第42話  — 東京GのM社長との出会い。M社長の私的勉強会“K,T会”に参加して — 【part2】

KT会の話題。

*ソ連との単独契約には注意せよ

もう20年から30年前のことなので、話の内容はほとんど忘れたが、1、2印象に残っていることを書いてみよう。一人の学者の話である。「ソ連がシベリアや樺太の天然ガスを日本に売り込もうとしています。その際、日本は単独で契約を結んではいけません。終戦のときが示すように、いつでもソ連は契約を放棄し、突然、ガスの輸送管を閉鎖しうることがあります。日本は単独で契約はせず、アメリカを巻き込んで契約をすべきです。アメリカが抑止力になってくれるからです。」 

最近の話題であるが、日経新聞(2016年9月3日)に『領土交渉12月ヤマ場』“対ロ経済協力を先行”とある。この解説の最後に「日本側には経済協力先行でロシア側に“おいしいどこ取り“(外務省関係者)との警戒もある。

三井物産と三菱商事が参加するガス開発プロジェクト「サハリン2」では、ロシアが環境問題を口実に権益の過半を国営エネルギー会社のガスブロムに譲渡させるなどロシアビジュネスにはリスクも伴う。」とある。

国がソ連からロシアに変わっても、20年以上前の勉強会と同じで、交渉にあたっては十分に警戒して、日本政府はことにあたる必要があるのだと私は思った。

土光臨調

1980年ころ、鈴木首相、中曽根行政管理庁長官のもとに“ 増税なき財政再建 ”を合言葉に, “第二次臨時行政調査会”が発足した。そして、臨調会長には清貧な暮らしぶりと財界でのカリスマ性、身綺麗な(叩いても埃のでない)83歳の土光敏夫氏に白羽の矢が立てられ会長に選ばれた。そのため土光臨調とも言われている。

K.T会のK大学のK氏は、この臨調の第4部会長に就任した。この部会の目的は国鉄の民営化であった。このK.T会ではしばらくの間、国鉄の民営化の問題が議題に上がった。K氏の話によると中曽根大臣の政治力、土光氏のカリスマ性、伊藤忠商事会長の瀬島龍三氏の抜群の頭のキレなどの話がしばしば出た。

国鉄の強い抵抗と戦いながら民営化に向かう過程が話題となった。そして国鉄が終にJRに民営化された時には、K.T会全員でK氏をねぎらう賛辞をおくったのを覚えている。

去る2019年11月、中曽根康弘元総理大臣が亡くなられた。

中曽根氏は、日本国有鉄道(国鉄)を民営化して JR とし、6つの地域別旅客会社と1つの貨物鉄道会社に分割した。この分割民営化は中曽根長官の大きな仕事の1つで、現在のJRの好調の原因となっている。

吉兆会はほぼ半年に1度開かれ、その時々の世界と日本の政治、経済のトピックの話題が取り上げられ10年以上続いた。

そのころ、私は女子医大から慈恵医大に移ったので、M社長の長男O君は半年に1度か1年に1度、慈恵医大に診察のため母親に連れられて来院した。まだ、心雑音が聴かれ、心エコー検査でも小さい心室中隔欠損が認められた。

幸い高熱で来院することは無かった。