第34話  — 南米3カ国、ペル−、アルゼンチン、ブラジル訪問 — 【part4】

<ブラジルの目次>

・ブラジル・マナウス訪問

・アマゾン熱帯雨林

・マナウス日本総領事館訪問

・アマゾン川とネグロ川

・異様な雰囲気の空港に到着

・国立サンパウロ大学付属心臓病センターを訪問

・エスタジオ・ド・マルカナン・サッカースタジアムを視察

・リオのカーニバルの観覧用スタンドを見学

・ブラジル名物・シュラスコ専門店で夕食

ブラジル・マナウス

アマゾン川の河口から、約1500キロメートルのアマゾン本流とネグロ川の合流地点に位するマナウスに到着した。10数年前にブラジルを訪れたおり、サンパウロ大学心臓外科・ゼルビニー教授に「1年後には大学付属・心臓病センターが完成するし、それとほぼ同時に私が主催する国際学会がマナウスで開かれます。招待状をお送りするので是非出席して下さい。」とお誘い頂いた、その都市である。(私は所用でマナウスの学会には出席できなかったが・・)。マナウスは熱帯雨林の中にある小都市と私は思っていたが、人口180万人を超える大都市で、日系人も5000人以上住んでいるという。長い間、マナウスは天然ゴムの生産で空前の賑わいを見せていたが、1920年ころ東南アジアで安い天然ゴムが生産されてから、不振に落ち入った。しかし、1967年に経済マナウスフリーゾーンに指定されてから、アマゾン一帯の経済や物流の中心をして繁栄を続けている。日本の企業40社も進出しているという。

私たちは,国立の森林試験場 (VIVERO FLORESTAL EXPERIMENTAL)で働いているJICA(国際協力事業団、現在は独立行政法人国際協力機構)の人たちを訪問した。派遣されているJICAの職員は数人おられたが、1人が熱心に試験場を案内して下さった。特に私が興味を持ったのは、8つの 苗床で育てられている3〜4センチメートルに伸びた苗であった。アマゾン熱帯雨林では,伐採や野焼き、火事などで年々熱帯雨林は消失している。それを補うために最適な苗を選んでいるのだ。ここでは、8種類の種を苗床で生育させ、どの苗の成長がもっとも早いかを先ず検討する。苗が5〜6ンチメートルに伸びた時に、畑に植え、1)どの苗の成長が早く、2)どの苗が烈しい気候変動などに耐えて成長するか、3)どの苗が植林する場所に最も適しているかを検討する。移植する土地に最も適した苗を伐採された土地や野焼きされた土地に植林する。高温で雨の多い土地だから成長も早い。JICAの職員はこの成長を見るのが最も楽しいと言っていたが、伐採が烈しいので、植林はなかなか追いつけないという。

8種類の種を苗床で育成していた。上記の如くJICAの職員が熱心に説明してくれた。

アマゾン熱帯雨林

ここでアマゾン熱帯雨林について箇条書きにして説明しよう。

1.面積は日本の15個、アメリカ合衆国の約0.6個分収まる大きさである。

2.南アメリカ大陸の約30%のエリアがアマゾン熱帯雨林におおわれる。

3.9つの国(ブラジル、コロンビア、ペルー、ベネズエラ、エクアドル、ボリビア、ガイアナ、スリナム、ボアナ)にまたがる

4.全世界の熱帯雨林の半分以上を占めている。

5.現在全世界で知られている動植物の約10%がこの土地に生息している。

6.鳥類205種類、昆虫250万種、植物4万種が生息。

7.推定3千9百億本の樹木が生息し、樹木の種類は1万6千種に及ぶ。

8.果物は豊富で、食用可能な3千種類のフルーツが実る。

9.1500年頃まではアマゾンで暮らす住民は6〜9百万人であったが、現在は25万人。

10.アマゾン熱帯雨林は「地球の肺」と呼ばれ、地球にある酸素の20%を作り出している。

 もし、世界の平均気温が3度上がれば、アマゾン熱帯雨林の75%は破壊されると言う。

11.森林伐採の対策は講じられているが、現在、茨城県と同じ面積(6千平方m)の熱帯雨林が毎年消失している。

12.アマゾン熱帯雨林は、1970年から約40年の間に20%が消失した。

13.ブラジルでは、近年、国立宇宙研究所ができ、衛星データーによりアマゾン熱帯雨林の監視と取り締まりを強化しているが、熱帯雨林の消失に追いつかないようである。

行政が対策を講じても、なかなか追いつけない広大な地域であるが、私は憂慮すべき事態であると思っている

2019年夏,全く収束する気配のないアマゾン熱帯雨林の大火災

新聞やテレビの報道によると、暫く前からブラジル北部のアマゾンで多発している森林火災は全く収束の気配を見せず、日本全土の何倍もの被害が広がっているという。事態を複雑にしているのは、今年就任したボルソナロ大統領の存在で、フランスなどはアマゾンの開発を優先する大統領の姿勢によって、開墾のための野焼きが増え、消化活動にも後ろ向きだと指摘している。一方の大統領は「内政干渉」だと憤る。国際的な支援を受ける受けないの騒ぎとなり、その間にも貴重な森が消えて行く。(日経新聞、春秋、2019年9月2日)私は先に“行政が対策を講じても、なかなか追いつけない地域であるが、憂慮すべき事態”と指摘したが、今度の火災は質も量も桁外れに違うので、世界の為政者たちは結束して消火に当って欲しいと願うのみである。

マナウス日本総領事館

その夜、総領事から夕食に招かれた。これはT知事が知事になる以前に参議院議長をされていたので,前官待遇としての招待であった。

総領事は60歳前後の方で、柔和そうなジェントルマンであった。「今夕は知事閣下にご来訪頂きありがとうございます。」という挨拶で夕食は始まった。まずビール、次いで日本酒が振る舞われた。

次いで、“たい、まぐろ、いか”の刺身の盛り合わせが1人1人に出された。盛り合わせにはシソの葉と実、大根の“つま”もついていた。次いでハマグリの吸い物、茶碗蒸しと続いた。

知事は「これは美味しい。日本の一流の料理屋と同じだ。」と賞賛した。総領事は「実は知事閣下がおいで下さるとの情報が入りましたので、料理長をロサンゼルスに派遣して、新鮮な最高の食材を賈って、今夕帰って来ました。お口にあって何よりです。私も大変嬉しゅうございます。料理長も腕によりをかけて作ると申しておりました。」といって料理長を呼んだ。料理長は「喜んで頂きありがとうございます。ロサンゼルスに行きますと、どんな日本食の食材もございます。ごゆっくりお召し上がり下さい。」とうれしそうであった。最後は、ごはんと味噌汁、香の物であった。帰り際に、知事は食材に等しい額のお礼を総領事館職員に渡すよう秘書に指示していた。

この夕食は銀座の一流料亭の食事に引けを取らない本格的な料理であった。それも、ブラジルの熱帯雨林の真ん中の街で食べたのだから、強い印象に残った。帰国してからも、時々話題にでるほどのおいしさだった。