歯は食べ物を噛む以外にも、発声や発音を助けたり、表情を作ったりとさまざまな役割があり、
「早めに歯周病対策をしておきたい」 「年齢を重ねても自分の歯で食事を食べられるようにしたい」 などの理由で、オーラルケアに興味を持っている方も多いでしょう。
オーラルケアは口内環境を良好に保つだけでなく、全身の健康を維持することにつながるため、年代に関係なく重要です。
そこで今回は、オーラルケアとは何か、オーラルケアをしている人の割合や健康状態の変化などを解説します。ぜひ最後までご覧ください。
目次
1. オーラルケアとは?年代別の歯の健康状態を知ろう
「まだ若いから大丈夫」と思われやすい20~30代ですが、歯周病や歯の喪失といったリスクがあることから、大切な歯を守るためのオーラルケアを行うことが大切です。
オーラルケアとは、歯磨きだけでなく、虫歯や歯周病を予防するために行う口腔ケア全般を指します。具体的には、定期的な歯科健診を受けるといったことが挙げられます。
この章では、実際の歯の健康状態はどのようになっているのか年齢別にみていきましょう。
1-1.20~30代でも歯周病を発症している
歯周病は中高年で発症する病気と考えている人も多いようですが、実際には20~30代でも歯茎の衰えから歯周病が発症・進行し始めているケースも少なくありません。
厚生労働省の「令和4年歯科疾患実態調査結果の概要」によると、歯周病とされる4mm以上の歯周ポケットを有する者の年代別の割合は以下のとおりです。
参考:厚生労働省の「令和4年歯科疾患実態調査結果の概要」
上のグラフのとおり、10代で歯周病となっている人の割合は14.3%であるのに対し、20代は約21.2~31.6%、30代は33.3~33.7%に増加しています。
その後、年齢を重ねるごとに割合が高くなっていきますが、約20~30%の人は20~30代で歯周病を発症しており、進行を止めるためにも、早めにケアしていくことが大切であるとわかります。
1-2.歯の喪失は10代からでも始まっている
歯の喪失の二大原因は「虫歯」と「歯周病」です。歯の喪失が起こると、入れ歯やインプラントといった治療が必要になり、高額な治療費がかかったり、固いものが食べにくくなったりします。
厚生労働省の「令和4年歯科疾患実態調査結果の概要」によると、年齢階級別の喪失歯を有する人の割合は以下のとおりです。
参考:厚生労働省の「令和4年歯科疾患実態調査結果の概要」
上のグラフのとおり、年齢を重ねるにつれて、右肩上がりで喪失歯を有する割合が増えていくことがわかります。20~30代であっても、一定数、歯を喪失していることがいるため、若くてもきちんとケアしなければ歯を失うリスクがあるといえます。
2.オーラルケアの重要性
歯周病や喪失歯のリスクは20~30代で増加していく事がわかりましたが、実際に歯の痛みや違和感がないと管理を怠りがちです。また、この時期は仕事やプライベートが忙しく、歯や歯茎の衰えを見逃してしまう場合もあります。
しかし、歯の健康を守るためには、20~30代の時期からのオーラルケアが重要なのです。
この章では、具体的なオーラルケアの重要性を見ていきましょう。
2-1.印象を左右する
口元の清潔感は、初対面でも好印象に繋がりやすく、その人の印象を大きく左右します。
株式会社ライオンが、300名以上規模の一部上場企業従業員800名に対して実施したアンケートが掲載された「オーラルケアとは?企業が取り組む重要性や、取り組むためのスキームをご紹介」では、下記のような結果がでました。
「初対面で良い印象を持った人の特徴」というテーマの調査の結果は以下のとおりです。
1. 笑顔が多い:68%
2. 歯がきれい:44%
3. 姿勢が良い:40%
4. 口臭や汗など嫌な臭いがしない:39%
5. 顔立ちが整っている:38%
参考:ライオン「オーラルケアとは?企業が取り組む重要性や、取り組むためのスキームをご紹介」
このように、2位と4位で口元に関わる回答がランクインしており、オーラルケアによって第一印象が大きく変わるとわかります。また、20~30代の時期は、学校や会社などで様々な人と出会う機会も多く、好印象を与えることができるようオーラルケアを行う事は大切です。
2-2.自己管理能力を高める
オーラルケアに対する意識の高さは、自己管理能力の高さに関連性があることがわかっています。
前項で記載したライオン株式会社のアンケートによると、オーラルケアに取り組んでいる人は、取り組んでいない人に比べて、健康管理や時間管理に対する意識が高いことに加え、トラブルにも先回りした対処する傾向があるという結果が出ています。
オーラルケアに日ごろから取り組むことで自己管理の習慣が身につき、学習や仕事を効率よく進めることにつながるのではないでしょうか。
2-3.全身の健康維持につながる
オーラルケアを行うことで、歯周病や歯の喪失を防げるのはもちろんですが、全身の健康を維持することにも関連性があります。
たとえば、歯周病は口の中で常に炎症が起きている状態です。その際に出る毒性物質が口内の血管から全身に入り、糖尿病や低体重出産、肥満、動脈硬化など、さまざまな健康リスクを高めることがわかっているのです。
つまり、歯の健康を維持することは、全身の健康を保つことに繋がり、オーラルケアが重要である理由の一つであるといえるでしょう。
3.アンケートからわかる オーラルケアに対する意識と理解
オーラルケアの重要性についてわかりましたが、どのくらいの人が実際にオーラルケアを行っているのでしょうか。
ここでは、オーラルケアに対する意識や理解について見ていきましょう。
3-1.9割以上の人が「健康維持には欠かせない」と回答
公益社団法人日本歯科医師会が2022年に全国の15歳〜79歳の男女1万人を対象に実施した「歯科医療に関する生活者意識調査」では、「健康を維持するうえで、歯や口の健康は欠かせない」「健康のためにできるだけ自分の歯を残したい」という問いに対し、「そう思う」「ややそう思う」と解答した人が90%以上となっています。
そのため、大半の人がオーラルケアを行い、口元の健康を維持していくことが大切であると認識しているといえます。
3-2.歯と口の健康が全身の健康につながるという理解は3割以下
大半の人がオーラルケアを行い、口元の健康を維持していくことが大切であると認識していることがわかりますが、歯や口の健康が全身の健康につながることへの理解度は低いのが現状です。
実際に、同調査で「口の中の細菌は循環器、呼吸器、消化器などに慢性炎症を起こす危険性がある」「歯周病を放置するとウイルス感染しやすくなる可能性がある」といったことを知っている人は3人に1人程度に留まっているからです。
つまり、健康維持のためにオーラルケアがなんとなく大切であることはわかっていても、全身の健康維持につながることや、オーラルケアを行わなければどのようなリスクが高まるのかといった具体的な事柄まで理解している人は少ないといえるでしょう。
4.歯科健診でオーラルケアをしている人の割合と健康状態の変化
理解度の差はあるものの、多くの人がオーラルケアの重要性について認識していることがわかります。
ただ、これまでオーラルケアを行ったことがない方も多いのではないでしょうか。
ここでは、定期的な歯科健診によるオーラルケアをしている人の割合や、実際にどのような効果が得られるのかを見ていきましょう。
4-1. 定期的な歯科健診でオーラルケアをしている人の割合
参考:公益社団法人日本歯科医師会「歯科医療に関する生活者意識調査」
健康を維持するうえで歯や口の健康が欠かせないと思っている人の中でも、歯科医療機関で定期チェックを受けている人は47.4%に留まっています。
口元の健康への意識を持っている人は9割の人いるのに対し、実際に行動している人は5割とそれほど多くない割合といえるでしょう。
4-2.歯のトラブルや悩みが減少する
歯科医療機関で定期チェックを受けている人の割合はそれほど高くないのが現状ですが、定期チェックを受けている人と受けていない人で、歯のトラブルや悩みに差があるという調査結果が出ています。
参考:公益社団法人日本歯科医師会「歯科医療に関する生活者意識調査」
上のグラフのとおり、定期チェックを受けている人の方が、定期チェックを受けていない人と比較して、口臭が気になりにくくなるほか、硬いものを問題なく食べられる、左右バランスよくきちんと噛んで食べられるといった割合が高くなる傾向にあります。
4-3.生活の充実度が向上する
定期チェックを受けることは、噛むことや歯や口の悩みといった直接的なものだけでなく、生活の充実度向上につながることがわかっています。
参考:公益社団法人日本歯科医師会「歯科医療に関する生活者意識調査」
このように、定期チェックを受けている人は、受けていない人に比べて、心身ともに健康である、質のよい睡眠が取れているなどと感じている人が多いとわかります。
さらに、定期チェックを受けている人の方が、風邪を引きにくくなったと感じている人が多いことに加え、毎日の生活に満足感や充実感を感じている人も増えており、生活の充実度向上にも関連性があるといえるでしょう。
4-4.「もっと早く受診すればよかった」と後悔している人が多い
歯科医療機関で定期チェックを受けておらず、歯や口の痛みや腫れといった問題で日常生活に支障が出た人に対し、「歯の健診や治療をしておけばよかったと思うか」と尋ねた調査では、83.2%の人が「もっと早くから歯の健診や治療をしておけばよかった」と回答しています。
つまり、歯科医療機関で定期チェックを受けていない場合、もっと早くオーラルケアをしておくべきだったと後悔する確率が高いのです。
歯や口のトラブルを放置しないことはもちろんですが、歯科医療機関で定期チェックを受けることで問題の早期発見につながります。
オーラルケアは直接的な問題を防ぐのはもちろん、生活の充実度向上などにもつながるため、日ごろから歯科医療機関で定期チェックを行っておくが大切であるといえるでしょう。
5.歯周病を予防するオーラルケア
歯周病は、歯周病菌の感染によって起こります。
口内が清潔でない場合、歯と歯の間、歯茎の隙間などに歯周病菌の住処となる歯垢がこびりつきます。ただ、歯垢の量に差はあるものの、すべての人の口内には歯垢があることから、歯周病菌も存在します。
ただし、「歯周病菌がいる=歯周病にかかっている」というわけではなく、歯周病菌の増殖を放置し防御機能が低下することで歯周病が発症するのです。
そこで、歯周病対策を行うために、口の中を清潔な状態に保つことが大切です。
毎日の歯磨きはもちろん、デンタルフロスや歯間ブラシ、洗口液などを使いましょう。また、歯科医療機関で定期チェックを受け、メンテナンスや初期段階の治療を行うことも効果的です。
そのほか、タバコを控える、疲労やストレスを溜めない、間食を控えるなど、生活習慣を整えることも歯周病予防につながります。
6.まとめ
今回は、オーラルケアとは何か、オーラルケアをしている人の割合や健康状態の変化について解説しました。
オーラルケアを行うことで、歯や口の健康を維持できるのはもちろん、全身の健康維持にもつながります。さらに、第一印象がよくなったり、生活の充実度が向上したりと、複合的なメリットも多いため、年代に関係なく、歯科医療機関で定期チェックを受けるなどのオーラルケアを取り入れていきましょう。
ぜひ今回の記事を参考に、オーラルケアを見直し、健康習慣を手に入れてみてください。