放射線科医とは?仕事内容や働き方・なる方法・魅力について解説

放射線科医

放射線科医は、画像診断または放射線治療を行う医師です。AI技術の発展により、放射線科医が不要になる時代が到来するといわれたことから、米国をはじめとする各国で放射線科医の志願者が一時的に落ち込みました。しかし実際には、放射線科は医療へのAI導入に重要な役割を果たす診療科であり、今までの誤った認識が払拭されるとともに、放射線科の志願者数はV字回復を果たしています。

そこで今回は、放射線科医の仕事内容や働き方、なる方法、魅力などについて詳しく解説します。

1.放射線科医とは

放射線科医は、画像診断や放射線治療など、放射線を使用して診断や治療を行う医師です。放射線診断医は、CTMRIなどの画像検査を行い、病変の有無や病気の進行度を確認します。例えば、頭部CTで脳腫瘍の有無を調べたり、胸部CTで肺がんのステージを判断したりします。

一方、放射線治療医は放射線を使用して腫瘍を直接治療します。がんに放射線を照射することで、がん細胞を死滅させることができます。

1-1.放射線技師との違い

放射線技師は、CTMRIX線撮影など各種画像検査の実施を主な業務としています。高度な機器操作技術と放射線の専門知識を持ちます。

一方、放射線科医は画像を読影し、診断を下す医師です。読影とは、放射線技師が撮影した画像から病変の有無や病気の進行度を判断することです。CTで見つかった肺がんの転移の有無、MRIで確認された脳腫瘍の位置や広がりなどを、画像から総合的に評価します。また、診断結果に基づき、放射線治療の実施時期や方法などの計画を立てます。

2.放射線科医の仕事内容と働き方

放射線科医の主な業務は、画像診断と放射線治療の2つに大別されます。一般的に、放射線科医は画像診断か放射線治療のいずれかを専門としますが、両方の知識を持つことが求められます。それぞれの仕事内容や働き方について、詳しく見ていきましょう。

2-1.画像診断

画像診断は、CTMRIX線検査などで撮影された画像を精査し、病変の有無や進行度を診断することです。例えば、脳神経外科から依頼された頭部CTでは、脳腫瘍や脳梗塞の有無を見極め、産婦人科から依頼された骨盤MRIでは、子宮筋腫や卵巣がんの進行程度を評価するのが読影医の仕事です。また画像検査の実施前には、有効的な画像診断方法を放射線技師へ指示し、現場をリードします。

読影業務は主にデスクワークのため、時間外労働が少なく、プライベートの時間を確保しやすいというメリットがあります。ワークライフバランスを重視する医師にとって魅力的な働き方と言えるでしょう。ただし、読影結果次第で診断が大きく変わるため、常に高い集中力と緻密な判断力が求められます。

また、読影専門の放射線科医は、単に画像を読むだけでなく、緊急時にはIVRInterventional Radiology)医として処置も行います。例えば、腹部CTで臓器出血が見つかれば緊急で動脈塞栓術を施します。また、頭部MRIで脳動脈瘤が発見されれば、脳神経外科と連携してコイル塞栓術による治療に当たります。

さらに近年では、リモートワークの普及に伴い、病院に常勤せずに自宅などから画像診断を請け負うスタイルも増えてきました。読影専門の放射線科医は、自由な働き方を選択できる機会が広がっています。

2-2.放射線治療

放射線治療医は、がんに対する放射線治療を主な業務としています。CT画像などからがん腫瘍と正常組織の三次元構造を詳細に把握したうえで、がん組織だけに集中的に放射線を照射できるよう綿密な治療計画を立案します。

治療期間中は、副作用の有無やがんの縮小状況を定期的に画像で確認し、必要に応じて計画の見直しを行います。

がんの種類は多岐にわたるため、放射線治療医は内科、外科、婦人科など様々な診療科と連携しながら業務を進めていきます。毎朝のカンファレンスでは、他科の医師と患者の症例について検討を重ね、最適な治療方針を共有します。中には、手術と放射線治療を組み合わせる治療法も多数あるため、他の診療科との連携は必須です。

3.放射線科医のやりがい・魅力

放射線科医は、放射線診断医と放射線治療医でそれぞれ次のようなやりがいと魅力があります。

3-1.放射線診断医の魅力

放射線診断医の魅力の1つは、従来の方法では見逃されていた病気を発見できる可能性があることです。検査機器の精度や機能は時代とともに進歩し続けており、高感度かつ高解像度の画像診断装置を使用することで、微細な異常や早期の病変を発見できるようになりました。新たな疾患の発見や研究が可能となり、それに基づいた対処法や治療法の開発にも貢献できます。

放射線診断医は医療のフロントランナーとして、未知の疾患に挑戦し、患者の健康を支える重要な役割を果たしています。

さらに、放射線科では常にスキルアップと最新技術の習得が求められるため、やりがいを感じられるでしょう。画像解析技術の習得、最新の医学文献の研究などを通じて、自己成長と専門知識の充実を図ることができます。

3-2.放射線治療医の魅力

放射線治療医の魅力は、がん治療における重要な役割を果たせることです。放射線治療医は、患者の主治医からの依頼を受け、患者の状態や病期、がんの種類などを考慮して治療計画を立てます。放射線治療医が患者との信頼関係を築きながら、最適な治療法を提供することが求められます。例えば、がんの部位や進行度に応じて放射線照射の方法や量を調整し、患者に最も適した治療を実施します。

また、放射線治療は外科治療に匹敵する効果が認められており、特に低侵襲性治療の需要が高まっています。それでいて手術に比べてリスクが低く、患者の生活への影響が少ないことが特徴です。

さらに、今後は「切らないがん治療」を求める声が増え続けることが予想されており、そのニーズに応えるために放射線治療の重要性がますます高まるでしょう。がん治療において手術を避けたい患者が増える中、放射線治療医はその需要に応える役割を果たし、患者の生活の質を向上させることに貢献します。

4.放射線科医の年収の傾向

放射線科医の年収相場は1,200~1,900万円(※)です。2012年の調査において放射線科医の年収は1,1033,000でしたが、放射線科医の最新の求人では下限と上限の幅はあるものの、2012年の調査の年収より高い設定のものが多いため、給与ベースが上がっていると考えられます。

放射線科医の収入は、画像診断と放射線治療で大きく異なります。画像診断は主にデスクワークのため時間外勤務が少なく、ワークライフバランスが取りやすい反面、収入は控えめになります。一方、放射線治療は他の診療科と同様に多忙な勤務となりますが、手当てが多いため給与水準は高くなる傾向にあります。

ただし、臨床経験や専門スキル、業務形態に応じて年収が変動する場合もあるため、求職の際は詳細を確認しましょう。

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5.放射線科医の将来性

放射線科医の将来性については、今後需要が高まることが考えられます。

まず、AIの進化により放射線科医の必要性が減るという意見があります。しかし、AIが画像診断の精度向上に寄与する一方で、放射線科医がAIを活用してさらに効果的な診断や治療に役立てることも可能です。実際、AIの普及によって放射線診断医の減少が懸念された北米では、放射線科医がAIの画像解析に最も適していることが認識され、志願者数が増加しています。

また、放射線科医の役割は単なる画像診断だけではありません。臨床的素因を考慮しながら診断を行うことや、画像診断チームの指導や質の担保、最新技術の導入など、AIでは代替できない多くの業務があります。さらに、放射線科医はAI技術の導入において中心的な役割を果たし、AIを臨床現場に適応させるための研究や開発に積極的に関与しています。

したがって、放射線科医は将来的にも医療現場で不可欠な存在であり続けると考えられます。AIの導入によって業務が効率化される一方で、放射線科医がAI技術を有効活用することで、より高度な診断や治療が提供されることが期待されます。

6.放射線科専門医になるには

放射線科専門医になるまでの流れと、資格取得後に選択できる2つの専門分野について、詳しく解説します。

6-1.放射線科専門医になるまでの流れ

放射線科医になるためには、まず医学部を卒業する必要があります。医学部には専門の放射線学科は存在しませんが、一般的な医学部での学位取得が必要です。医学部を卒業した後、2年間の初期臨床研修を受けます。この研修では、主要な診療科を一通り経験し、基本的な臨床スキルを身に付けます。

初期臨床研修修了後、放射線科医としての研修が始まります。この研修は3年間で、放射線科の基礎知識や技術を習得します。研修修了後には放射線科医専門医試験の受験資格を与えられます。

6-2.放射線科専門医取得後に選択できる2つの専門分野

放射線科医専門医試験合格後、放射線診断専門医または放射線治療専門医のいずれかを選択し、その分野での専門知識や技術を磨き、修了すれば専門医資格を取得できます。

【放射線診断専門医】
放射線診断専門医とは、X線写真やCT、MRIなどの画像読影によって患者の病態や状況を確認し、主治医や病院との連携によってがん治療の質向上につなげる医師です。

また、IVR、撮像の指示や造影剤の投与なども行い、画像に関連する検査や治療をリードする役割があります。

受験資格は以下のとおりです。

  • 日本国の医師免許を持つ者
  • 医師法第3条と第4条の規定に該当していない
  • 申請した時点で放射線科専門医であり、放射線科専門医資格取得後2年以上の臨床経験を持つ
  • 申請した時点で本学会正会員になってから5年以上が経過している
  • 所定の研修期間、研修内容、研修施設等の条件を満たしている

【放射線治療専門医】
放射線治療専門医とは、主にX線を使用したがん治療を行う医師です。豊富な知識と優れた放射線治療技術を持ち、正常組織へのダメージを最小限に抑えることを目標に放射線治療を行います。

受験資格は以下のとおりです。

  • 日本国の医師免許を持つ者
  • 医師法第3条と第4条の規定に該当していない
  • 申請した時点で放射線学会正会員になってから5年以上が経過している、かつ腫瘍学会正会員になってから2年以上が経過している
  • 申請した時点で放射線科専門医であり、資格取得後 2 年以上の放射線治療の臨床経験がある
  • 放射線治療の研修期間、研修内容、研修施設等の条件を満たしている

    参照:公益社団法人|日本医学放射線学会

    7.まとめ

    放射線科医は放射線診断医と放射線治療医に大別され、それぞれ魅力が異なります。放射線診断医は最新の画像診断技術を駆使して新たな病気を発見し、研究を進めることで医療のフロントランナーとして活躍します。一方、放射線治療医はがん治療における重要な役割を果たし、患者のニーズに応えながら低侵襲性治療を提供します。

    本記事では、放射線科医の仕事内容や役割、魅力などについて解説しました。

    今後、「切らないがん治療」の需要が高まる中、放射線治療医の役割はますます重要性を増すことが期待されます。今回、解説した内容を参考に、放射線科医がご自身に向いているかどうか検討してみてください。