新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワークなどの新たな働き方に注目が集まりました。特に新型コロナウイルスと密接に関わってきた医療業界では、さまざまなコロナ禍の前後では変化がありました。
この記事では、医師の情報収集方法に焦点を当て、新型コロナウイルスの影響で、どのようにニーズが変わってきたのか、実際に今どのようなものが使われているのかについて紹介していきます。
情報収集をする際のポイントや、押さえておきたい注意点についても解説しますので、ぜひご自身が情報収集を行う際の参考にしてください。
目次
1.医師が医療情報を収集する際のポイント
日経BPが2021~2022年に医療従事者向けに行った、情報収集に関する調査では、医師が視聴したいコンテンツのTOP5は以下のような結果となっています。
出典:日経BP「情報収集に関する調査につきまして」より、一部抜粋
これらの結果からも読み取れる通り、多くの医師にとっていかに信憑性高く正確な情報を得られるかが情報収集において重要だと考えられます。
それを踏まえて、医療情報を収集する際の大きなポイントには以下の3つが挙げられます。
1-1.信憑性の確認
医療情報は正確性が何よりも重要です。誰の発言や研究なのか、出典や元のデータは何かということが1つでも明らかでないのならば、それは信憑性がある情報とは言えません。
また、都合のいいことが協調されていないか、商業目的ではないか、などという視点を持ち、信頼できる情報であるかどうかを見極めることが求められます。
1-2.自身で一次情報のチェックを行う
ニュース記事や医療専門メディアの情報であっても、元の情報を自分の目でも確かめることが大切です。自身の目で、一次情報をもとにその内容を確かめることで、しっかりと知識として身につきますし、人づてに聞いたあやふやな話をいつの間にか正しい情報だと誤解してしまう、といったミスがなくなります。
医療情報の収集にあたっては、システマティックレビューやメタアナリシスといったエビデンスレベルの高い解析手法で導き出された情報かどうかを確認する、論文検索サイトを用いて、一次情報をチェックするといった方法が有効です。
また、それぞれの分野の専門医師たちによって国内外における標準的な診療指針がまとめられた診療ガイドラインも標準的な医療情報を把握するのに役立ちます。
1-3.患者への伝え方を意識する
医師が情報収集をする際には、患者に対して適切な情報を提供し、患者の理解を深めることが重要です。患者は医師のように詳しい医療用語を知っているわけではありません。
そのため、新しい薬や治療法について患者に伝える際にも、相手に分かるようにかみ砕く必要があります。情報収集の際には「患者にどのように説明すれば分かりやすいか」まで意識すると、現場でもスムーズに活かせるでしょう。
2.医師の主な情報収集方法
ここからは、実際に医師がどのような手段で情報収集をしているのかをみていきたいと思います。
2-1.TOP3は「医学誌」「学会」「医師向け情報サイト」
今回参考にしたデータは、株式会社メディウェルがサイト登録者に対して実施したアンケートで、1,824人(29歳以下から70歳以上まで)からの回答によって得られたデータです。そのうち30~50代の回答が約8割を占めています。
表の通り、アンケート全体における情報収集の方法は「医学誌」「学会」「医師向け情報サイト」の順に利用割合が高い結果となっています。
医学誌や学会といった「どこに所属している誰の発信か」「どんなデータを元にしているか」が明確になるものの割合が高いのは、情報の信憑性を重視する医師が多いことを示しているといえるでしょう。
次の章で年齢別の結果を詳しく見ていきたいと思います。
2-2.年齢別のアンケート結果
出典:株式会社メディウェル「医師の情報収集に関するアンケート調査」を加工して作成
アンケートの結果は、回答者の年齢によって多少のバラつきが見られました。
特徴的だったのは20代・30代の医師の回答で、情報収集の方法に書籍を挙げている割合が高くなっています。これは、若くて経験を積む段階にある医師は、最新の医療情報よりも、まずは既存の情報をきちんと身につけたいという意識の表れだと推察できます。
40代・50代の医師では「学会」や「医師向け情報サイト」「医学誌」が上位を占めました。
60代以上の医師では、「医師向け情報サイト」の割合が最も高く、そのあとに「医学誌」と「学会」が続きました。60代以上の経験豊富な医師の場合は、情報サイトや医学誌といった情報収集のしやすさが重視される傾向にあるといえます。
2-3.コロナ禍でMRとの関係は変わった?
医師の情報源といえばMRというイメージは強いのではないでしょうか。
しかし、アンケートの結果を見る限り、MRを情報収集のために活用している医師は多くないようです。これは、アンケートが2021年に実施されたものであるところが大きく影響していると考えられます。
コロナ禍においては、病院でMRの活動制限、具体的には直接訪問の禁止を実施するケースが多くありました。MRからの直接訪問が減り、MRからの情報はZOOMなどのWeb面談ツールやメール、手紙といった手法が主になっていました。
現在、MRへの活動制限は撤廃もしくは緩和されていても、その訪問数は新型コロナウイルスの感染拡大前の状態にまでは回復していないようです。とはいえ、MRからは自身の欲しい情報がピンポイントで獲得できるというメリットもあります。
MRの人数や訪問数が減っても、MRが不要になることはなく、医師にとって頼れる存在であることは変わらないでしょう。
また、MR側もWeb講演会を活発に実施するといった新たなアプローチを積極的に行っています。MRとの関係性が希薄になったというよりは、時代に合わせて付き合い方が変化してきた、といえるかもしれません。
3.人気の医師向け情報サイト4つの特徴
上記でご紹介したアンケートの結果にもあります通り、医師の多くは医師向け情報サイトを使って情報を集めています。
情報サイトは、最新情報をスピーディに入手できますし、自身の専門外の情報を気軽に知れる、という点にメリットがあります。
株式会社メディウェルのアンケートの中で、人気のあった4サイトについて簡単に特徴を紹介します。
3-1.エムスリー
エムスリー株式会社が運営する「m3.com」は国内の医師の9割が登録する日本最大級の医療従事者専用サイトです。
2000年創業で、2007年には米フォーブス誌の「世界で最も革新的な成長企業ランキング」で第5位(日本企業では1位)となっています。
各種海外論文を日本語で検索し、日本語自動翻訳で読めるサービスの実施や、医療現場で活躍する人々のインタビュー記事が掲載されており、医療現場の最新情報やトレンドを知ることができます。
参考リンク:m3.com
3-2.日経メディカル
日経メディカルは、株式会社日経BPが運営する医療従事者専門サイトです。
2022年には日本の医師の約6割となる20万人が会員となっています。医療の専門情報を扱う関係から、登録会員制を採用しており、入会には厳格な資格確認が求められます。
医療系コラムを中心に、学会カレンダーや、現在流通している医薬品をまとめた処方薬辞典なども公開しています。
参考リンク:日経メディカル
3-3.ケアネット
株式会社ケアネットが運営する医療・医学情報サイトの「CareNet.com」は、日常診療に役立つ情報を提供することをポリシーとしています。
サイトでは通常の医療情報に加え、臨床現場で使える手技動画や患者指導、ガイドライン解説や、海外の一流雑誌に掲載された論文を日本語で要約して提供するなど、さまざまな情報が入手できます。
参考リンク:CareNet.com
3-4.MedPeer
メドピア株式会社が運営する医師向け情報サイトのMedPeer(メドピア)は、医師専用のコミュニティサイトで、医薬品の口コミや症例など、全国の医師が経験や知識を「集合知」として共有しています。
掲示板機能を使って意見や知見を共有し合ったり、エキスパート医師への症例相談ができたり、医師同士のコミュニケーションが活発に行われている点に特徴があります。
参考リンク:MedPeer
4.まとめ
医師が情報収集するうえで重要なのは信憑性だという結果に対し、本記事では、その信憑性が高い情報を得るためのポイントや情報収集方法をご紹介させていただきました。
ここでの情報が、医師として働く上での参考になれば幸いです。