健診と検診の違いとは? 目的や検査内容、選び方まで「ケンシン」を解説

健診 検診

健康を維持するためには、定期的な健康チェックが欠かせません。しかし、広く実施されている「健診」、「検診」の違いがよくわからない方も多いのではないでしょうか?

同じ「ケンシン」と呼ばれるものの、それぞれ異なる目的や特徴を持っているため、違いを把握することが重要です。

そこでこの記事では、「健診」、「検診」の特徴や違いに触れた上で、自分に合った「ケンシン」の選び方を紹介します。

1.健診と検診の違い

「健診」と「検診」は、どちらも健康を守るために重要な役割を果たしますが、実はそれぞれ異なる意味を持っています。

健診は、「健康状態を総合的に調べ、病気を予防する」ための検査です。一方で、検診は、「特定の病気を早期発見し、早期治療につなげる」ための検査全般を指します。

2.健診とは

健診は「健康診断」「健康診査」の略であり、予防医学では一次予防に該当します。疾病の早期発見・早期治療を行うことで重症化を防ぐことが目的となります。

健診は国の法律によって実施が義務づけられている「法定健診」と、個人が任意で受診する「任意健診」の2つに大きく分けられます。

この章では、健診の種類の詳細を解説していきます。

2.1 法定健診

法定健診は、国の法律に基づき、事業主や自治体などが実施するものです。

乳幼児や児童生徒、妊婦、住民、労働者などを対象に行われます。例えば、乳幼児健診や妊婦健診、学校健診、労働者の定期健康診断、40歳以上の特定健診などです。

検査項目は主に問診、身体測定、血圧測定、血液検査、尿検査など10数項目ほどになります。法律で義務化されている健診なため基本無料で行うことができ、追加オプションなどで一部自己負担になることがあります。

【代表的な法定健診】

●定期健康診断

定期健康診断は労働安全衛生法で定められており、対象者は「常時使用する労働者」と定義されています。定期健診診断は1年以内ごとに1回行うことが実施主体である事業者に義務付けられていますが、労働者に対しても受診義務はあります。定期健診の結果の記録は、5年間保存する必要があります。

対象者

常時使用する労働者(下記①②を満たすもの)

①期間の定めがない、もしくは1年以上使用される予定のもの、1年以上使用されている者
1週間の労働時間が、同種の業務で勤務する通常の労働者の4分の3以上である者

費用

基本無料(追加オプション等で一部自己負担の場合あり)

検査項目

① 既往歴及び業務歴の調査
② 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
③ 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
④ 胸部エックス線検査及び喀痰検査(※)
⑤ 血圧の測定
⑥ 貧血検査(血色素量、赤血球数)
⑦ 肝機能検査(GOTGPTγGTP
⑧ 血中脂質検査(LDLHDLコレステロール、TG
⑨ 血糖検査
⑩ 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
⑪ 心電図検査
※雇入れ時健康診断においては、胸部エックス線検査のみとなっています。

【医師の判断により省略することができる項目】
身長、腹囲、胸部エックス線、喀痰、貧血検査、肝機能検査、血中資質検査、血糖検査、心電図検査

参照:『労働安全衛生法に基づく健康診断に関する FAQ』|厚生労働省
参照:『労働安全衛生関係』|厚生労働省

事業者が指定する医療機関がある場合は、そこで受診します。検査結果に異常があり、再検査や精密検査が必要になった場合の費用負担に関しては、法令による定められておらず、基本的には労働者の負担になります。しかし、事業者が負担するケースもありますので、再検査や精密検査が必要になった場合は問い合わせてみましょう。

●特定健診(特定健康診査)

特定健診(特定健康診査)とは、一般的に40歳以上の方を対象とした、生活習慣病の早期発見・早期治療を目的とした健診です。メタボリックシンドロームに着目した検査内容なのが特徴です。

対象者

40歳以上74歳以下の医療保険加入者(被保険者・被扶養者)

費用

基本無料(健診機関によって一部自己負担の場合あり

検査項目

① 質問票(服薬歴、喫煙歴等)
② 身体測定(身長、体重、BMI、腹囲)
③ 理学的検査(身体診察)
④ 血圧測定
⑤ 血液検査(脂質検査、血糖検査、肝機能検査)
⑥ 検尿(尿糖、尿蛋白)

【医師の判断により実施される詳細な項目】
心電図検査、眼底検査、 貧血検査(赤血球数、血色素量、ヘマトクリット値)

参照:『特定健診・保健指導について』|厚生労働省

検査項目は、問診、身体測定、血圧測定、血液検査、尿検査などで、費用は無料または格安で受けられます。市町村(国民健康保険)や健康保険組合(社会保険)などの医療保険者が実施しており、集団健診会場や指定の医療機関などで受診できます。

2.2 任意健診

任意健診は、個人が任意で受診するもので人間ドックが代表的です。生活習慣病や一般的な疾患、悪性疾患などの早期発見を目的にしています。

法定健診よりも検査項目が多く、40~100項目ほどの精密な検査を組み合わせて受けることができます。人間ドックの費用は、基本受診者の全額自己負担になるため、数万円から数十万円が割高となります。住んでいる市町村や所属の健康保険協会・健康保険組合などによっては補助金または助成金を受けられる場合もあるので確認しておくといいでしょう。

また、人間ドッグは、基本的に1日(半日程度)で実施されますが、内容によっては2日にかけて行うこともあります。希望する際は、人間ドックを実施している医療機関で受診できます。

参照:厚生労働省|特定健康診査の検査項目 _ e-ヘルスネット
参照:厚生労働省|労働安全衛生法に基づく定期健康診断
参照:厚生労働省|職場の安全サイト

3.検診とは

検診は特定の疾患の早期発見を目的として行われる検査プログラムを指します。

検診には、がん検診や肝炎ウイルス健診、骨粗鬆症健診、歯周疾患健診などがありますが、ここでは「がん検診」について詳しく説明していきます。

3.1 対策型検診と任意型検診について

がん検診の方法は、大きく分けて2つあります。

 【対策型検診】
対策型検診は、 市区町村、健康保険組合などが特定の集団全体の死亡率を下げるための予防対策として行われる公共的な医療サービスです。代表的な検診として、一定の年齢範囲の住民などを対象とした住民検診があります。

検診費用は、公的な補助金があるため、原則無料または低額の自己負担のみです。がん検診の場合、受診頻度は2年に1回または1年に1回など、種類によって異なります。

【任意型検診】
任意型検診の場合は、個人が自分の死亡リスクを下げることが目的です。自分で医療機関・検診機関にある人間ドックなどの検診メニューに申し込みます。検査内容も医療機関・検診機関が提供する項目の中から、希望するものを選択できます。

費用は原則自己負担ですが、加入している健康保険組合などから補助金が出る場合もあります。受診頻度は1年に1回が推奨されており、通常半日から1日程度です。ただし、人間ドックの種類によっては数日程度の入院検査が必要なものもあります。

参照:がん検診の種類は?対策型検診と任意型検診|オリンパス おなかの健康ドットコム

3.2 がん検診の種類と選ぶ際のポイント

市区町村で行われている代表的な対策型健診として、がん検診があります。

現在、下記の5種類のがん検診が自治体主体で実施されています。

【自治体によるがん検診5種類】

種類

検査内容

対象者

受診間隔

補足情報

胃がん検診

問診、胃部X線検査または胃内視鏡検査

50歳以上

2年に1回

※胃部X線検査は40歳以上が対象

大腸がん検診

問診、便潜血検査

40歳以上

1年に1回

肺がん検診

問診、胸部X線検査、喀痰細胞診

40歳以上

1年に1回

乳がん検診

問診、乳房X線検査(マンモグラフィ)

40歳以上

2年に1回

子宮頸がん検診

問診、視診、細胞診、内診

20歳以上

2年に1回

※必要に応じてコルポスコープ検査

【がん検診の選び方】
がん検診を選ぶ際のポイントは、まずは親族などの血縁者に、がんを経験した人がいるかどうかが重要です。 中でも、大腸がん、乳がん、子宮体がん、すい臓がんは、発症リスクを高める要因の一つは遺伝と言われています。そのため、血縁者にこうしたがんを経験した方がいる場合は、積極的に検診を受けることを検討しましょう。子宮体がん、すい臓がんは任意型検診となりますので事前に受診できる医療機関を確認しておきましょう。

また、喫煙、飲酒、運動不足、肥満などの生活習慣も、がんのリスクを高めます。そして、ピロリ菌の有無や大腸ポリープ、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスなど、がんリスクと深く関わりのある疾患もありますので、がん検査を受ける際の重要な参考情報になります。 

対策型検診を基本として、より精密な検査や、対策型検診では対象年齢でない年齢層向けの検査などを受けたい場合は、任意型検診も合わせて検討するのも良いでしょう。

参照:がん検診の種類はいくつかあります|知っておきたいがん検診
参照:【特集記事】予防医療の専門医に聞く。「がん検診の正しい選び方」 _ 再発転移がん治療情

4.自分に合った「ケンシン」の選び方

定期的な健康チェックのために、一人ひとりのニーズに応じて「健診」と「検診」を組み合わせることが必要です。

下記で、自分に合った「ケンシン」の選び方を紹介します。

4.1 定期的な健康状態の把握には「健診」がおすすめ

定期的な健康状態の把握には「健診」がおすすめです。本人に自覚症状がない場合も病気リスクを抱えている可能性があります。そのため、予防医学の観点から「一次予防」である定期的な健診を行い、危険因子を見つけることが病気の早期発見に繋がります。

事業所や自治体などから定期的に案内が届く健診を必ず受けるようにしましょう。

4.2 自覚症状や持病で病気が気になる場合は、特定の疾患の「検診」を受けよう

特定の臓器や疾患に不安を感じている場合や、生活習慣、家族歴などに心当たりがある場合は、積極的に「検診」を受けましょう。 症状がなくてもご自身の状況に合わせて、リスクの高いと思われる病気の検診を受けることで、早期発見・早期治療に繋がり病気の重症化を防ぎ、健康な生活を送ることができます。

このように、病気の早期発見・早期治療を目的とした検診は、「二次予防」と呼ばれます。 検診には対策型検診と任意型検診の二種類があるので、状況に合わせて組み合わせて受診するようにしましょう。

4.3 特に健康状態に不安はないが、より精密な検査を受けたい場合は、「人間ドック」を検討しよう

人間ドックは、「健診」よりもさらに精密な検査を受けることができ、早期発見や生活習慣病予防に役立ちます。追加のオプション検査も豊富なので、自分の気になる症状やリスクに合わせて検査内容を選べる点が魅力と言えるでしょう。ただし、一般的に無料で受けられる健康診断と違い、費用は全額自己負担となります。

健康診断と同じように身体測定や血液検査をはじめ複数の項目から健康状態をチェックする検査できます。また、定期健康診断とは異なり、がんの早期発見に役立つPET/CT検査や内視鏡検査の受診も可能なので、「検診」の要素も含んでいるのが特徴です。

人間ドックは「元気で健康的な毎日を送りたい」「定期的に健診は受けているが、検診はどれを選べば良いかわからない」など、予防医療に積極的に取り組みたい方におすすめします。

このように一次予防である「健診」や二次予防の「検診」がありますが、最近では、身近な環境を整えることで未然に病気を防ぐ「0次予防」も進んでおり、病気予防への意識が高まっています。

どの「ケンシン」が自分のニーズに合致するかを検討し、定期的な健康チェックを習慣化することで健康維持・増進に役立てましょう。

5.まとめ

「健診」「検診」をはじめ定期的な健康チェックは、予防医療の観点から健康維持・増進に大きなメリットがあります。 ただし、それぞれ目的や特徴が異なるため、年齢、性別、家族歴、生活習慣、既往歴・治療歴などを踏まえ、自分に合ったものを選ぶことが重要です。

自治体や職場で実施される身近な健診・検診を上手く活用し、自身の健康を維持しましょう。