
医師として理想的なキャリアとは何でしょうか。
ご自身の医師としてのキャリアを考えたときに「臨床か研究か」「勤務医か開業医か」だけだと思っていませんか?
まだまだ医師不足と呼ばれる世の中ですので転職を考えたときに「病院勤務」という選択肢はまだまだ多いです。
でも実は“臨床以外”にも医師が活躍できる場はたくさんあります。
- 産業医
- メディカルドクター(製薬企業内医師)
- 社医・診査医・査定医
- 医系技官
- ヘルスケア系企業社員
- コンサルタント
- 起業
- 副業
この記事では、医師資格を活かせる”臨床以外のキャリア”と転職のタイミング・必要な経験まで徹底解説していきます。
キャリア像を知ることで「自分の理想のキャリアは何か」「理想のキャリアを実現するには何をすればいいのか」を検討するきっかけにしていただけたらうれしいです。
医師の経験を活かす “臨床以外の” キャリア像一覧
1.産業医
臨床以外のお仕事では「産業医」をイメージすることが多いかもしれません。医師会でも資格取得できますので、多くの先生が資格をもっています。
産業医は一般企業における従業員健康管理等のために、社員として勤務します。
企業従業員規模により、非常勤か常勤での勤務に分かれており、50名以上の企業であれば月1回からの非常勤勤務、1000名以上の企業であればフルタイムでの常勤勤務となります。
転職するタイミング | 臨床医として現場を経験されている医師ということ、また企業により求められる内容も多岐にわたるため、非常勤と常勤勤務で少し分かれるケースがあります。 |
必要な経験 | 医師資格だけでなく「産業医資格」を持っていることが必須です。企業規模により複数の産業医が勤務している場合は、「産業医未経験」でも入社可能なケースが多いですが、他に産業医がいない場合は「産業医経験が必須」として求められるケースもあります。 産業医の求人情報は公開されることが少なく、人づての紹介や医師向けの人材紹介会社に登録してから入社されることも増えています。 |
特徴 | 企業の社員としてスキルアップとしての機会もあり、また産業医として独立できるというキャリアもあることが特徴です。 以前は従業員健康管理といってもフィジカルを診ることがメインでしたが、今ではストレスチェックが義務化され、メンタルを診ることも大きな内容となっていますので、精神科医や心療内科医としての臨床経験を持つ産業医のニーズが増えています。 産業医として勤務される先生の中には、「労働衛生コンサルタント(※)」の資格を取得される方もいらっしゃいます。 |
2.メディカルドクター(製薬企業内医師)
製薬企業で勤務される医師を「メディカルドクター(MD)」と呼びます。
業務内容は、製薬企業において主として医薬品等の研究開発・安全性の仕事に携わります。医薬品の開発は、薬学系の研究者によって培われてきましたが、新薬の開発や営業活動、安全性情報の分析にも医学的知見が必須となり、医師を迎えられる企業が増えてきております。
転職するタイミング | 臨床医として5年以上は現場を経験されている医師、ということなど30代~40代に転職されるケースが多いです。 |
必要な経験 | 5年以上の臨床医としての経験、専門医取得などを求められます。 |
特徴 | 製薬企業のグローバル展開が当たり前となった時代、海外のカウンターパートナーが医師となり、日本側も対等に協議のできる医学専門家を迎え入れるニーズが高まっています。 臨床において医師と患者様は1対1の関係になりますが、メディカルドクターとして医薬品の創薬・育薬に関わることによって、世の中の多くの人々のために貢献できるキャリアになります。 |
3.社医・診査医・査定医
生命保険会社で医師資格を生かせるキャリアです。
業務内容は生命保険会社で保険契約の査定を行います。業務内容によって「診査医」や「査定医」とも呼ばれることがあります。多くの保険会社では社医を採用して、加入希望者の健康状態を確認したうえで契約・支払いの判断を行っています。
転職するタイミング | 臨床経験を問わない会社もあり、初期臨床研修後、後期研修後といった20代後半~30代前半に入社される医師もいらっしゃいます。ワークライフバランス志向の医師や子育て中の医師といった30代後半、また50代以降のセカンドキャリアとしても支持されています。 |
必要な経験 | 臨床医としての経験は求められないケースもあります。 |
特徴 | 週休2日制、基本的に9時~17時勤務という勤務形態が多いため、ワークライフバランス志向の医師から人気があります。 |
4.医系技官
厚生労働省で、人々の健康を守るため、保健医療や公衆衛生に関する専門知識をもって、制度作りの中心となって活躍する行政官のことです。政策立案から実施に至るプロセスすべてに関わります。
転職するタイミング | 初期臨床研修後である20代半ば~入局することが可能です。 |
必要な経験 | 臨床経験による医療的な知識や現場感覚はもちろん、“病態を把握しスタッフと協同し患者に説明する“という |
特徴 | 国家公務員となります。公衆衛生政策を学ぶための留学の機会もあります。 |
※「根拠(エビデンス)に基づく医療」Evidence-Based Medicineの略。
出典:厚生労働省「根拠に基づく医療」(EBM)を理解しよう
5.ヘルスケア系企業社員
近年、医療×Dxの推進から、他業種からヘルスケア領域への新規参入する企業が増えています。
医師が起業した会社だけでなく、ヘルスケア領域での人材サービスで始まった「株式会社メドレー」などのスタートアップや「DeNA」や「ソフトバンク」など、様々な企業でサービス開発において医師の知見・経験が求められています。
<企業例>
・オンライン診療プラットフォーム (株式会社メドレー)
・時間外救急プラットフォーム (ファストドクター株式会社)
・オンラインヘルスケア事業 (ヘルスケアテクノロジーズ株式会社)
・AI問診システム、WEB問診システム (Ubie株式会社)
転職するタイミング | 臨床医として現場を経験されている医師を求めていることが多く、20代後半~30代という若手の先生方から、40代の中堅まで幅広く入社されています。 |
必要な経験 | “臨床医としての経験や知識をサービス開発などに活かす”という目的がありますので、 |
特徴 | 土日祝休みの週休2日制、かつフレックス勤務が多くの企業で取り入れられているため、臨床医よりオンオフはっきりした生活になります。 |
6.コンサルタント
外資系のコンサルティング企業で、経営や戦略コンサルタントとして医師資格を活かして活躍しています。
たとえばマッキンゼー・アンド・カンパニーに代表されるグローバル企業では、医薬品・医療機器のヘルスケア領域などの領域における製品発売に関するマーケティング・営業から業務提携、事業開発や組織変革、研究・開発の課題解決を行っています。
転職するタイミング | 医学部卒業後や初期臨床研修後、後期研修後といった20代~30代前半に入社される医師が多くいらっしゃいます。 |
必要な経験 | 医師資格を持っていること、臨床や研究にとどまらず、医師としての経験や知識を活かせる仕事になります。 |
特徴 | マッキンゼー・アンド・カンパニーなどのグローバル企業では、多様な領域のプロフェッショナルが集まっていますので、 |
7.起業
臨床現場での課題解決を目指し、自ら起業する医師が増えています。
医師の視点を活かしてWEBサービス・アプリケーション開発などの事業で、人の健康だけでなく様々な角度から社会を健康にするソリューションを提供している企業が多くでてきています。
<主な事業内容>
・医師専用コミュニティサイト
・AI医療機器
・WEB問診システム
・オンライン診療
・時間外救急プラットフォーム
・治療アプリ
起業するタイミング | 臨床医として現場を経験、その後専門医などを取得し30代半ば頃に起業する先生方が多いです。 |
必要な経験 | 臨床医としての経験から“臨床現場での課題を解決したい”というきっかけを持つ先生が多く、5~10年ほど臨床医として勤務された後に起業されています。 |
特徴 | 医学生・研修医・20代若手医師の起業も近年は増えてきており、“起業”という選択肢は20代のうちから身近なものになってきています。 |
8.副業
転職するのではなく、現在の勤務を続けながらも副業からキャリアの選択肢をひろげることも可能です。
医療記事の監修、執筆、講師、医師向けのリサーチなど、医師としての知見・経験を活かせる副業が増えています。
副業するタイミング | 臨床医として現場を経験されている医師ということ、また求められる内容も多岐にわたるため、20代後半~30代という若手医師、40代の中堅医師、50代以上のベテラン医師まで幅広い年齢で対応ができます。 |
必要な経験 | 医師資格を持っていること、また臨床医としての経験や知識を活かすという目的がありますので、初期臨床研修後の3年目以降の経験が必要とされます。 |
特徴 | 常勤先の仕事に影響のない、空いているすき間時間で対応できることが大きな特徴です。 |
臨床現場以外での医師のキャリアについて解説してきました。20代後半から30代の若手医師、40代の中堅医師、50代以上のベテラン医師とそれぞれの転職のタイミングについても理解いただけたのではないでしょうか。
先行き不透明な時代でもキャリアの多様性を知っていれば適切な道を選択できます。ご自身のキャリアを考える際、是非参考にしていただければと思います。
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