【遠隔読影】遠隔画像診断との違いは?読影医の働き方・市場規模

remote projection

「遠隔読影を利用すれば業務負担が軽くなるのだろうか?」

 「遠隔読影を行う医師はどのような働き方なのだろうか?」

このように考えたことはありませんか?

遠隔読影は、他の医療機関に在籍する読影医にCTMRI画像を送信し、遠隔で画像診断を受けることです。多くの医療機関や関連会社が遠隔読影サービスを提供しています。

遠隔読影を利用することで業務効率化を図れる一方で、利用にはコストがかかります。

また、遠隔読影サービスを提供する読影医として働いてみたい場合は、働き方の特徴についても確認しておくことが大切です。

本記事では、遠隔読影の概要やメリット・デメリットを解説するとともに、遠隔読影の読影医の働き方について詳しくご紹介します。

1.遠隔読影とは

遠隔読影とは、医療機関で撮影したCTMRIの画像を別の医療機関の読影医へ送信し、画像診断を行うことです。従来では、画像を郵送によって他の施設の読影医に届けていましたが、インターネットを通じて他施設の画像診断用端末へ瞬時に送ることが可能になりました。読影医は報告書を作成し、画像とともに医療機関へ返送します。

取り扱う画像は個人情報に該当するため、情報漏えい防止の観点から、暗号化通信や画像診断用端末内にデータが残らないシステムの採用が望ましいとされています。

遠隔読影と似た名称である読影や遠隔画像診断、オンライン診療などとの違いについて詳しく見ていきましょう。

1-1.読影との違い

読影とは、CTMRI、内視鏡検査、心電図などで取得した画像を読み解き、診断することです。読影を行う医師は「読影医」といい、医療機関の放射線科や遠隔読影サービスの提供企業などに在籍します。

遠隔読影と読影の違いは、検査を行った医療機関の中に在籍している読影医が行うかどうかです。他の医療機関や遠隔読影サービスの提供会社に在籍している読影医が読影を行うことは、遠隔読影に該当します。同じ医療機関に在籍している読影医が行う場合は、遠隔読影とは言えません。

ただし、同じ医療機関に在籍している読影医が自宅のように医療機関の外で読影を行うケースは、遠隔読影と言えます。

1-2.遠隔画像診断との違い

 

遠隔読影

遠隔画像診断

厚生局への届出の有無

不要

必要

依頼先

読影医が在籍している医療機関や遠隔読影サービス提供会社

厚生局へ届出済みの医療機関(依頼側も同様)

診療報酬加算の有無

なし

あり

保険適用

なし

あり

遠隔読影と遠隔画像診断の違いは、「画像診断を行う医療機関の基準」と「診療報酬加算の有無」です。遠隔読影は、検査を行った医療機関内でさえなければ特に基準は設けられていません。例えば、隣の病院の読影医、他府県の読影医、遠隔読影サービスに在籍している読影医などに依頼するケースは、いずれも遠隔読影に該当します。

一方、遠隔画像診断の依頼先は、厚生局へ遠隔画像診断施設基準の届出を行った病院でなければなりません。また、依頼する側も同様に、厚生局へ遠隔画像診断施設基準の届出を行っている必要があります。

診療報酬加算については、遠隔画像診断は保険診療となることで画像診断管理加算の算定が可能です。一方、遠隔読影は厚生局への届出が不要な代わりに保険診療とならないため、画像診断管理加算は算定できません。

1-3.オンライン診療との違い

オンライン診療とは、情報通信機器を用いて患者の診察・診断を行い、診断結果の説明や処方などをリアルタイムで行います。情報通信機器を使用した健康増進・医療に関する行為を「遠隔医療」といい、オンライン診療はそのうちの1つとされています。

患者は、医療機関を受診せずに自宅や職場などからスマートフォンやパソコンを通じて医師の診察や診断、薬の処方を受けることができます。新型コロナウイルス感染症の対策の一環として、保険適用の対象となるオンライン診療の範囲が拡大されました。

遠隔読影は、医師が外部の読影医に対して画像診断を依頼する行為のため、オンライン診療とは対象者が異なります。オンライン診療と遠隔読影はいずれも遠隔医療の1つであり、情報通信機器の進歩やインターネット回線の高速化などによって、実現が可能となりました。

出典:厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針

2.遠隔読影の市場規模

Remote diagnostic imaging株式会社矢野経済研究所の「遠隔医療市場に関する調査を実施(2021年)」によると、遠隔画像診断(読影サービス)の市場規模は、2018年度が約121億2,400万円、2020年度が約127億3,800万円、2021年度予測が約133億3,000万円と拡大傾向にあります。

オンライン診療システム市場も同様に右肩上がりの推移であることから、今後も遠隔読影を含む遠隔医療の市場規模は拡大する見込みです。

遠隔読影の市場拡大の背景には、いくつかの要因が考えられます。まず、技術の進歩により、遠隔での画像診断がより正確かつ迅速に行えるようになりました。また、少子高齢化や医師偏在による読影医不足を解消する手段として、遠隔読影が注目されています。

さらに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、遠隔医療の需要が急速に拡大しました。遠隔読影を含む遠隔医療を活用すれば、感染リスクの低減や移動の制限への対応が可能です。

遠隔読影を含む遠隔医療は日本が置かれているの市場は今後も拡大するとともに、重要性も高まっていくと考えられるでしょう。

3.遠隔読影のメリット

医療機関がCTMRI、内視鏡検査などによる画像診断を遠隔読影で行うことには、次のメリットがあります。

3-1.業務効率化によって読影医不足を解消できる

厚生労働省の資料によると、令和21231日時点において、放射線科の医師は全体の約2%しか存在しません。遠隔読影を利用すれば、読影医が不足しているケースはもちろん、検査数の増加によって業務負担が大きくなっている問題を解消できる可能性があります。少子高齢化の加速により、今後ますます遠隔読影のニーズは高まるでしょう。

出典:厚生労働省「令和2(2020)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況

3-2.病院機能評価に良い影響を与える

遠隔読影は、病院機能評価に関わります。病院機能評価とは、公益財団法人日本医療機能評価機構が実施している病院の組織運営や管理体制、提供される医療の品質などを評価する制度です。

一定基準を満たした病院は「認定病院」となり、高品質で信頼できる医療の提供に努めていることを証明できます。この病院機能評価の審査項目のうち「画像診断(放射線)」において、遠隔読影を利用していることが評価されます。

3-3.診療時間の短縮によって診察数を増やせる

遠隔読影では、異常所見や緊急性など細かな診断結果が報告書にまとめて送られてきます。医師はそのレポートをもとに今後の治療方針や治療計画を決めたり患者に説明したりします。画像診断にかかる時間が大幅に削減される分、診察数を増やすことができるでしょう。

4.遠隔読影のデメリット

遠隔読影は医療機関にとって便利なサービスであるものの、2つのデメリットがあります。メリット・デメリットを比較した上で、利用するかどうかを決めることが大切です。遠隔読影を利用するデメリットは次のとおりです。

4-1.継続的にコストがかかる

遠隔読影を行う場合、依頼先の医療機関や読影医、遠隔読影サービスの提供会社などに料金を支払う必要があります。遠隔読影サービスの場合は、「基本料金+毎回の読影料金」が主なコストです。

すべての画像診断を遠隔読影で対応する場合は、ランニングコストがかかります。特に、遠隔画像診断に該当しないものには保険が適用されないため、医療機関の金銭的負担を予め認識する必要があるでしょう。

4-2.画像診断管理加算ができない

遠隔画像診断が画像診断管理加算の算定が可能であるのに対し、遠隔読影では算定できません。そのため、保険診療において遠隔読影を利用すると、医療機関の金銭的負担が増加します。

検診のように自費診療の場合の検査において遠隔読影を利用する場合は、そもそも画像診断管理加算の算定の有無は関係ありません。

5.遠隔読影の流れ

遠隔読影は、次の流れで行います。

  1. 医療機関でCTMRIなどによる画像検査を行う
  2. クラウドストレージ経由かインターネットで直接画像を送信する
  3. 読影医が画像診断し、レポートを作成・送信する
  4. 医療機関側が受け取ったレポートを確認する

上記は遠隔読影の一般的な流れであり、依頼先によって多少異なる可能性があります。

6.遠隔読影における読影医の給与

読影医の給与は雇用形態や医療機関によって異なります。業務委託の場合は、診断1件あたり1,0002,000円程度が目安です。実際の求人票から一例を紹介します。

  • 放射線診断専門医の場合……1,2001,500/
  • 乳がんや大腸がんなど特殊性がある検査の場合……1,800/

例えば、放射線診断専門医の場合は120件で24,00030,000円です。レポートの提出期限は依頼日の翌日朝や正午などと短いものの、都合に合わせて受託する枚数を選ぶことができます。

7.遠隔読影の導入に必要な準備

遠隔読影に必要な準備は、依頼先によって異なります。一般的には、以下の準備が必要です。

  • インターネット回線(光回線・有線LAN推奨)
  • 情報漏えいを防ぐためのウイルス対策ソフト
  • 快適に動作する性能のパソコン(intel Core i7以上※最新の世代、メモリ8GB以上を推奨)
  • モニター(解像度1280×1024以上)
  • Google Chrome(最新バージョン※使用するソフトによって異なる)
  • 画像アップロードのためのソフト(依頼先によって異なる)
  • クラウドストレージのアカウント(使用する場合)

いずれも特別な装置やアプリケーションなどは必要ありませんが、依頼先によっては追加でさまざまな準備を求められるため、あらかじめ確認しておくことが大切です。

8.読影は自由度が高い働き方を実現できる

遠隔読影は、病院やクリニックではなく自宅のパソコンでも行えます。そのため、子育て中の方や留学中の方などでも働きやすいでしょう。実際に、子育てや留学中に読影医として働いている方もいます。さらに、出先でも仕事ができるため、学会や研究会などへも積極的に参加できます。

出社頻度については、1回も出社せずにリモートワークのみで読影を行う人のほか、週1回出社で残り4日はリモートワークとしている人もいます。リモートワークの日数が多くなればなるほどに、育児や介護などとも両立しやすくなるでしょう。

9.まとめ

本記事では、遠隔読影の概要やメリット・デメリット、読影医の働き方などについてご紹介させていただきました。
遠隔読影は、読影医不足の解消や診察数の増加などを実現できる可能性があるサービスです。
遠隔読影の市場規模が拡大傾向にあるように、読影医のニーズは高まっています。それに伴い読影医および遠隔読影サービスが増えてきているため、転職を検討する際は候補の1つとするのもよいかもしれません。