威圧的な患者の暴言への対処法を解説|モンスターペイシェント対応に困った医師や看護師必見

威圧的な患者の暴言への対処法を解説|モンスターペイシェント対応に困った医師や看護師必見

近年、病院で医師や看護師に威圧的な態度をとる患者様が増えています。
この記事を見ている医師や看護師の中にも、高圧的な態度の患者対応に苦労した経験を持っている人がいるかもしれません。

本記事では、威圧的で暴言を吐くモンスター患者への対処法と、患者が高圧的になりやすい病院の特徴について解説していきます。

▼本記事の対象者

  • わがままな患者対応に疲れてしまった医師や看護師
  • モンスターペイシェントが来院された時の対処法が知りたい医療従事者

1.威圧的な患者(モンスターペイシェント)とは

威圧的でめんどくさい患者が増えてきたこともあり、近年では「モンスターペイシェント」という言葉まで誕生しました。
まずは、モンスターペイシェントについてと、患者が理不尽なクレームを言う原因について解説していきます。

1-1.モンスターペイシェントとは

モンスターペイシェントは、医師や看護師に対して通常診療以上の要求を行い、過剰な暴言やクレームをつける患者のことです。
モンスターペイシェントは、医師や看護師に対してしばしば暴言や暴力を振るうので、スタッフや他の患者に迷惑をかけることがあります。

一度モンスターペイシェント状態になってしまった患者は、医師や看護師の話に耳を傾けてくれにくくなり、対処が困難になりやすいのが問題です。モンスターペイシェントは、病院やクリニックの運営において深刻な問題になり、診療や治療過程にも悪影響を及ぼすことがあります。

    1-2.患者の理不尽なクレームが増えた理由

    日本では、20世紀まで医師や看護師などの医療従事者の立場が強い時代が続きました。
    しかし、21世紀になると医療はサービス業の一員として位置づけられるようになり、患者がお客様意識を持ち始めます。

    厚生労働省が提供している第10回医師の働き方改革に関する検討会の資料では、以下のような記述があります。

    医師法第19条に、いわゆる医師の応召義務が規定されており、診療に従事する医師は、正当な事由がなければ患者からの診療の求めを拒んではならないとされている。
    厚生労働省|第10回医師の働き方改革に関する検討会

    医師法第19条と、医療がサービス業の一員として位置づけられるようになったことから、一部の患者が威圧的な態度や暴言を吐く人が増加傾向にあります。モンスターペイシェントの存在は、病院やクリニックの日常業務に深刻な支障をきたし、医師や看護師、周囲の患者にも精神的な負担を与えます。

    1-3.モンスターペイシェントの事例

    モンスターペイシェントの行動事例をいくつか紹介します。

    • 過度なクレームを言う
    • 威圧的な態度や暴言を吐く
    • 院内の備品を壊す
    • 医療従事者を脅迫する
    • 他の患者に対しても迷惑をかける

    モンスターペイシェントは、自分の気に入らない言動や行動、医療行為について過度なクレームを言うことがあります。患者はお客様だと考えてしまっている場合、病院やクリニックに対するクレームや過度な要求が増える傾向です。

    また、威圧的な態度や暴言、脅迫をするモンスターペイシェントは、強く要求すれば応えてくれると勘違いしている場合があります。特に、高圧的な態度で要求が一度でも通ってしまうと、それが正しいと思ってエスカレートしやすいので注意しましょう。

    病院やクリニック内の備品を壊すのも、モンスターペイシェントの特徴です。イライラが募ると物に当たってしまう人は一定数存在しますが、病院やクリニック内で備品を壊してしまうと、他の患者の診療や治療にも悪影響を及ぼします。

    2.むかつく患者の対処法(受付、看護師)

    2.威圧的でめんどくさい患者の対処法

    医師や看護師を続けていると、威圧的でめんどくさい患者に出会ってしまうことがあります。そんな困った患者に出会ってしまった時の対処法を5つ紹介していきます。

    2-1.患者の話を丁寧に聞く

    看護師や受付にクレームを言う患者に出会った際は、丁寧に話を聞くことから始めましょう。何に対して不満を感じているのか、どんなことに怒っているのかは患者本人にしか分かりません。

    例えば、待ち時間が長いというクレームが発生した場合は、最初に待たせてしまっていることを謝罪して、他の患者も同じように待っていると事実を丁寧に説明します。特定の医師や看護師の対応に対する不満には、反論をせずに話を聞いて気持ちを落ち着かせることを優先します。

    丁寧に話を聞くことで落ち着いてくれる患者は一定数いるので、時間の許す限り威圧的な患者の話をゆっくり聞く時間を作りましょう。

    2-1-1.別室にご案内して、他の患者に迷惑がかからないように配慮する

    興奮状態にある患者さんを落ち着かせようとしても、余計にヒートアップしてしまうことがあります。

    そのようなケースが想定される場合は、他の患者に対して迷惑がかからないように、一度別室にご案内をし、ゆっくり話を聞くことも有効です。

    2-2.事実確認を徹底する

    患者の話を丁寧に聞くことは大切ですが、威圧的な患者の話を鵜呑みにすることは危険です。丁寧に話を聞いて患者が落ち着いてきたら、その後に事実確認を徹底しましょう。

    待ち時間が長いと言われた場合は、受付時間を確認してどの程度待たせたのか客観的に把握することが重要です。
    特定の医師や看護師の態度や発言に対するクレームは、当事者に話を聞いて事実確認します。

    事実確認を徹底することで、スタッフ間で改善できる点が見つかり、威圧的な患者を減らすことができます。

    事実確認と同時に、威圧的な態度の患者の「行動や発言」をしっかり履歴を残すように徹底しましょう。

    履歴を残しておくことで、その場に居なかったスタッフにも情報を共有し、次回同様の問題が発生した際に対処しやすくなります。

    2-3.複数人で対応する

    威圧的でめんどくさい患者に出会った時は、できるだけ複数人で対応することが大切です。
    1対1で話を進めてしまうと、後になって言った言わないという大きな問題に発展する可能性がある他、医療従事者が怪我をする恐れがあるためです。

    複数人で対応することで、その場の話と後日患者が話した内容に相違があった際に、関係者に事実を伝えやすくなります。
    さらに、複数人で対応することで、後で患者がクレームを言う確率が減少すると同時に、対応するスタッフの心理的負担の軽減にも繋がります。

    受付や看護師だけで対応が難しい場合は、医師や責任者へ協力を求めることも大切です。威圧的な患者の対応は、できるだけ多くのスタッフと共有するよう心がけましょう。

    2-4.患者の要望を聞き過ぎない

    丁寧に話を聞いて落ち着いてくれる患者もいますが、中には威圧的な態度と要求を続ける患者もいます。その場合、安易に患者の要望を聞き過ぎるのはやめましょう。

    一度成功体験を作ってしまうと、威圧的な患者がエスカレートする可能性があるためです。また、医師や看護師が弱気な態度を見せてしまうと、より患者が強気になってしまうので、できないことはハッキリとできないと伝えることが重要です。

    男性スタッフがいる場合は協力を求めたり、対応人数を増やしたりして、患者の発言や行動がエスカレートしやすい環境を作らないように対処しましょう。

    2-5.威圧的な患者の暴力を許さない姿勢を見せる

    患者による暴力的な行動は、医師や看護師だけでなく他の患者にも悪影響を及ぼすため、断固たる対応が必要です。病院やクリニック内の暴力を許さない明確な方針を設け、必要に応じて警備員の配置や警察への通報などの措置を講じましょう。

    また、危険な状況に対処する際のマニュアルを作成し、スタッフに対する暴力対策のトレーニングと危機管理能力を高めることも効果的です。受付や待合室に暴力行為は通報するとの張り紙を貼っておくことも、威圧的な患者の抑止力になります。

    3.患者が威圧的な態度をとりやすい病院の特徴

    患者が威圧的な態度をとりやすい病院の特徴

    患者が威圧的な態度をとる背景には、病院側にも問題が隠れていることもあります。病院側の問題が原因になっている場合は、早急に対応策を考えることが必要です。

    患者が威圧的な態度をとりやすい病院やクリニックの特徴について、それぞれ解説していきます。

    3-1.医師や看護師が患者の話を聞かない

    患者が威圧的な態度をとりやすい要因の一つは、医師や看護師が患者の話を十分に聞かないことです。
    患者は自分の健康に関して不安を感じて来院しており、その不安が聞き入れられないときにフラストレーションが増大します。

    このフラストレーションの増大が、威圧的な態度やクレームへと繋がります。患者の意見や感情、背景を理解し、共感する姿勢が医師や看護師には必要です。

    患者の話を十分に聞いていないとお互いの信頼関係が崩れ、診療プロセスにも悪影響を及ぼす可能性があります。診療中は忙しいですが、患者の話にはできるだけ耳を傾けるようにしましょう。

    3-2.診療予約のシステムがない

    予約システムを導入していない病院やクリニックは、患者が診療を受ける際の不便さを増大させています。予約システムがないと不必要な待ち時間を作ってしまい、患者の不満を引き起こす原因となります。

    診療が混んでいるのは仕方ないかもしれませんが、体調が悪い中、順番が来るまで1時間や2時間も待たされてしまうのは患者にとって大きな負担です。病院やクリニックが予約システムを導入することで、患者のストレスと負担を減少させ、診療プロセスをスムーズに進行できるようになります。

    3-3.診療レベルが低い

    診療レベルが低いと、患者の病院やクリニックに対する信頼が損なわれます。診療結果に対する不満や誤解、誤診などは、患者の不満を増大させて威圧的な態度やクレームの原因になります。

    また、医師が患者の状態や背景を十分にヒアリングせず診断してしまうと、患者は診療が雑だと感じてしまうでしょう。患者が納得できる医療の提供と継続的なスタッフの教育や指導は、患者の満足度を高める上で重要な要素です。

    3-4.病院内が清潔ではない

    病院やクリニック内の清潔さは、来院する患者の安心感と信頼感に直結します。不衛生な環境は、体調が悪くて診療を待っている患者にとって不快です。不衛生な環境が常習化してしまうと、患者からの信頼を損なう原因となります。

    清潔で整頓された環境は、患者の心理的な安定につながり、診療待ちの間も穏やかな時間になります。そのためには、定期的な清掃や空気の入れ替えをし、患者の不満を最小限に抑える努力が不可欠です。

    清潔な病院やクリニックは、患者にとっても勤務するスタッフにとっても快適な環境になります。規模の大きい施設は清掃が行き届かない箇所も出てきやすいので、注意しましょう。

    4.威圧的な患者が病院に与える影響

    威圧的な患者が病院に与える影響

    威圧的な患者は、病院やクリニックに大きな影響を与えます。
    クレームが発生した瞬間だけでなく、その後の施設の運営にとっても悪影響を及ぼすためです。

    威圧的な患者が病院やクリニックに与える影響について、詳しく解説していきます。

    4-1.病院内の人間関係が悪化する

    威圧的な患者の存在は、医師や看護師、受付間の人間関係に悪影響を与える可能性があります。
    威圧的な患者は、過剰な要求や不当なクレーム、さらには暴言や暴力によってスタッフのストレスを増大させるためです。

    威圧的な患者からのストレスでスタッフ間の対立が生じたり、診療中のチームワークが損なわれたりすることがあります。威圧的な患者に対処する際の意見の相違も、スタッフ間の摩擦や不仲の原因となることもあります。

    その結果、病院やクリニック全体のモラルと診療効率に悪影響を及ぼし、診療の質にも影響するでしょう。

    4-2.病院への悪い口コミが増える

    モンスターペイシェントが病院に与える影響:悪い口コミをネットにかく

    威圧的でめんどくさい患者の行動は、病院やクリニックの評判にも悪影響を及ぼします。

    威圧的な患者からの不当なクレームや批判は、ソーシャルメディアやインターネットの口コミを通じて広がり、病院やクリニックの評価を下げる原因となるためです。

    悪い口コミは新しい患者の来院や信頼性に悪影響を及ぼし、病院やクリニックのイメージ損傷に繋がります。

    病院やクリニックは、威圧的でめんどくさい患者に対しても丁寧に対処し、当人だけでなく、その場を共有している患者に誠意を見せることが重要です。

    4-3.看護師や受付スタッフの離職率が高まる

    モンスターペイシェントが与える影響:看護師や受付スタッフの離職率が高まる

    威圧的な患者の対応は、医師や看護師そして受付スタッフにとって大きなストレスとなります。

    威圧的でめんどくさい患者による過度の要求や攻撃的な行動は、医師や看護師の満足度を低下させ、職場に行きたくないと感じさせてしまうためです。

    その結果、医師や看護師が退職するケースが懸念されます。病院やクリニックは経験豊富なスタッフを失い、新たなスタッフの採用と教育にコストがかかるので悪循環になってしまいます。

    退職者を増やさないためには、院内環境の改善やストレス管理のためのサポート体制の強化、そしてスタッフを支援する施策が重要です。スタッフに十分なケアを提供することでスタッフの定着率を高め、病院の安定と医療サービスの質の維持に繋がります。

    よくある質問

    ここでは、モンスターペイシェントと病院側との対応におけるよくある質問を回答いたします。

    Q1病院で受付をしています。むかつく患者が来た時の対応を教えてください。
    A患者の感情の起伏にもよりますが、怒りの感情が強く話合いにならない場合は、以下の対応を行い、他の患者へ迷惑をかけない、身の安全を守るようにしましょう。対応内容「複数人で対応する、別室へ誘導する、否定をせず丁寧に聞く、相手の話をメモする、謝りすぎない、起きたクレームを病院内で共有する」
    Q2 Googleマップに悪い口コミを書かれました。どう対処すれば良いですか?
    A一定の割合で悪い口コミを書かれてしまうことは避けることはできません。身に覚えのないことや誹謗中傷が含まれる場合は、Google側に報告して、削除申請を行いましょう。また、悪い口コミをそのまま放置することは患者やスタッフによっても悪影響を及ぼす恐れがあります。真摯に受け止め、返信をしましょう。
    Q3同じ患者が何度も、クレームや嫌がらせをしてきます。
    Aまずは相手の主張を真摯に受け止める事が大切です。そして病院側として患者に寄り添う姿勢を持ち、クレーム対応をする事が大切です。ポイントは以前受けたクレームをメモしておき、改善した際に「頂いていた〇〇の件、真摯に受け止め対応いたしました。」など一言伝えましょう。

    5.まとめ

    威圧的な患者に出会ってしまった際は、複数人で対応にあたり相手に有意な環境を作らないことが大切です。

    患者の話には丁寧に耳を傾け、理不尽な要求には毅然とした態度で接することで、威圧的な患者の予防にも繋がります。

    また、患者をイライラさせないように、予約システムを使って待ち時間を削減したり清潔な環境を提供したりなどの配慮も必要です。

    患者の不安や診療に関する質問に丁寧に応えることも重要になります。

    威圧的な患者はインターネットで悪い口コミを書いたりスタッフの離職に繋がったりする可能性があるので、できるだけ早期対応と再発防止を心がけましょう。

    スタッフにとっても患者にとっても、快適な施設を提供することで、安定した運営が実現します。

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