第35話  — 南米3カ国、ペル−、アルゼンチン、ブラジル訪問 — 【part5】

アマゾン川とネグロ川

翌日、私たちは船でアマゾン川の支流ソリモンエス川を下だった。船は3階建の船体は朱色、縦の柱は青く塗られ、3階の船先には屋根がなくロビーの如く広くなっており、ブラジル国旗がはためいていた。船は二百人くらい乗れる貸し切りの船であった。3階のロビーには自由に移動出来る肘掛け椅子があり、団員は各自好きな方向を向いて坐った。川幅は2〜300メートルくらいある広さだった。

暫く行くと、進行方向右側に真っ黒い川と合流した。二色の川の流れは混じることなく延々と続いた。日本では見たことのない光景だった。

後で知ったことだが、黒い川はネグロ川といいコロンビアのジャングルから流れて来る。黒褐色の水の色はタンニンなど植物由来の腐食酸によるという。二色の川の色が70キロメートルもの間、混じり合わない理由は水温と川の流れの速度が異なるためである。ネグロ川は水温27度前後で時速4〜5キロメートル 。一方、アマゾンの雪解け水を集めて流れてくるソリモンエス川は水温21度くらいで、時速6〜8キロメートルである。このため70キロメートルもの間、二つの川の水は混じり合わず流れるのだという。この2つの川が合流してアマゾン川となる。この大河の流れは“アマゾンの神秘”であり、“地球規模の壮大な眺め”であるといわれている。

 

向かって左側の薄いピンクに見える川はソリモンエス川といい、アマゾンの雪解け水を集めて流れる。右側の黒褐色の川はネグロ川で、黒褐色の水の色はタンニンなど植物由来の腐食酸によるものである。流れの速度と水温の違いにより、70キロメートルのあいだ2つの川の水は混じり合わない。“アマゾンの神秘”と言われている。

ピラニア釣り

数時間下って大きな船着き場に到着した。その横の川の浅瀬に幅の広い板で作った水面すれすれの橋が2~30メートル先まで掛かっており、そこに数隻のボートが繫留されていた。このボートに乗ってピラニア釣りが出来るという。

私たちは1〜2人、このボートに乗って、橋から数10メートル漕ぎ出してピラニア釣りを始めた。ここの管理人は、「釣れても絶対に自分でピラニアを釣り針からはずさないで下さい。針をはずす時ピラニアの長い鋭い歯に噛まれると大怪我をします。」と注意した。20分もすると1人、また1人と次々にピラニアが針に掛かった。ピラニアは上顎より下顎の方が突出し、左右2本の長い鋭い歯が上顎の上まで延びている。確かにこの歯にがぶりと噛まれたら大怪我をするだろう。みんな管理人を呼んで針を外してもらい、1匹また1匹と川に戻した。30分ほどでほぼ全員釣れたが、知事だけが釣れない。知事が釣れないのでは終了するわけにいかない。皆が困っていると知事の針にもピラニアがかかった。皆な歓声を上げた。この間に2匹、3匹と釣った団員もいた。

 

ピラニア釣り。

 

釣ったピラニア。

釣ったピラニアの針は管理人がはずす決まりになっている。ピラニアの長い鋭い歯に噛まれると大怪我をするからである。

異様な雰囲気の空港に到着

船着き場から,自動車で3〜40分の距離の空港からVASP航空でサンパウロの空港に到着した。到着ロビーに向かったが、空港全体が何かそわそわしたような異常な雰囲気である。添乗員が空港職員に聞くと次のようなアクシデントが起こっていたことが分かった。

この日の朝、ここサンパウロのコンゴニアス国際空港を飛び立ったばかりのTAM航空機は、逆噴射装置の誤作動によって、住宅街に墜落し、乗客・乗務員95名全員と地上の4人が巻き込まれ死亡した。事故を起こしたTAM航空はサンパウロとリオデジャネイロを結ぶ国際線として運行されていた。離陸から墜落まで、わずか25秒だったという。

私たちにとっては、ゾッツとするような凄い出来事である。それは、翌日、その墜落機と同じ時刻に、TAM航空機に乗ってリオデジャネイロに行く予定になっていたからである。迎えのバスに乗り込んだ団員は、この墜落の話を聞いて、怨声(エンセイ)気分というのだろうか、 “明日、リオには行きたくない”と言葉には出さなかったが、ありありと顔で分かった。皆な“腰が引けた”感じであった。

これを感じとった知事は「行きたくなければ、行かなくて良い。俺は1人でも行く。」と言った。その途端、団員の引けた腰が正常に戻った。