医師のダブルライセンスとは?新たなキャリアを開く資格の可能性

医師のダブルライセンスとは?新たなキャリアを開く資格の可能性

医師の免許を持ちながら新たな分野の知識やスキルを取得し、免許や資格を得ることでさらなるキャリアを積んでいく働き方があります。

資格に資格をプラスするダブルライセンスは、医療とは異なる知識やスキルを活用することで医療の質を上げるだけではなく、幅広い視野で医療に取り組むことを可能にします。

しかし、医師はいったいどのようなライセンスを取得するのが良いのでしょうか?

本記事では、医師のダブルライセンスとして注目される“弁護士資格”を中心に新たなキャリアの可能性を探っていきます。

1. 医師のダブルライセンスとは?

医師にとってのダブルライセンスとは、医師免許と異なる分野や職業の免許・資格をもう一つ取得することを指します。

医師は、医学的な専門知識を持ちながら、他の分野の知識やスキルを活用することで、幅広い視野で医療に関わることはできます。また、ダブルライセンスで得る免許や資格は、組み合わせが重要になります。

【ダブルライセンスの具体的組み合わせ】

・医師×弁護士:医師が弁護士の資格を取得すると、医療法律や医療倫理に関する知識を得ることができ、医療機関における法的な問題や規制に対し、適切な対応ができるようになります。

・医師×経営学:医師が経営学の学位を得ることで学んだ経営や経済の知識を活用し、医療機関の効率化や財務管理、戦略的な意思決定などに病院や医療機関の経営に貢献することができます。

・医師×教育学:教育学の学位では、教育や研究の分野での教育方法や活動、指導者としての役割などを学ぶことができます。医師として培った知識や臨床経験を生かすことで、医療専門職や医師の教育や育成に携わることができます。

このように、医師がダブルライセンスを取得することは、専門性の幅を広げるだけではなく、給与や雇用の選択肢の拡大、キャリアの多様化、患者へのサービスの向上など、多くのメリットをもたらすことができます。

2.医師のダブルライセンスが注目される理由

医師のダブルライセンスが注目される理由は、大きく分けて4つあります。

2.1 治療で心理的・社会的な側面での支援を可能にする

現代の医療において、病気を診断し治療するだけではなく、疾患を抱えながらも自分らしく生きていくためのサポートが必要とされています。

心理的・社会的な要素の中には、病気を抱える事で生まれる不安や恐怖などの感情面以外に、医療費や生活費などの経済的な問題、自宅での療養環境づくりなど様々です。これらを考慮しながら総合的なケアを提供するために、異なる専門分野の知識やスキルを持つ医師であれば、より広い視野で患者をサポートすることができます。

2.2  医療現場で起こる法的課題に対応することができる

医療の現場では、医療過誤や医療事故のリスクや応召義務への対応などを法律や医療倫理に関する問題が発生することがあります。

実際に、日本医療安全調査機構の「医療事故調査・支援センター2021年 年報」によると、2021年の医療事故の相談件数は1,685件(医療機関725件・遺族869件)ありました。

医療事故や応召義務は、専門性が高く、診療や対応などに問題があったかの判断が難しい特徴があります。そのため、法律や医療倫理に関する知識を持つ医師は、様々なパターンを想定しながら対策を考えたり、正当な事由がどうかの判断を行ったりすることが可能です。

2.3 キャリアの多様化が期待できる

医師のダブルライセンスは、医師のキャリアにおいても大きく関わってきます。

専門知識やスキルの幅広さによって需要が高まり、給与や雇用の選択肢が広がる可能性があります。

教育機関や研究機関での教職や研究職、企業や法律事務所でのコンサルタントやアドバイザーなど、医療業界以外でも活躍することができます。また、経営学の学位を取得することで、病院や医療機関の経営に関わることもできます。

2.4 医療のグローバル化における国際的な医療政策の改善が求められている

日本の医療におけるグローバル化や技術の進歩により、医師に求められる役割も多様化しています。

日本には、高い医療技術やサポートがありながらも、医療産業の発展が大きく遅れているため、医療における国際標準化や医療政策での貢献度を高めることが求められています。また、国家戦略としては医療ツーリズムの推進や政策も行われています。

このような医療政策の分野では、医師が行政や国際機関と協力して健康政策の立案や実施に関わることが必要とされています。複雑な国際医学や国際医療問題の解決においては、医学的な知識のみではなく、語学や他分野の知識を活用することで貢献できます。

このように、医師のダブルライセンスは、医療の質を高めることや多様なキャリアパスを築くことができるため注目されています。

3. 医師のダブルライセンスによる年収の実態

医師と弁護士それぞれの職種の年収データと比較してみましょう。また、ダブルライセンスの資格取得コストやキャリアパスの可能性についても触れていきます。

3.1 医師と弁護士の年収比較

厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、企業規模10人以上の医師の平均給与は月額109.61万円、年間でのボーナスは平均113.57万円で、合計すると平均年収は約1428.89万円です。

一方、同規模の企業で働く弁護士を含む法務従事者の平均給与は月額56.55万円、ボーナスは平均292.79万円です。平均年収は約971.39万円と計算されます。

ただし、「法務従事者」という弁護士以外の法曹関連の職種が含まれている点に注意が必要です。

参考として、日弁連によるデータによると、2020年の弁護士の平均年収は2,558万円でした。

公的データをもとにすると、ダブルライセンスを持つ医師は、医師としての収入に加えて、法律関連の職務から得られる収入により、年収が高まる可能性があると考えられます。

参照:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」
参照:日弁連「近年の弁護士の活動実態について」

3.2 資格取得のコストとリターン

医師になるために必要な勉強時間は医学部に入学までに約5,000時間、入学後は最低でも入学までに費やした時間と同程度の勉強時間が必要なため、合計で約10,000時間が必要と言われています。

一方、弁護士になるためには、約3,000~8,000時間の勉強時間が必要と言われています。中には10,000時間を費やす人もいるようですが個人差が大きく、予備試験というものに合格して司法試験の受験資格を得るルートであれば、最短約2年で司法試験に合格することができます。

予備試験ルートとは、予備試験に合格して司法試験の受験資格を得るルートのことです。 予備試験は、法科大学院課程を修了した者と同等の学識およびその応用能力、法律に関する実務基礎的素養があるかどうかの判定を目的とした試験で、最終学歴や年齢に関係なく、誰でも何度でも受験することができます。

また、弁護士になるためには、司法試験合格後に1年間の司法修習を修了する必要があります。

医師国家試験と同様、司法試験も超難関と言われる試験で決して簡単な道ではありません。

多くの場合、医師として勤務しながらの資格取得となるため勉強時間を確保するのが難しいですが、前章にあります注目される理由や平均年収を考えると、魅力的なキャリアの1つであると言えます。

4.【成功例】ダブルライセンスを活かす医師たち

ダブルライセンスを持つ医師たちのキャリアはさまざまです。

そこで、資格取得のプロセスの違いや、各自のキャリアにどのような影響を与えたのかを、以下で具体例を紹介します。

4.1 具体例1 弁護士資格を取得し、医療法務として活躍する医師Aさん

  • 基本情報:男性医師(麻酔科)
  • 勤務先:大学病院・その他複数の病院勤務→法律事務所
  • ダブルライセンス:医師・弁護士

Aさんは医学部卒業後、麻酔科医として大学病院やその他複数の病院勤務で勤務したいたが、「医療ミス」の報道をきっかけに、司法の現場についてもっと知りたいという思いから法科大学院に進学。司法試験に合格し、現在は法律事務所で医療紛争の法務(医療法務) を中心に活躍しています。Aさんは医療機関側の代理人を専門としており、医学的に正当な主張を適切に代弁することで医療の発展や向上に力を注いでいます。

以上の具体例からは、ダブルライセンスを持つ医師たちが個々のユニークな経歴と専門性を活かして、医療界における新しいキャリアを切り開いていることが伺えます。医学と法律、医学と歯学など、異なる領域の架け橋となっていることに注目です。

4.2 具体例2 弁護士資格を取得、医師・弁護士として活躍するBさん

  • 基本情報:男性医師(泌尿器科)
  • 勤務先:大学病院→法律事務所
  • ダブルライセンス:医師・弁護士

Bさんは、医学部卒業後、総合病院での臨床経験を経て法科大学院に進学しました。大学院で学生として学びながらも、講義がない時間で診療とを並行し、司法試験に合格。司法修習を経て、法律事務所へ入所しました。

Bさんは、日常的に起こるトラブルに対して、法律で合理的に解決を導く手助けがしたい、という思いから、医療機関と顧問契約を結び、医療現場における日常的な法律問題に対する質問を受け付け、医療現場に即したアドバイスを提供しています。弁護士業務と同時に、現在も医師として医療現場に週5日以上従事。医師としても弁護士としても活躍しています。

4.3 具体例3 歯科医師から医師免許を取得したCさん

  • 基本情報:男性医師
  • 診療科:歯科医師・口腔外科→総合診療科
  • ダブルライセンス:歯科医師・医師

Cさんは、歯学部卒業後、大学病院の口腔外科医として勤務。その後、大学院に進学し再生医療の研究に従事しました。その中で、研究を活かすために医師免許したいと考えるようになり、現在は総合診療医として活躍されています。

歯科医師としての背景を持つCさんは、特に摂食嚥下障害のケアに焦点を当て、治療方法の改善に力を注いでいます。医師としての経験とダブルライセンスが、患者さんのQOLの向上に直結している例と言えるでしょう。

以上の具体例からは、ダブルライセンスを持つ医師たちが個々のユニークな経歴と専門性を活かして、医療界における新しいキャリアを切り開いていることが伺えます。医学と法律、医学と歯学など、異なる領域の架け橋となっていることに注目です。

参照:先輩の活躍 _ 大学院の歩み _ 神戸大学法科大学院
参照:ダブルライセンスで活躍する医師 – 医師求人・転職のリクルートドクターズキャリア
参照:医科×歯科の成功モデルを Wライセンス医師の野望―松本朋弘氏(練馬光が丘病院) _ キャリアデザインラボ _ m3.com

5.医師と弁護士のダブルライセンスへの道のり

医師が弁護士資格を目指す道は、非常に高い専門的な学習と経済的・時間的なコストが必要とされる道のりです。

弁護士試験は、国家試験の中でも合格率や難易度の点で、一般的な資格試験とは一線を画すものとなっています。

5.1 医師が弁護士資格を取得するモデルケース

医師が弁護士資格を取得するモデルケースとしては、医師が病院勤務を続けながら法科大学院に進学し、司法試験の準備を行うというパターンが一般的です。

日本弁護士連合会のデータによると、2022年の弁護士試験の合格率は45.5%でした。また、法科大学院別の合格率は京都大法科大学院が68.0%、東京大法科大学院が60.9%と高い合格率を示しています。

勤務時間の制約があるため、法律の専門知識を身につけるために効率的かつ継続的な学習が必要となります。法科大学院での学習に加え、司法試験の対策として予備校の利用や自己学習に取り組むことも大切です。そのため、法科大学院への合格・学習が成功の鍵を握ると言えるでしょう。

参照:日弁連「弁護士白書 2022年版」
参照:法務省「令和4年司法試験法科大学院等別合格者数等」

5.2 勉強方法のポイント

弁護士試験の準備には、効率的な学習方法と時間管理が不可欠です。多くの受験生は予備校やオンラインコースを利用していますが、独学での合格も不可能ではありません。

ただし、専門性の高い法律の学習には、専門家からの指導や質問への回答がある方が、理解を深める上で効率的と言えます。

5.3 学習中のワーク・ライフ・バランスのコツ

医師としての業務と弁護士資格の学習を両立させるには、ワーク・ライフ・バランスの維持が重要です。所属する医療機関の資格取得支援制度や勤務時間の調整、また家族や同僚の理解と支援が必要になります。

また、長期的な学習期間を考えた場合、ストレス管理と健康維持も欠かせません。自分自身の体調を整え、精神的な安定を保つことが、ダブルライセンスという最終的な目標達成には不可欠な要素となります。

6.まとめ

医師がダブルライセンスを取得すると、医療の現場でより広い視野で総合的なケアを行えるだけではなく、医師の知識や経験を生かすことでキャリアの多様化や選択肢の拡大が期待できます。

特に、法律的専門知識となる医療法律や医療倫理に関する知識を得ることで、医療事故や応召義務などの法的問題から自分を守ることも可能です。

ただし、ダブルライセンスを得るには、教育や試験が追加で必要となる場合が多く、時間や費用がかかることが多くあります。個々の目標や状況に応じて慎重に考慮することが重要です。

このように、医師がダブルライセンスを取得することを選択肢に入れると。医師のキャリアに新しい視点をもたらすでしょう。