耳鼻咽喉科医とは?医師数や働き方から平均年収まで解説

耳鼻咽喉科医

耳鼻咽喉科医は、感覚器を専門とする医師です。年収は全診療科の平均と比較するとやや低い傾向にありますが、幅広い領域に携わることができるためキャリアの選択肢が豊富です。

さらに、当直や夜勤が比較的少ないため、ワークライフバランスを重視する医師にとって魅力的な診療科といえます。

 また、開業医として活躍する耳鼻咽喉科医の年収は高額なため、高収入を目指す医師にとっても魅力的な選択肢となるでしょう。本記事では、耳鼻咽喉科医の魅力や働き方、平均年収などについて詳しく解説します。

1.耳鼻咽喉科医とは

耳鼻咽喉科医は、耳、鼻、のど、およびそれらに関連する部位の疾患や問題を診断する頭頸部領域に特化した医師です。外来診療で多くの処置や手技を行う機会があるほか、必要に応じて手術を行うこともあります。

また、難聴やめまい、アレルギーなどの診断においては、各種検査結果の解釈や薬物治療に関する知識を身につけることも可能です。

耳鼻咽喉科医の勤務体系は多様であり、大学病院での長時間の当直や手術から、オンコールフリーの外来診療中心の勤務まで幅広いため、自身の希望に応じて働くことができます。

特に女性医師は、結婚や出産後も耳鼻咽喉科医としてのキャリアを継続しやすいことから、働き方の面でメリットが大きい診療科といえるでしょう。

2.医師数・平均年齢・求人倍率から見る耳鼻咽喉科医

厚生労働省の「令和2年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、全国の耳鼻咽喉科医の数は9,598人です。また、耳鼻咽喉科医の平均年齢は52.5歳と報告されています。これは全医師の平均年齢である50.1歳と比較してやや高めの数字です。

このことから、60歳を超えても働き続けている耳鼻咽喉科医の割合が多いと推測できます。これは、耳鼻咽喉科医が専門的な知識と技術を持ち、高齢になっても現役で活躍できることを示唆しています。例えば、経験豊富な耳鼻咽喉科医が指導医や臨床研究者として活躍するケースも少なくありません。

また、厚生労働省の「必要医師数実態調査(2010年度調査)」では、耳鼻咽喉科医の求人倍率は1.15倍であり、全診療科の平均1.12倍に対して少し高い水準となっています。

さらに、日本医師会の「病院における必要医師数調査結果(2015年度調査)」では、耳鼻咽喉科医の求人倍率は1.05倍で、全診療科の平均1.06倍を若干下回る結果となりました。このことから、耳鼻咽喉科医を募集している医療機関は十分にあり、就職や転職の難易度は高くないと考えられます。

出典:厚生労働省「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況
出典:厚生労働省の「必要医師数実態調査
出典:日本医師会「病院における必要医師数調査結果

3.耳鼻咽喉科医の平均年収

独立行政法人労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、「眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科」の平均年収は1,078.7万円です。4つの診療科を含めた数値であるものの、全診療科の中で最も低い水準であり、全診療科の平均年収の1,261.1万円よりも少し低い水準となっています。

ただし、耳鼻咽喉科は年齢や性別を問わず高い需要があるため、勤務先によって年収は大きく変わることが予想されます。

出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査

4.耳鼻咽喉科医の仕事内容

耳鼻咽喉科医の仕事内容は、耳、鼻、のど、頸部の疾患を包括的に扱います。重要な感覚器である聴覚、平衡覚、嗅覚、味覚を司る領域に加え、食物の摂取や咀嚼、嚥下、発声、構音など、生活上不可欠な機能を持つ感覚器官や運動器官も専門領域です。耳鼻咽喉科医は幅広い領域をカバーし、さまざまな症状や疾患に対応することが求められます。

また、外傷による鼻の骨折の処置や耳の異物除去といった外科治療から、急性期疾患に対する手術、難聴やめまい、アレルギーなどの慢性疾患に対する薬物治療まで、幅広い医療ニーズに応えることができます。

5.耳鼻咽喉科医のやりがい

耳鼻咽喉科医のやりがいは、専門領域の外科的治療と内科的治療の両方を自らが担えることにあります。診断から治療まで、診療の全てに関わることができます。

例えば、慢性副鼻腔炎の場合、内服やネブライザー治療などを行います。しかし、十分な効果がみられなかったり、大きな鼻茸ができていたりする場合は手術が必要です。外科的な処置が必要な場合、医師は自ら手術を計画し、適切なタイミングで行います。

手術後も、患者の回復状況を見守り、適切なフォローアップ治療を提供することが医師の責任です。このように、耳鼻咽喉科医は患者の状態を総合的に管理し、治療に関するあらゆる側面に関われることにやりがいを感じられるでしょう。

6.耳鼻咽喉科医の働き方

耳鼻咽喉科医は、ワークライフバランスを意識した人にとって満足度が高い傾向にあります。耳鼻咽喉科で扱う疾患は外来診療で対応できるうえに、手術が必要としても入院が不要なものが多いため、当直や夜勤などは少なく、プライベートの時間を確保しやすいでしょう。

医師のストレスになりやすい医療訴訟も、耳鼻咽喉科では減少傾向にあります。このように、年収は平均より水準が低めであるものの、ワークライフバランスと訴訟のリスクに重要視する人にとっては、有力な選択肢の1つとなるでしょう。

耳鼻咽喉科医の活躍の場所としては、診療所、総合病院、健診事業などがあります。各場所での働き方の特徴や求められるスキルは異なりますが、耳鼻咽喉科医は幅広い年代の患者を対象とするため、コミュニケーション能力が重視されます。それぞれの勤務先の特徴について詳しく見ていきましょう。

6-1.診療所

診療所では、咽頭炎、副鼻腔炎、花粉症など、比較的軽度の疾患に関する診療が主となります。薬物治療やメスを使用しないレーザー治療などを中心としているため、外科処置の知識や技術はそれほど求められません。残業については外来数によって異なりますが、定時で退勤できる環境が整っています。

花粉症のような需要が高い疾患に専門性がある医師は、より好待遇で迎えられることが期待できます。これらを踏まえると、ワークライフバランス重視しつつも、自身の専門性を活かしたい方に適した勤務先と言えます。

6-2.総合病院

総合病院は、診療所では対応できない複雑な疾患や重篤な状態の患者に対する診療が主となります。たとえば、喉頭がんは進行度や持病などを踏まえて治療方針を決める必要があり、抗がん剤治療や外科治療などを行うことから幅広い知識と技術が求められます。

勤務形態は病院によって異なりますが、診療所よりも長時間労働であるケースが多いでしょう。耳鼻咽喉科医の中でも専門医資格の取得を目指している方や、特定の分野で専門性を高めたい方に適しています。

6-3.健診事業

健診事業では、学校や企業の健康診断に耳鼻咽喉科医がアルバイトとして参加することがあります。診療所や総合病院で働きながら、スポットでアルバイトに従事する医師も少なくありません。

健診事業でのアルバイトは時間的な柔軟性があり、自身のスケジュールに合わせて勤務時間を選択できるため、ワークライフバランスを保ちつつ収入を増やしたい医師にとって魅力的な選択肢となっています。また、幅広い年齢層や職業の人々と接することができるため、医師としてのコミュニケーション能力や診断能力を向上させることも可能です。

7.耳鼻咽喉科医が年収を上げるには?

少しでも多くの収入を得たい場合は、年収を上げる方法について確認しておきましょう。耳鼻咽喉科医が年収を上げる方法は、次の3つに大きく分けることができます。

7-1.総合病院での勤務

総合病院は診療所よりも高収入が期待できるうえに、幅広い疾患を診療して経験と技術を得ることができます。特に高度な治療や手術を行うことで市場価値が高まり、年収アップにつながる可能性があります。

例えば、喉頭がんのような専門領域の疾患に関わり、がんに特化した耳鼻咽喉科医を目指すことも可能です。

7-2.不足地域での勤務

耳鼻咽喉科医が不足している地域では、需要が供給を上回っているために高収入が期待できます。例えば、地方の小さな町や人口の少ない地域では、耳鼻咽喉科医の数が不足しており、患者が適切な医療を受けることが困難な状況があります。医師の地域偏在はかねてより問題視されており、政府主導のもとでさまざまな対策が講じられていますが、問題の解決には至っていません。

だからこそ、耳鼻咽喉科医が不足している地域では、需要が高いことによって高収入が期待できます。

7-3.通常勤務とスポットアルバイトの組み合わせ

診療所や病院で勤務しつつ、健康診断やオンライン診療などのスポットアルバイトを行うことも有効です。

例えば、平日の午前中は総合病院で診療し、午後は診療所や健康診断でのスポットアルバイトを行うと、時間を無駄なく利用して収入アップを目指せます。

8.耳鼻咽喉科医の開業医を目指すのも1

耳鼻咽喉科医として、開業医になることで年収アップが期待できます。厚生労働省「第22回 医療経済実態調査(医療機関等調査)」によると耳鼻咽喉科の開業医の平均年収は約1,900万円とされています。これは勤務医の1.5倍から2倍に相当する水準です。

耳鼻咽喉科医

ただし、高収入を得るためには、耳鼻咽喉科医としての知識や技術、経験だけではなく、開業医としての経営スキルも必要です。

スタッフの管理・教育、マーケティング、財務関連業務など、多岐にわたるスキルを習得してこそ高収入を目指すことができます。

また、耳鼻科を開業する際には、設備投資や施設の賃料などに数千万円から1億円近い初期費用がかかることも理解したうえで、開業医を目指すべきかどうかを検討しましょう。

参照:厚生労働省「第22回 医療経済実態調査(医療機関等調査)」

9.まとめ

耳鼻咽喉科医は、内科領域から外科領域まで幅広い知識と技術、経験を求められます。

診察から治療、アフターケア、経過観察まで1人で担当することもあり、その守備範囲の広さからやりがいを感じやすい職種です。

本記事では、耳鼻咽喉科医の働き方や年収などについて解説しました。耳鼻咽喉科医は、高収入を目指しつつもワークライフバランスを維持したい方にとって、有力な選択肢となります。

また、勤務先の選び方を工夫したり、知識や技術、経験において高いレベルを目指したりすることで、年収アップを目指すことも可能です。

今回解説した内容を参考に、耳鼻咽喉科医としてのキャリア選択や転職などの判断に役立てていただければ幸いです。