を迎えられる企業が増えてきております。

⚫︎臨床からメディカルドクターに転職する場合の条件

転職タイミング

臨床医として5年以上は現場を経験されている医師、ということなど30代~40代に転職されるケースが多いです。

必要な経験・資格

5年以上の臨床医としての経験、専門医取得などを求められます。
また医薬品開発においてはグローバル試験が多く控えており英語能力(TOEIC800以上など)も必須となります。

特徴

製薬企業のグローバル展開が当たり前となった時代、海外のカウンターパートナーが医師となり、日本側も対等に協議のできる医学専門家を迎え入れるニーズが高まっています。

臨床において医師と患者様は1対1の関係になりますが、メディカルドクターとして医薬品の創薬・育薬に関わることによって、世の中の多くの人々のために貢献できるキャリアになります。

.社医・診査医・査定医

生命保険会社で医師資格を生かせるキャリアです。

業務内容は生命保険会社で保険契約の査定を行います。業務内容によって「診査医」や「査定医」とも呼ばれることがあります。多くの保険会社では社医を採用して、加入希望者の健康状態を確認したうえで契約・支払いの判断を行っています。

⚫︎臨床から診査医に転職する場合の条件

転職タイミング

臨床経験を問わない会社もあり、初期臨床研修後、後期研修後といった20代後半~30代前半に入社される医師もいらっしゃいます。

ワークライフバランス志向の医師や子育て中の医師といった30代後半、また50代以降のセカンドキャリアとしても支持されています。

必要な経験・資格

臨床医としての経験は求められないケースもあります。

利用者の健康状態を幅広く見る必要もありますので、会社によっては5年以上など一定程度の経験を持っていたほうが有利になるケースもあります。

特徴

週休2日制、基本的に9時~17時勤務という勤務形態が多いため、ワークライフバランス志向の医師から人気があります。社医として勤務する中で「産業医資格」を取得する先生も多いです。

また生命保険会社においても医療データの活用による新しいサービス開発が進められていますので、
大学や医療機関・ヘルスケア企業などとの連携が増えていますので、新しいキャリアを築ける可能性があります。

.医系技官

厚生労働省で、人々の健康を守るため、保健医療や公衆衛生に関する専門知識をもって、制度作りの中心となって活躍する行政官のことです。政策立案から実施に至るプロセスすべてに関わります。

⚫︎臨床から診査医に転職する場合の条件

転職タイミング

初期臨床研修後である20代半ば~入局することが可能です。

必要な経験・資格

臨床経験による医療的な知識や現場感覚はもちろん、“病態を把握しスタッフと協同し患者に説明する“という
問題解決プロセスを経験していることが活かせます。
政策立案にもエビデンスに基づくことが求められており、EBM()の経験も役に立ちます。

特徴

国家公務員となります。公衆衛生政策を学ぶための留学の機会もあります。
臨床現場と同様、問題点を解決していく仕事でありますが対象が大きく、日本国民全体に及びますので社会に貢献できるキャリアといえます。
医系技官としての経験が社会医学系専門医として認められます。
新型コロナウィルス感染症や医師の働き方改革など、解決するべき課題は多く、今後も新しいキャリアを築けます。

※「根拠(エビデンス)に基づく医療」Evidence-Based Medicineの略。
出典:厚生労働省「根拠に基づく医療」(EBM)を理解しよう

.ヘルスケア系企業社員

近年、医療×Dxの推進から、他業種からヘルスケア領域への新規参入する企業が増えています。

医師が起業した会社だけでなく、ヘルスケア領域での人材サービスで始まった「株式会社メドレー」などのスタートアップや「DeNA」や「ソフトバンク」など、様々な企業でサービス開発において医師の知見・経験が求められています。

<企業例>

  • オンライン診療プラットフォーム (株式会社メドレー)
  • 時間外救急プラットフォーム (ファストドクター株式会社)
  • オンラインヘルスケア事業 (ヘルスケアテクノロジーズ株式会社)
  • AI問診システム、WEB問診システム (Ubie株式会社)

⚫︎臨床からヘルスケア系企業社員に転職する場合の条件

転職タイミング

臨床医として現場を経験されている医師を求めていることが多く、20代後半~30代という若手の先生方から、40代の中堅まで幅広く入社されています。

必要な経験・資格

“臨床医としての経験や知識をサービス開発などに活かすという目的がありますので、
初期臨床研修~後期研修を経てご自身の専門科目を選んだ5年ほどの経験が必要とされることが多くあります。

特徴

土日祝休みの週休2日制、かつフレックス勤務が多くの企業で取り入れられているため、臨床医よりオンオフはっきりした生活になります。
また企業勤務の多くの先生方は週1回ほどの臨床業務を続けています。

.コンサルタント

外資系のコンサルティング企業で、経営や戦略コンサルタントとして医師資格を活かして活躍しています。
たとえばマッキンゼー・アンド・カンパニーに代表されるグローバル企業では、医薬品・医療機器のヘルスケア領域などの領域における製品発売に関するマーケティング・営業から業務提携、事業開発や組織変革、研究・開発の課題解決を行っています。

⚫︎臨床からコンサルタントに転職する場合の条件

転職タイミング

医学部卒業後や初期臨床研修後、後期研修後といった20代~30代前半に入社される医師が多くいらっしゃいます。

必要な経験・資格

医師資格を持っていること、臨床や研究にとどまらず、医師としての経験や知識を活かせる仕事になります。
医学部卒業後に新卒入社される方もいます。

特徴

マッキンゼー・アンド・カンパニーなどのグローバル企業では、多様な領域のプロフェッショナルが集まっていますので、
ITなどテクノロジーに強みを持つ方と共同でヘルスケア領域の事業で起業するという流れも多く出てきています。

7.起業

臨床現場での課題解決を目指し、自ら起業する医師が増えています。
医師の視点を活かしてWEBサービス・アプリケーション開発などの事業で、人の健康だけでなく様々な角度から社会を健康にするソリューションを提供している企業が多くでてきています。

主な事業内容

  • AI医療機器
  • WEB問診システム
  • オンライン診療
  • 時間外救急プラットフォーム
  • 治療アプリ

⚫︎臨床から起業する場合の条件

起業タイミング

臨床医として現場を経験、その後専門医などを取得し30代半ば頃に起業する先生方が多いです。

必要な経験・資格

臨床医としての経験から“臨床現場での課題を解決したい”というきっかけを持つ先生が多く、5~10年ほど臨床医として勤務された後に起業されています。

特徴

医学生・研修医・20代若手医師の起業も近年は増えてきており、“起業”という選択肢は20代のうちから身近なものになってきています。
「医師専用コミュニティサイト」などを手掛けるメドピア株式会社、「治療アプリケーション」を開発するサスメド株式会社など近年では毎年のように医師が起業した会社が上場も果たしています。

患者様の治療という“人の健康”だけでなく、様々な角度から事業運営することで“社会全体を健康にする”という社会貢献の要素も大変大きいことも特徴です。

.副業

転職するのではなく、現在の勤務を続けながらも副業からキャリアの選択肢をひろげることも可能です。
医療記事の監修、執筆、講師、医師向けのリサーチなど、医師としての知見・経験を活かせる副業が増えています。

⚫︎臨床から副業する場合の条件

副業タイミング

臨床医として現場を経験されている医師ということ、また求められる内容も多岐にわたるため、20代後半~30代という若手医師、40代の中堅医師、50代以上のベテラン医師まで幅広い年齢で対応ができます。

必要な経験・資格

医師資格を持っていること、また臨床医としての経験や知識を活かすという目的がありますので、初期臨床研修後の3年目以降の経験が必要とされます。

特徴

常勤先の仕事に影響のない、空いているすき間時間で対応できることが大きな特徴です。
健康など医療情報を扱うWEBメディアも多くあり、世の中の関心も高いため、“医療記事監修”や“執筆”といった仕事は今後も増えていくと考えられます。

まとめ

臨床現場以外での医師のキャリアについて解説してきました。
20代後半から30代の若手医師、40代の中堅医師、50代以上のベテラン医師とそれぞれの転職のタイミングについても理解いただけたのではないでしょうか。

先行き不透明な時代でもキャリアの多様性を知っていれば適切な道を選択できます。ご自身のキャリアを考える際、是非参考にしていただければと思います。

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