医療費増加の一因?はしご受診・コンビニ受診・駆け込み受診の現状と課題

はしご受診 駆け込み受診 コンビニ受診についてのイメージ画像

「治りが悪いから病院を変えよう」「評判の良い病院に行ってみようかな」といった理由で、同じ病気にもかかわらず複数の病院を訪れる”はしご受診”や、緊急ではないのに仕事で昼間に病院に行けないため夜間や休日に救急外来を利用する”コンビニ受診”といった行動が、医療機関の利用方法として大きな社会問題になっています。

こうした行動によって、医療機関に対する負担が増え、医療費が高くなったり、急患の診療が遅れたりすることが現実に起きています。
この記事では、医療機関を上手に受診する方法について解説します。

1.はしご受診とは?同じ病気で病院を変えることの落とし穴

「はしご受診」とは、患者が同じ病気や症状のために複数の医療機関を短期間のうちに次々と受診することを指します。

現在治療中の病気や疾患に関して、主治医からの紹介や助言をもとに別の医師を訪ねるというわけではなく、特定の病院での治療に満足できない場合や、他の病院の評判を聞いて試したい場合によく見られます。

本章では、はじご受診に関して詳しく解説していきます。

1-1.はしご受診をする理由

はしご受診をする理由には、患者が安心して治療を受けたいとの思いから納得できる答えが得られるまで医療機関を探すことが含まれます。
以前と比べてインターネットやSNSが発達し、病院の評判や医師の口コミが検索しやすくなり、患者が医療機関を探しやすくなりました。
すると、現在の病院での治療が期待した効果を得られない不安から、別の場所で異なる治療法を試したり、他の医師の意見を求めたりと、安心感を求めて受診をするという行動に結びつきます。

さらに、混雑した病院を避けてより早く診療を受けられる病院を選ぶことや、異なる専門分野の治療を必要として複数の専門医の診断を受けることがあります。

日本の医療制度では、どの病院に何度行っても自己負担が変わらないため、こうした自由がはしご受診を助長する要因ともなっています。

1-2.2つのタイプに分かれる「はしご受診」の傾向

はしご受診をする患者には、主に以下の2つの傾向が見られます。

・比較したくて転院してしまうタイプ
最初の診察後も症状が続く、あるいは改善が見られないときに、「他の医療機関ならどう診るか」「今のままでいいのか」を比べるため、焦りや不安から受診することがあります。治療方針や医師との相性が自分に合っているかを比べて、より安心できる選択肢を探すのが特徴です。

・症状によって違う病院にいってしまうタイプ
複数の症状がある場合に、自分で判断してそれぞれ異なる病院や診療科を受診する人がいます。しかし、その結果、症状のつながりが見逃され、重大な病気に気付けないことがあります。本来、複数の症状は一つの医療機関でまとめて相談することで、より的確な診断や治療につながりやすくなります

どちらのタイプも、患者の立場から見れば「よりよい医療を求める当然の行動」とも言えますが、医療資源の効率性や情報の一貫性という点では、現場にとって課題を残します。

1-3. はしご受診とセカンドオピニオンとの違い

はしご受診は患者自身の不安や迷いから起こる“医療機関の転々とした受診”であるのに対し、セカンドオピニオンは“現在の治療を前提としながら別の視点を求める”という明確な目的と手順がある受診方法と言えます。

セカンドオピニオンは、主治医のもとで診療を継続しつつ、紹介状や検査データをもとに他の専門医の見解を求める形式が一般的です。これは医療制度の中でも正当な患者の権利として認められており、重大な病気や難しい治療判断が必要な場面で活用されることが多く、医師と患者の信頼関係のもとで進められるものです。

1-4.はしご受診のデメリット

はしご受診がもたらす問題は多岐にわたります。

・検査・処方の重複
既に行われた検査を再度実施する、同様の薬剤を再処方するなどの重複医療が発生しやすく、医療資源の無駄につながります。

・病歴の断絶による誤診リスク
病歴や服薬情報の共有がないまま受診が続くと、病状の正確な把握が困難になり、誤診や診療方針の迷走を引き起こす可能性があります。

・医療費と時間の浪費
患者にとっても、複数の受診にかかる費用や時間的負担は小さくありません。医療費の無駄な増加は、制度全体への負荷ともなります。

2.コンビニ受診とは?「便利さ」が引き起こす医療現場の疲弊

はしご受診とよく一緒に出てくる言葉として「コンビニ受診」もあります。
本章では、コンビニ受診の詳細について解説します。

2-1.コンビニ受診とは

コンビニ受診は、夜間や休日などの救急外来において緊急性の低い軽症の症状にもかかわらず、患者自身の都合で受診する行動を指します。
たとえば「日中は仕事で病院に行けないから」「待ち時間が少なそうだから」といった理由で、通常の診療時間外に救急医療を利用するケースがこれにあたります。

この言葉の語源は、「いつでも気軽に立ち寄れるコンビニエンスストア」のイメージに由来します。時間や場所にとらわれず、「手軽に・すぐに」医療を受けたいという心理が背景にあることから、「コンビニ受診」と呼ばれるようになりました。

患者にとっては便利な選択である一方で、本来は重症患者を優先すべき救急外来に軽症の受診が集中することで、医療現場に過度な負担をかけることが問題視されています。
そのため、医療機関や行政は「救急の適正利用」を呼びかけており、症状に応じてまずはかかりつけ医や電話相談窓口を活用することが推奨されています。

2-2.コンビニ受診が増える理由

コンビニ受診の背景には、社会的・心理的な要因が複雑に絡んでいます。

・日中病院に行けない現役世代
平日日中は仕事で医療機関を受診できず、勤務後や休日にしか時間が取れないという理由で、夜間や休日の救急外来を選ぶケースが多く見られます。特に都市部ではこの傾向が顕著です。

・「すぐに診てもらいたい」という安心志向
少しの不調でも「念のために」「不安だから」とすぐに受診を希望する傾向は年齢層を問わず存在し、インターネットによる情報過多が不安感を助長している場合もあります。

・子どもへの過度な心配による受診
小児の場合、「夜間に熱が上がった」「嘔吐が止まらない」といった急な症状に対して、保護者が強い不安を抱き、救急外来に駆け込むケースが非常に多いです。これは#8000などの相談体制が十分に認知・活用されていないことにも起因しています。

2-3.コンビニ受診のデメリット

ここではコンビニ受診のよって発生するデメリットを解説します。

 

・医療費に時間外加算が発生する
多くの人が意識していませんが、病院の通常の診療時間外に受診すると「時間外加算」と呼ばれる追加料金がかかります。これは初診でも再診でも発生します。
具体的な加算額(初診の場合)は以下の通りです。

初診時の時間外加算額についての表
(支払い額は自己負担割合によります。歯科は除く。平日は概ね6~8時/12~22時を標準とする)                                                                ※全国健康保険協会「初診料と再診料の時間外加算」より当社にて加工作成

ほとんどの患者は、これらの加算があることを知らないことが多く、結果的に通常より高い医療費を支払うことになります。

また、これらの加算が医療現場の人手不足や負担軽減に直接役立っているわけではなく、現場の負担軽減には十分につながっていないという問題もあります。

参照:全国健康保険協会「初診料と再診料の時間外加算」
   厚生労働省「令和6年度診療報酬改定【全体概要版】」

・医療従事者の負担が増加する
夜間・休日の救急外来は、緊急性の高い患者を優先すべきですが、軽症者への対応に時間を取られることで、本当に緊急を要する患者への対応が遅れることがあります。
これにより、医師・看護師が過労や精神的ストレスを抱えてバーンアウト(燃え尽き症候群)のリスクが高まり、離職につながる可能性もあります。
医師は24時間体制で対応する義務がある中、「やりがい」だけでは支えきれない働き方が常態化し、若手医師や看護師が地域医療から離れる理由にもなっています。

・医療資源の不適切な消費
軽症者が本来重篤患者用である三次救急を利用すると病院全体の診療効率が低下し、本当に緊急性のある患者の受け入れが遅れる恐れが出てきます。
さらに、通常の外来診療より高額な費用がかかるため、医療保険制度への負担も増します。

・医療の質・安全への影響
救急外来では短時間で多くの患者を診察する必要があり、限られた時間と人的リソースの中で判断ミスが起きやすくなります。また、軽傷と判断されるケースでも、正確な経過観察や継続的なフォローが難しい状況が起きるため、医療の質が低下する可能性があります。

これらのデメリットから、コンビニ受診は避け、症状に応じた適切な医療利用が求められます。

3.駆け込み受診とは?診療終了間際の受診がもたらす弊害

駆け込み受診とは、診察終了間際で診察を受けようとする行為です。多くの場合、待ち時間を避けたい心理や、不安が高まった結果の行動として現れます。

3-1. 駆け込み受診をしてしまう理由

駆け込み受診をしてしまう理由としては下記のようなものが挙げられます。

・仕事や家庭の都合で診療終了間際にしか受診できなかった
・待ち時間を短くするために込んでいる時間を避けたかった
・症状を軽視していたが悪化してしまった
・様子見を続けていたが、不安感がピークに達し、慌てて受診すること決意した

これらの状況は、患者の行動としては理解できるものの、医療現場では様々な困難を生み出すことになります。

3-2.駆け込み受診のデメリット

 

駆け込み受診は、診療体制や医療サービスの質を低下させる原因になります。 下記のようなデメリットが挙げられます。

・診療時間内に診察を終えるための時間的プレッシャー
診療終了間際の患者受け入れは、診療スタッフに時間的なプレッシャーを強いることになります。特に多忙な外来では、予定された患者数を超えた対応を強いられることがあり、医師や看護師は急いで診察・処置を行わざるを得ません。

・診療や説明が十分にできなくなる
時間に余裕がないと、患者さんへの説明や相談に十分な時間をかけることが難しくなります。疾患の経過説明、検査の必要性、治療方針の共有が不十分になることで、患者の理解不足や納得感の低下につながる恐れがあります。

・診療後に他の病院を紹介することが難しくなる
診療終了間際の駆け込みは、適切な紹介状の作成や他医療機関への連携が十分に行う時間が足りなくなることがあります。これにより、患者のスムーズに転院できなくなり、治療やケアがうまく続かない可能性があります。

・土曜診療や年末年始・大型連休前に集中する
駆け込み受診は、特に医療資源が限られる時期に集中する傾向があります。
年末年始やゴールデンウィークなどの連休前は、診療可能な日数が少ないため、患者が「今のうちに」と受診を急ぐケースが増えます。
土曜午後や診療最終日の午後など、診療時間の終盤に駆け込む患者が多くなる傾向も見られます。
これらの時期は、医療機関の診療体制も縮小されることが多く、医療スタッフの負担増加や診療効率の低下を招きやすい時期です。

4.医療機関を上手に利用するためのポイント

医療機関は、上手に利用することで治療や服薬の効果が出やすくなり、患者自身だけでなく医師などの医療従事者、なにより医療全体にとってとてもたいせつなことです。
本章では、医療機関を上手に利用するためのポイントを紹介します。

4-1.身近なかかりつけ医を持つ

医療の質を向上させ、患者の安全かつ効率的な診療を実現する上で、かかりつけ医の存在は不可欠です。かかりつけ医は患者の健康状態や病歴を継続的に把握することで、以下のようなメリットをもたらします。

・健康状態をまとめて管理できる
長期間にわたる患者の健康情報を把握し、病状の変化や過去の治療歴を踏まえた診療が可能になります。そのため、体調のちょっとした変化にも気づきやすく、無駄な検査や薬を減らすことができます。これによって、より正確な診断や治療が受けられます。

・必要な時に専門の先生を紹介してもらえる
専門的な診療が必要な場合でも、かかりつけ医が適切なタイミングで紹介や連携を行うことで、治療を早く始めることができます。患者のその結果、治療開始が遅れるリスクを減らしますことにつながります。

・信頼できて相談しやすい
同じ先生に診てもらうことで、ちょっとしたことでも気軽に相談できる安心感があります。病気や治療への不安が減り、納得して治療に取り組むことができます。

このように、かかりつけ医がいることで、安心してムダのない適切な医療を受けることができるのです。

4-2. 時間外受診を控える

時間外に受診する人が増えると、医療現場の負担が大きくなり、本当に緊急を要する患者への対応が遅れることがあります。

診療時間内に受診すれば、追加料金がかからず医療費を抑えられるうえ、スタッフや医師が十分にいるため落ち着いて診察や検査を受けられます。

また、必要な検査や治療もスムーズに受けやすく、安心して質の高い医療を受けることができます。時間外受診を控え、症状が軽いうちに診療時間内で受診しましょう。

4-3.受診を迷った時の相談先を知っておく

医療機関を受診すべきか迷う患者に対し、専門的かつ迅速に対応可能な相談窓口の存在は大きな助けとなります。代表的な窓口を紹介します。

・#8000(子ども用救急相談)
小児科的な急変の判断や、受診の必要性を24時間対応で相談可能です。親の不安を軽減し、適切な医療機関受診を促します。

・#7119(大人向け緊急性判断)
成人の急病やケガについて、受診のタイミングや医療機関の選択を支援するダイヤルです。医療機関の負担軽減に貢献しています。

・Q助
総務省消防庁が提供する『全国版救急受診ガイド「Q助」』は、緊急時に適切な医療機関の選択をサポートする便利なツールです。

誰でも全国からアクセスでき、症状に応じて適切な対応をアドバイスします。迷いやすい症状の緊急性を判定し、迅速かつ正確に判断できるようサポートします。

このガイドは、簡単な質問に答えることで、救急車を呼ぶべきか、他の医療サービスを利用すべきかを提案します。

スマートフォンやパソコンからいつでもどこでも利用できるため、家族の健康を守るうえで欠かせないツールとして、多くの人々に活用されています。

・医療情報ネット(ナビイ)
全国の医療機関情報を検索できる政府運営の公式サイト。診療科目、診療時間、アクセスなど詳細情報を提供しており、自宅近辺でかかりつけ医を探すのに利用できます。

5.はしご受診・コンビニ受診・駆け込み受診についてよくある質問集

はしご受診やコンビニ受診・駆け込み受診でよくある質問をまとめました。

Q1. どうして「はしご受診」してしまうの?

はしご受診は患者の安心感を求める心理や制度の特性から生じます。

治療効果への不満や診断への不安から、患者は複数の医療機関を訪れることがあります。評判の良い病院や最新の治療法を試したいという欲求も関係しています。

さらに、日本では医療機関選択の自由があり、何度受診しても自己負担額が変わらないため、これがはしご受診を助長します。

混雑を避けて早く診療を受けたい場合も理由となりますが、こうした受診は医療資源の非効率的な利用につながる可能性があります。

Q2. 軽い症状でも「コンビニ受診」してしまう理由は?

いわゆる「コンビニ受診」が増える背景には、患者の不安や忙しいライフスタイルがあります。

平日午前の診療時間は仕事や学校・家庭の用事と重なりやすく、気になる症状があってもなかなか受診しにくいため、夜間や休日に軽い症状で救急外来を利用する人がいます。特に、子どもを育てている保護者は軽微な症状でも受診判断ができず心配から救急外来を受診することが少なくありません。

こうした行動はやむを得ない面もありますが、医療機関への負担が増大するため可能な限り気になる症状があれば、早めに時間を取って受診することが大切になります。

Q3.「駆け込み受診」をしなくて済む方法は?

気になる症状があれば、早めに医療機関を受診すること、診療時間ギリギリではなくゆとりをもっていくことが大切です。
また、予約制をとっている医療機関は予約を取るなど、他の患者にも配慮した姿勢が医師や病院の負担を軽減させます。駆け込み患者がいるとその分待ち時間が増え、自分はよくても他の方に迷惑であることを認識して配慮し合いましょう。

6.まとめ

この記事では、はしご受診やコンビニ受診・駆け込み受診が及ぼす影響やデメリット、スムーズに医療機関を受診するためにできる工夫について紹介しました。

緊急性の高い症状であれば仕方ありませんが、軽微な症状は不安な気持ちがあることは理解できますが、一呼吸置いた行動を取ることで、医療機関・他の患者を守ることにつながります。

この記事が、受診姿勢を考える一助となれば幸いです。